郵船社長:物流事業の売上高2.5倍の1兆円目指す-アジアで稼ぐ

国内最大の海運会社、日本郵船はグ ループで展開している物流事業をアジアで拡大し、売上高を今後7年程 度で現在の約2倍の8000億円とし、将来的には1兆円規模を目指す方針 だ。船舶事業ではサービスや価格の面で他社と違いをつけにくい中、同 社が長年独自に取り組んできた物流事業を拡充し、業績向上を目指す。

同社の工藤泰三社長がブルームバーグ・ニュースとのインタビュー で語った。同社長は「世界で伍していくためには現在約4000億円弱の売 上高を将来的に1兆円規模、2.5倍程度に引き上げなくてはいけない」 と述べた。そのうえで「年率10%程度の成長を持続すれば、2倍にする のに7年程度かかることになる」と語った。営業利益率は約3%程度に なる見通しという。

工藤社長は、コンテナ船は世界的なアライアンスの再編・統合によ りサービスが均質化しつつあり、各社、各グループでの「差別化が難し い」と指摘。一方で海上、航空の輸送代理業や通関、倉庫、配送などの サービスを行うロジスティックス部門は、利幅が薄くても確実に収益が 確保できるという。このため今後事業を本格的に展開し、物流部門の拡 充を急ぐ。

郵船の物流事業は、子会社の「郵船ロジスティクス」が担ってい る。同社は、船舶などを所有せずに荷主に対して貨物を引き受け海上輸 送などを行っており、こうした業者は一般にNVOCCと呼ばれてい る。郵船は、船舶事業以外の物流の取り組みについて、同業他社に比べ 積極的だった。

工藤社長は、世界で一流とされるNVOCCは海上貨物の取扱量が 年間100万TEU(20フィートコンテナ換算)なのに対し、郵船ロジス ティクスは前年度で40万台TEUと説明。これを「今年度中に約60万 TEUまで引き上げ、13年度には100万TEUまで飛躍させる努力を続 ける」と述べた。

成長市場は圧倒的にアジア

また、欧州が経済危機で荷動きが落ち込む中で、ロジスティックス の「成長市場は圧倒的にアジア。中国はむろんインドネシア、マレーシ ア、タイ、インドだ」として、日本もアジア間取引の急増を受け、アジ ア向けの貨物が増加基調にあるという。郵船は、物流事業ではアジア地 域で一定のブランド力を確保しており、現地での採用も増やすことでさ らにアジア各国での浸透を図る方針としている。

郵船は、1950年代に子会社の郵船航空サービスを設立。80年代に子 会社のNYKロジスティックスジャパンの前身となる組織を社内に設置 した。2010年10月に両社の事業を統合し、郵船ロジスティクスとして事 業を開始。11年度には海外の物流事業の新体制もほぼ整えており、郵船 のコンテナ船事業と連携した包括的なサービスの強化を図っている。

バークレイズ証券の姫野良太シニアアナリストは、「海運は基本的 にボラティリティが高い事業で、ロジスティックス事業を組み込むこと で、安定化する効果をもたらす」と述べた上で、その取り組みは同社の 強みだと指摘。近年郵船ロジは事業を再編し、拠点の統廃合など大胆な 改革を実施しており、「今後は収益に寄与する形になるだろう」との見 方を示した。ただ、現在の景気見通しから考え「年率10%の成長を数年 続けることは簡単ではなく、実現には疑問がある」と述べた。

コンテナ船事業、4-9月期に大幅改善も

同社の主要事業の一つで、前年度に赤字だったコンテナ船事業の業 績について工藤社長は、やや復活の兆候が見えてきたとの見方を示し た。欧州の荷動きは景気低迷で前年度から低位水準が続いているが、世 界の主要船会社が今春から欧州航路の運賃修復に取り組んでいる。

また燃費を節約する減速運航なども実施しているため、現状は需給 のバランスが取れているという。業界全体でも積み荷スペースに対する 船積み実績の割合である消席率が、欧州で95%程度、北米でも90%を超 える高い水準で推移している、としている。

工藤社長は、欧州運賃は最悪期から「ほぼ2倍近く上昇している」 とし、北米路線の運賃も「6月後半から再び上昇しつつある」と述べ た。コストの大半を占める燃料価格が下落基調にあるため、7-9月期 が好調ならコンテナ船部門全体で上期は、赤字としていた従来予想から 黒字に転換する可能性も現時点で否定はしないとした。

同社は、13年3月期のコンテナ船事業の当初予想は上期売上高 が2300億円、営業損益が40億円の赤字。下期は売上高2300億円、営業損 益が10億円の黒字の見通し。通期では売上高4600億円、営業損益30億円 の赤字を見込んでいる。

明るい兆しが出てきたものの、工藤社長は、コンテナ事業は運賃の 変動率が激しく「爆弾のようなもの」として、慎重な姿勢を崩していな い。さらに来年には、大型新造船が世界的に供給されるとして、今期が 仮に好調に推移したとしても中長期的には依然として楽観できないとの 見方を示した。

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