国内年金、AIJ問題後もヘッジファンド投資の流れ不変

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国内年金がヘッジファンドへの投資 を増やす流れが続いている。運用先の多様化によるリスク分散や予定利 回りの達成が狙いで、1000億円超の顧客資産を消失させたAIJ投資顧 問投資顧問の問題が表面化した2月以降も、海外大手ヘッジファンドな どに運用を委託しようとする年金が目立っている。

日本の年金向けに4月から新ファンドの運用を開始した英ファイ ナンシャル・リスク・マネジメント(FRM)には、AIJ問題後も問 い合わせが増えているという。佐藤素行シニアアナリストは、国内年金 は「絶対収益の獲得や分散投資の観点から、オルタナティブ(代替)投 資への興味を失っていないようだ」と指摘する。

国内投資家から30億ドル(約2380億円)を受託する英ヘッジファ ンドのウィントン・キャピタル・マネジメントには、国内年金から安定 した資金流入があるという。アジア営業開発部のチャールズ・アラード 氏は、「日本株の長期低迷で、年金基金など投資家の間ではポートフォ リオ分散のニーズが高まっている」と分析している。

世界の2700超のファンドのデータを集計したユーリカヘッジ・ヘ ッジファンド指数は2006年以降の6年間連続で日経平均株価の上昇率 を上回ってきた。年初来では1.88%のプラスと日経平均を55bp(1 bp=0.01%)下回り、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが算出 している日本国債の投資利回り1.40%を48bp上回っている。

大手に引き合い

独立系のAIJの浅川和彦社長は、運用失敗を隠して偽の運用報告 を示しながら顧客から資産を集め続けていた。警視庁は19日、詐欺容 疑で浅川社長ら4人を逮捕。この問題は刑事事件に発展した。ラッセ ル・インベストメント・コンサルティング部の眞保二朗ディレクターは AIJ問題後、年金の間で小規模な独立系を敬遠する動きはあるが「消 去法で大手ヘッジファンドは残す傾向がある」という。

米独立系資産運用会社4位のニューバーガー・バーマンも、新たに 年金基金から資産を受託した。エリック・D・ワインスタイン最高投資 責任者(CIO)は、日本の年金基金が投資先に海外ファンドを加えれ ば、「投資の選択肢が広がり、予定利率の達成にも近づく」と述べ、受 託資産の拡大に意欲を示した。

JPモルガン・アセット・マネジメントが3月上旬から5月上旬に 140団体を対象に実施した調査によると、今後もヘッジファンドなどオ ルタナティブ投資を増やす方針の年金は21%あった。ただ、AIJ問題 を受けて、半数を超える53%の基金が懸念すべき問題として認識。運用 機関決定プロセスの見直しの必要性を挙げた基金が約24%あった。

ヘッジファンドや、それを束ねたファンドオブヘッジファンズ(F OF)は、リーマンショック後の市場混乱に伴って発動された解約制限 で投資が敬遠された経緯がある。しかし、そうした資金が逆にAIJ問 題をきっかけにFOFなどに戻ってきている面もあるという。

運用先を厳選

FRMの佐藤氏は、年金はヘッジファンドのデューデリジェンス (適正評価手続き)に関心を高めており、「当社のFOFへの需要は高 まっているようだ」と述べた。ラッセルの眞保氏は「どうリスクを回避 するか、投資家にどう説明責任を果たすかといった観点で、投資先選定 のプロセスやリスク管理の姿勢が変わってきている」と分析した。

アジアのヘッジファンドに投資するFOFの創設者であるマイケ ル・ヴァン・ビエマ氏は年金などの投資家が「FOFを選択するのは、 投資の専門知識を補うためで有効な手段の1つ。直接投資が最善策とは 限らないからだ」と指摘。ヘッジファンドなどの存在意義をあらためて 強調した。

日立国際電気企業年金基金は12年度にヘッジファンドの投資割合 を8%から15%に拡大する計画だ。佐倉和明運用執行理事は、「ファン ド選択の入口では規模や国籍は関係ない。目標リターン・リスクの水準 で精査した結果、残ったファンドに投資する」と述べた。

米コンサルティング会社のタワーズワトソンによる11年の調査で は、日本の年金資産は主要13カ国全体の14.3%と米国に次いで第2位 資産配分は株式31%、債券59%、その他6%、現金4%で11年4月か ら1年間の推計運用利回りは2.4%だった。