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【映画評】ヘッジファンドで成功の億万長者、リムジンの日々

エリック・パッカー(28)はヘッジ ファンドを運営する億万長者だ。ストレッチリムジンに乗って日々を過 ごす。そこで各界の重鎮たちに助言し健康診断を受け、女性をもてな す。

パッカーはデビッド・クローネンバーグ監督が米作家ドン・デリー ロ氏の小説を映画化した「コスモポリス」の主人公だ。先日閉幕したカ ンヌ映画祭で初公開された。「トワイライト」シリーズでの吸血鬼役で 知られるロバート・パティンソンが主演を務めている。

「主役のエリック・パッカーの役柄について、ウォール街の吸血鬼 かオオカミ人間のようだと言うのは簡単だが、それでは極めて表面的 だ。この人物は歴史や過去を抱える生身の人間であり、その歴史や過去 は『トワイライト』ではなく『コスモポリス』に描かれているもの だ」。クローネンバーグ監督は、2作の主人公の類似点について記者団 から質問され、こう答えた。

パティンソンもカンヌでの記者会見で2つの役を結び付けることを 避けた。金融について「誰にとっても道理にかなわない世界」だが「ば かばかしいほど不釣り合いな権力を持っているようだ」と語った。

原作者のデリーロ氏はクローネンバーグ監督を認めている。

同氏は「脚本には全く関わっていない。だから素晴らしい映画に仕 上がった」と述べた。

実際にはデリーロ氏は脚本の全てに関係している。脚本はクローネ ンバーグ監督が6日間かけて書き上げたが、会話の言葉は原作から一語 ずつ拾い上げられたものだ。そして、そこにほんの少し命を吹き込み、 傑作小説をそのままの状態で映画化している。

若き成功者

若き億万長者はリムジンに乗ってマンハッタンを走り抜ける。雑多 な分野の専門家たちをリムジンの中に招き入れる。ブランド物のスニー カーを履いた22歳のおたく青年は人民元について説明する。医師は毎日 行う直腸検査の際、前立腺が非対称だと診断する。フランスの女優、ジ ュリエット・ビノシュ演じる美術アドバイザーは、リムジンの中での情 事の後、米画家マーク・ロスコの絵画を買わないかと持ち掛ける。パッ カーは、欲しいのはヒューストンにあるロスコの絵画が飾られた空間ロ スコ・チャペルで、ニューヨークのマンションに設置したいと切り返 す。

若き成功者はウォール街に抗議するデモ隊とも対峙(たいじ)す る。デモの参加者たちはパッカーにネズミの死骸を投げ付け、顔中にク リームパイを塗り付ける。情緒不安定の元従業員とも長時間にわたって 話し合う。

多彩な配役は、デリーロ氏の原作が基になっているのは明らかだ。 ただ、小説ではパッカーはもっと魂のある人物として描かれている。最 初のページにはこのような記述がある。「詩は、彼に呼吸していること を意識させた。詩は、普段気付く準備をしていないことを意識する瞬間 を与えてくれた」。

映画ではこのナレーションはなく、パッカーの内面の動きをほとん ど垣間見ることはできない。

パティンソンの演技が最も力強い。さりげない表現がとても効果的 で、リムジンでのビノシュや医師との複雑なシーンを見事に演じてい る。他の大物俳優陣は期待外れだった。ビノシュは母国語のフランス語 で演じた方が良かったかもしれない。彼女の英語は少し取って付けたよ うに聞こえる。

話題性と「トワイライト」の超大スターが多数の映画ファンを引き 付けるだろう。原作を読んでから映画館に足を運んだ方が楽しめそう だ。

評価は星2つ半。評価は、星なしから星4つの5段階で星4つが最 高。

(ナエリ氏はブルームバーグ・ニュースの芸術・娯楽部門で記事を 執筆しています。この記事の内容は同氏自身の見解です)

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