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【コラム】高額報酬ならウォール街、は既に伝説か-コーハン

たんまり報酬を受けられる業 界と言えばウォール街に決まっている。本当にそうだろうか。もう 一度考えてみよう。

ウォール街の報酬の気前良さを判断する上で2011年の幹部報 酬が参考になるならば、他業界のそれと比べてみよう。そうすれば、 ウォール街の繁栄ぶりが確実に色あせたことが分かる。

大手金融機関の最高経営責任者(CEO)で11年の報酬が最 高だったのはJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン氏で、 その総額は2300万ドル(約18億3000万円)。ウェルズ・ファ ーゴのジョン・スタンプ氏は1790万ドル、ゴールドマン・サック ス・グループのロイド・ブランクファイン氏は1620万ドルだった。 シティグループのビクラム・パンディット氏は1490万ドルだった が、この報酬プランは同行株主の55%に否決された。モルガン・ スタンレーのジェームズ・ゴーマン氏の受け取り額は1050万ドル で、前年比25%カット。バンク・オブ・アメリカ (BOA)の ブライアン・モイニハン氏は810万ドルだった。

とてつもない金額だ。それに、ウォール街金融機関の従業員向 け報酬の年間収入に対する割合は通常40-50%で、比率がこれよ り大きい上場企業を抱える業種は他にない。それでも明らかな傾向 がある。つまり金額で見れば、ウォール街の報酬が他業種に比べ、 近年下がってきているということだ。

それにはもちろん理由がある。一般的に言えば、利益が下がり、 株主資本利益率(ROE)も低下、収入の伸びも鈍化、株式も値下 がりし、規制は強化されている。そして、この難局を打開する方法 が見つかる公算は小さい。もちろん、ウォール街の幹部やそこで働 く幸運にありついた人々(自己資本を投じずにここまで金がもうか る場所はないだろう)に同情する余地はない。それでもここ最近の 傾向は、大手銀に異変をもたらすかもしれない。

ウォール街のお約束

ここ数十年、ウォール街は世界で最上級の優秀な人材を採用す ることができたが、それは大体において他業種のどこよりも高い報 酬を支払うという約束と引き換えだった。最近ウォール街のどこか に就職した人間で、高い給料を約束されていることが志望動機では ないという人物がいれば、かなり珍しい人材だ。しかし、この約束 がもはや守られない、あるいは報酬が思ったより低いとなれば、優 秀な人々はウォール街を立 ち去る。

で、彼らはどこへ行くだろうか。カネが行く先を決めるという 法則が通用するなら、メディアといった業界へ押し寄せるに違いな い。メディア業界のCEOらは11年報酬がもたらす幸運を静かに 享受していた。その金額は例えば、米3大ネットワークの一角であ るCBSのレスリー・ムーンベス氏が6990万ドル。ディスカバリ ー・コミュニケーションズのデービッド・ザスラブ氏は5240万ド ル、バイアコムのフィリペ・ド ーマン氏は4300万ドルだ。ウォ ルト・ディズニーのロバート・アイガー氏は3100万ドル、タイ ム・ワーナーのジェフリー・ビュークス氏は2600万ドルだった。 コムキャストのブライアン・ロバーツ氏は、前年比13%カットで も2700万ドルを受け取った。

新時代の幕開け

かくして、先週公表されたAP通信の報酬が高い幹部リスト上 位15人のうち、6人をメディア企業の幹部が占めた。バンカーの 名前は一人もない。ここに登場する幹部が途方もない報酬を受け取 るのに値したのは確かだ。企業利益は上がり、株価も上昇している。 それにしても、メディア企業のトップの報酬がウォール街の幹部を 上回ったのは、一体いつ以来のことなのだろうか。

このようなパラダイムシフトは滅多に起きないし、数十年に一 度の新時代の幕開けを意味しているかもしれない。ウォール街で見 込める報酬はもはや最高ではないからだ。金融機関で日々働くこと が現在いかに惨めであるかを合わせれば、ウォール街の経営者は再 考してしかるべきかもしれない。ビジネスモデルのみならず、優秀 な人材にとって魅力的な業界であり続けるために何をすべきかとい うことをもう一度考え直すことだ。最高の報酬を提示するというこ とがもはや選択肢にないのだから。(ウィリアム・D・コーハン)

(ウィリアム・D・コーハン氏は元バンカーで、「Money and Power: How Goldman Sachs Came to Rule the World(マネー・アンド・パワー:ゴールドマンはどうやって世 界の支配者になったか)」の作者。ブルームバーグ・ビューのコラ ムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Wall Street Titans Outearned by Media Czars: William D. Cohan(抜粋)

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