【コラム】緊縮バブルの欧州、97年通貨危機から学べ-ペセック

ギリシャ問題が深刻化し、欧州当局 者が手をこまぬき、アジアが世界危機の再燃を警戒する中、私はタイに ついて考えている。

史上最大級の危機を引き起こしたタイ・バーツの暴落から、今年の 夏で15年を迎える。タイの通貨暴落はインドネシアや韓国、マレーシア に広がった後、欧米に向かい、世界的な危機に発展。ダウ工業株30種平 均は1営業日で500ポイント余り急落したほか、ヘッジファンドが破綻 し、大型救済が普通のことになった。

あれから15年たった今、世界は逆の状態になってしまった。1997年 にはアジアが欧米に危機を伝染させたが、2008年からは欧米がアジアに 混乱を波及させることで、そのお返しをしているようだ。現在、欧州は 裕福なアジア諸国に支援を求めている。だが、やるべきことは他にある のではないか。それは、アジアの崩壊とその後の目覚しい復活から、教 訓を学ぶことだ。

アジアは、緊縮財政のタイミングを誤ったり、現実否定に陥った り、非常時に通常の経済政策に従ったりすることが危険であることを世 界に示した。それなのになぜ欧州は、アジアが全く効果がないと証明し た危機対策に走っているのか。

欧州はまだ経済より政治を優先させており、アジアが教訓として学 んだ2つのことを見落としている。1つ目は、国際金融システムが首脳 会議や共同声明が追い付けないほど速く変化していること。2つ目は、 世界に頼れる経済のけん引役がいなくなってしまったことだ。

緊縮財政への執着

1つ目の問題は主にドイツ政府が示している緊縮財政への執着心に 見受けられる。これは、ワシントンの当局者らが97年にアジアに対して 行った誤った提言に起因する。当時、米財務省と国際通貨基金 (IMF)はアジアに対し、高金利を維持することで通貨を支え、歳出 や債務を削減するよう要求していた。

言うまでもなく、08年のリーマン・ブラザーズの破綻後、米国でさ えこの提言に従わなかった。アジアも10年前、提言など意に介さなかっ た。タイやインドネシア、韓国の当局者が緊縮財政の代わりによりきめ 細かい政策を実施すると、成長が回復し、投資家がアジアに戻ってき た。

2つ目の問題、世界経済のけん引役に頼れないことは、現在の欧州 にとって景気刺激策への必要性が、90年代後半のアジアより高いことを 示している。当時、米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン 議長が述べていたように、米国はまさに「繁栄のオアシス」だった。現 在の欧州にとって世界の状況は一変している。それなのに、欧州は「緊 縮バブル」とでも呼ぶべき状態に陥っている。

ギリシャ救済の空しさ

ギリシャの救済が決まるたび、不備のある経済同盟を政治的に解決 しようとすることの空しさばかりが目につく。現実否定によって、将来 避けられないギリシャのユーロ離脱が先延ばしになったため、投機的な 投資家はもっと大きな標的を見つけた。現在世界12位の経済規模のスペ インだ。

それは、アジアの危機が地域の問題から世界的な問題に変わった97 年当時の韓国とほぼ同じ順位だ。欧州は、痛みを伴っても財政問題の根 幹に早急に対応すればするほど、速く回復できることを忘れている。そ のためには成長が必要であり、大胆さも要求される。

韓国は早急に公的債務や民間債務の規模を公表し、経済改革や競争 力向上を達成した。これに対し、ギリシャは、債務再編、デフォルト (債務不履行)、ユーロ離脱であれ、大きな負担をほとんど負っていな い。問題の否定と先延ばしは、ユーロ圏を後退させている。

韓国政府の97年以降の改革は15年後の現在、大きく実を結んだ。 今、韓国が広報スローガン「ダイナミック・コリア」を掲げても、笑う 人は誰もいない。サムスン電子は市場シェアを急速に拡大し、ソニーを 取るに足らない存在に追いやりつつある。現代自動車もトヨタ自動車を 追い上げている。

近年政変を経験したタイも、0.7%という低い失業率を誇り、タイ 中央銀行は今年の成長率を6%と予想している。

スペインは例えば2027年、どんな状態にあるだろうか。現在の韓国 のように、経済規模は世界14位になっているだろうか。スペインの消費 者が使っているのは、ユーロだろうかペセタだろうか。それは誰にも分 からない。ただ、アジアの教訓に耳を傾けようとしない欧州の姿を見る と、楽観的ではいられない。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏はブルームバーグ・ビューのコラムニス トです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:Bubble in Austerity Shows Europe Is Ignoring 1997: William Pesek(抜粋)

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