ギリシャのアテネ大学で経済学博士 課程の責任者を務めるヤニス・バルファキス教授は、2011年終わりごろ にはすっかり有名人になっていた。同教授は既に2年前から、ギリシャ は支払い不能だとし、ユーロ圏にいる間にデフォルト(債務不履行)す るべきだと主張していた。

しかし、ある日路上で群衆に取り囲まれ自宅には不快な電話がかか ってくるに至り、夫人は昨年12月に「政治家になるかこの国を出て行く か」の選択を教授に迫った。そして、バルファキス教授は多くの学生や 学者たちに倣い、ギリシャを去った。ブルームバーグ・ビジネスウィー ク誌5月28日号が報じた。

それは苦渋の選択だった。海外で学んだり教えたりした後、同教授 は2000年にアテネに戻り、経済学の大問題を解明するための博士課程を 作り上げた。それは、経済モデルに依存し過ぎて実体経済に起こること を予測し損ねるという問題だ。同教授が作ったカリキュラムは学生たち に、難しい数学のモデルを理解すると同時に、それらモデルの誤謬(ご びゅう)を証明する歴史や哲学を学ぶことを求める。

このカリキュラムはカリフォルニア大学ロサンゼルス校のアクセ ル・レイヨンフーブッド教授やテキサス大学オースティン校のジェーム ズ・ガルブレイス教授など著名エコノミストから高く評価されていた。 このプログラムのためにギリシャで学ぶ外国人学生や、祖国に戻るギリ シャ人学生もいた。

ガルブレイス教授は電子メールで、バルファキス教授の「視点は正 しいと思うし、われわれは気が合う」と書いている。

博士課程プログラム構築のための当初の資金は欧州連合(EU)の 欧州委員会から提供された。2005年には奨学金や海外から教授を招くた めの民間組合による資金提供プログラムができた。バルファキス教授 は06年にアテネで行った講演で、米国の不動産を震源とする金融危機の 発生を予想。それがウォール街を経てギリシャに及ぶだろうと予測し た。

2010年には危機がギリシャに及んだ。組合が支援継続が困難になっ たことを伝えてきて、プログラムは、国営の高等教育システムに依存す ることになった。緊縮財政の中で11年夏にはギリシャ中の大学で非常勤 教授のほとんどが解雇された。プログラムは残された教授たちによって 運営されていたが、バルファキス教授によれば教授陣は「疲れ切ってぼ ろぼろ」になっていた。

今ではギリシャの経済学博士課程の学生たちは課程を完了するため に海外の大学へ行ことが多いという。パンテイオン大学が今年1月に実 施した調査によると、大学に行く年齢のギリシャ人の53%が海外への移 民を考えており、17%は既にそうする計画だった。

11年遅くにバルファキス教授は、ガルブレイス教授のつてでテキサ ス大学から経済学部でのポストを提案された。バルファキス教授はワシ ントン州ベルビューのオンラインゲーム制作会社、バルブのチーフエコ ノミストにもなっている。同社は仮想マネーを使うゲームを開発してい る。

シアトル行きの飛行機に乗り込む直前にバルファキス教授がつづっ た携帯電話のメッセージによると、「バブル形成を防ぐためにゲームの 中の『経済』を研究してほしいと頼まれた」という。

原題:Greeks Run Professor Out of Country for Telling Economic Truths(抜粋)

--取材協力:Oliver Staley、Eleni Chrepa.

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE