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「メイド・イン・ジャパン」選択の富士重、輸出でしのぎ海外増強を探る

中国当局から現地生産の認可を得る ことができなかった富士重工業は、中期経営計画を修正して日本での生 産比率を実質的に引き上げることになった。大規模な投資を伴う米国で の増産も当面控えて、円高リスクを抱えながら「メイド・イン・ジャパ ン」の車両を輸出して世界市場に挑む。

中国奇瑞汽車との合弁工場建設をいったん断念した富士重は8日、 代替策として生産能力を国内で8万台、米国で3万台増強すると発表し た。日本メーカーで最も高い国内生産比率73%を中国生産の開始で61% に下げる計画だったが、結果的に2015年度計画でもこの比率は変わらな いことになる。

国内自動車各社は円高を受けて、中南米をはじめとする海外生産を 増強しているが、この流れに富士重は逆行する形となる。高橋充最高財 務責任者(CFO)は18日、米国生産能力の大幅な拡大は巨額投資が必 要となるため「慎重に見極める」と述べた。現在の計画では米国の15年 度の生産能力は年20万台、販売目標の約半分は日本から輸出する。

BNPパリバ証券の杉本浩一アナリストは、能力拡大を急がないと 機会損失につながりかねないとしながら「富士重の経営規模で新たに工 場建屋を建設するのは大きな決断だ」と述べた。

国内自動車各社は生産能力の拡大を海外で進めている。国内生産比 率が昨年度71%のマツダはメキシコで車両生産工場を建設中で、13年に は操業を開始する。同53%のトヨタ自動車は国内生産300万台を維持し ながら海外投資を増やし、インドネシアやロシアなどで生産を拡大する 計画。日産自動車やホンダも同様に海外での生産増強に積極的だ。

投資とのバランス

富士重の米インディアナ州の工場は今回3万台増強する年産20万台 が限界で、さらに増強するには工場建屋を新設する必要がある。一方、 日本の工場では販売好調な小型スポーツ車「BRZ」などの増産対応の 計画がすでに進んでいた。国内対応のほうが投資額を低く抑えられる。

クレディ・スイス証券の高橋一生アナリストは富士重について、円 高を考えると米国で能力を増やすのが最良の選択肢だが、多大な投資を して能力を大きくしてしまうと固定費負担が重くなると指摘。経営規模 に合った善後策を取ったと理解を示した。

富士重の株価は9日、中期計画の見直しを受けて上昇し終値は前日 比6%高の638円だった。

株価上昇率でトップ

中国生産の見送り表明や高い国内生産比率にもかかわらず、富士重 の今年の株価上昇率は、国内自動車8社で最も高い。年初来から25日ま での値上がり率は33%で、2位のトヨタの19%を大きく引き離してい る。

9日に富士重の株式を「アウトパフォーム」から「強い市場平均以 上」に格上げした立花証券の林健太郎アナリストは為替リスクについ て、中期計画の対ドル前提を当初の1ドル=90円から80円に見直し、現 状では大きなマイナス要因とは考えていないと述べた。富士重の購買層 が中高所得者層に多く、また欧州での販売も多くなくマクロ経済の影響 を受けにくいことも評価した。

富士重のスバルブランドはユーザーからの評価も高い。米消費者団 体専門誌「コンシューマー・リポート」で、スバルは12年の推奨車種の トップに選ばれた。「インプレッサ」や「レガシィ」など7車種の車の 性能やデザイン、信頼性、快適性などを総合的に評価したもので、特に 路上運転テストではスバル全車種の平均が最高得点だった。

「米国での増産は急がなければ」

富士重は8日、今期純利益が前期比25%増の480億円になる見通し を示した。前々期(11年3月期)の過去最高益503億円に迫る。今期の 自動車販売は米国で前年度比44%増、中国で14%増の見通しだ。

それでも国内生産比率が高いと円高により収益が目減りする懸念が つきまとう。為替変動への対応について富士重の吉永泰之社長はこの 日、「米国での増産は急がなければと思っている」と述べた。富士重で は、1円の円高で営業利益に65億円のマイナス影響がある。

いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員も、富士重につ いて「米国の能力拡大は最優先課題だ」と述べた。米国需要を取り込む と同時に為替変動リスクを回避できるとみている。米国での生産コスト は安くなる傾向で、一刻も早く能力を拡大するべきだとも指摘した。

富士重が米国での生産能力増強の検討について遅れた理由の1つ に、中国での生産開始の認可を待っていたことがある。中期計画の期間 中の中国現地生産の開始を見送ったことで、中国の15年度の販売計画は 当初の18万台から10万台へ下方修正した。

LMCオートモーティブのアナリスト、マービン・ズー氏は今月の リポートで「中国で現地合弁が実現していたら大幅なコスト削減がで き、市場占有率を高めることができただろう」とコメントしている。

日本からの輸出だけで中国で10万台を販売する計画について、高橋 CFOは「簡単ではない」と述べた。現地生産できなければ25%程度の 関税がかかり、価格競争力も弱くなる。富士重は中国でブランドイメー ジの確立に取り組んで、日本からの輸出分しか売れない現状に対応す る。同時にコスト低減を進めて、米国などでの増産が実現する時期を待 つ方針だ。

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