【コラム】ギリシャの離脱でユーロ圏は強固に-キルケゴール

ギリシャがユーロ圏から離脱すれ ば、ギリシャのみならずユーロ圏全体に深刻な打撃を与えることになろ う。ただ、通貨同盟にとってはこれまでの経験で最良の出来事の一つに なり得るかもしれない。

来月実施されるギリシャの再選挙は、同国がユーロ圏のメンバーと して12年の歴史に幕を閉じるべきかどうかを判断する国民投票の役割を 果たす。離脱に賛成なら、ギリシャの銀行システムは崩壊し、海外の債 権者は新通貨での受け取りを拒否するため、同国経済の心停止を引き起 こすだろう。国際社会でギリシャ向け債権が現時点で最も多いユーロ圏 の金融システムは数千億ユーロ規模の損失を被る恐れがある。

欧州の経済全般にとっての主要な脅威は、一体性が強くうたわれて いた通貨同盟に為替リスクが再び生まれることだろう。ギリシャの銀行 が破綻したり、新通貨ドラクマへ預金を強制的に交換する準備のため長 期間にわたり店舗閉鎖を余儀なくされれば、欧州周辺国の国民や企業が 万一に備えて銀行から預金を引き出すかどうかなど予測不可能だ。金融 上、壊滅的な結果をもたらす恐れがある。

こうした悲惨な影響が及ぶ可能性を踏まえ、多くの人々は責任ある 欧州指導者はギリシャの離脱を許さないだろうと考える。この見方に立 てば、ギリシャを離脱させるという議論は全て単なる脅しだ。欧州指導 者はギリシャとの我慢比べで先に根負けし、同国の緊縮策の条件緩和に 踏み切るだろうと読む。

モラルハザード

この論理はユーロ圏の政治経済学の極めて重要なポイントを過小評 価している。超国家的な権力がなく部分的な主権を持つメンバーで構成 する同盟において、ギリシャに対する寛大な対応が他国に誤った行動を 助長する可能性があるというモラルハザード(倫理観の欠如)の懸念 が、なお大きなウエートを占めているということだ。欧州中央銀行( ECB)からの支援を減らしてギリシャ政府を資金不足に陥れると脅 し、ユーロを放棄するか、あるいはモンテネグロのように単にユーロが 流通する国として留まるかの決断をユーロ圏指導者がギリシャに迫る 際、彼らは虚勢を張っているわけではない。

欧州指導者はユーロ圏の分裂を容認しないだろう。その点にギリシ ャの離脱の明るい兆しが見いだせる。通貨同盟を崩壊から守るため、残 る加盟国はユーロ圏の長期的な存続に今なお欠かせない経済・財政統合 に向けて、極めて迅速に行動せざるを得なくなるだろう。

これが欧州連合(EU)の本質であり、地域統合の歴史だ。つまり 深刻な危機との闘いが行動を促すのだ。

銀行の取り付け騒ぎの脅威に欧州がどう対応するかを考えてみよ う。欧州全土の預金を保証するようなプログラムだけが、ポルトガルや スペイン、イタリアなどの周辺国の銀行の預金者を納得させるのに十分 な権威を持つことになろう。当初はドイツのメルケル首相とECBのド ラギ総裁が口頭で確約できるかもしれないが、いざ同プログラムを導入 しようとすれば、ユーロ圏の銀行監督や規制の統合で飛躍的な進歩が必 要になろう。域内の銀行監督は超国家的なレベルに移管されなければな らないだろう。言い換えれば、ギリシャ離脱の直接の結果として、ユー ロ圏の銀行同盟が姿を現すかもしれない。

地固め効果

ギリシャにおける悲惨な経済的影響はユーロ圏の結束を強める効果 があるだろう。救済の限界と無責任な行動の結果を明示することで、残 る加盟国がモラルハザードに陥るリスクを減らすということだ。どの周 辺国もギリシャと同じ経験をしたくはないだろう。欧州北部の納税者 は、彼らの金融支援が無制限でも無条件でもないということに満足する だろう。結果として、ユーロ共同債の導入のような財政統合プロジェク トの困難な政治課題への取り組みが一段と容易になると考えられる。

それにも増してギリシャの離脱は、加盟各国経済の歩調が合わず共 通の金融政策を共有できないというユーロ圏が抱える最大の問題点の一 つを取り除くことになろう。経済的にも政治的にも最も困難な加盟国の 離脱により、残る16カ国はより一つの単位として行動することができる ようになる。

最終的に、残るユーロ圏メンバーにおける統合深化だけが、ギリシ ャ離脱後の通貨同盟は後戻りできないという信念を再構築し得る。幸い にも、まさにこれこそがギリシャ離脱で最も起こる可能性が高い反応 だ。(ヤコブ・キルケゴール)

(ヤコブ・キルケゴール氏はピーターソン国際経済研究所の研究員 です。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:A Greek Exit Could Make the Euro Area Stronger: Jacob Kirkegaard(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE