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「日銀サーベイ」金利予想、経済物価情勢、金融政策の展望コメント

【記者:日高正裕】

5月21日(ブルームバーグ):ブルームバーグ・ニュースは22、 23日の日銀の金融政策決定会合を前に、有力「日銀ウオッチャー」14 人に金融政策の予想を聞いた。質問内容は以下の通り。アンケート回 答期限は18日午前8時。エコノミスト予想のまとめ記事として「日銀 会合は現状維持へ、欧州緊迫で一段の円高・株安なら追加緩和も」を 同時配信した。

1)今回の会合で予想される政策、2)日銀が政策金利を「引き 下げる」時期、3)日銀が政策金利を「引き上げる」時期、4)~11) 政策金利の予想水準(氏名50音順、かっこは前回回答)、12)経済・ 物価の見通し-日銀が4月27日の経済・物価情勢の展望(展望リポー ト)で示した、以下の見通しの実現可能性。消費者物価指数(生鮮食 品を除いたコアCPI)前年比上昇率が「今回の見通し期間後半にか けて0%台後半となり、その後、当面の『中長期的な物価安定の目途』 である1%に遠からず達する可能性が高い」。

13)金融政策運営の見通し-①今会合での追加緩和の可能性、追 加緩和がある場合、予想される手段、その効果と副作用、追加緩和を 行わなかった場合の市場の反応、今回追加緩和に踏み切らなかった場 合、次の一手のタイミングと手段②資産買い入れ等基金で買い入れ対 象とする長期国債の年限をさらに延長するとすればいつか、また、何 年まで延長するか、延長した場合の効果と副作用③日銀がコアCPI 前年比は「1%に遠からず達する可能性が高い」と表明したことの含 意。

●三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年度以降(同) 4)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年3月末 :0.00%-0.10%(同)

12)景気は復興需要を下支えに回復軌道が持続する。ただし関連財政 支出のピークアウト、円高地合いと海外景気減速による外需の伸び悩 み、および電力制約などを受けて足取りは鈍化。社会保障・税一体改 革の停滞を背景とした将来不安も消費者心理の重荷に。中長期的には 産業空洞化や人口減少、構造改革の遅れ等により、潜在成長率に低下 圧力がかかってゆく。

消費者物価指数は13年度中にかけ、需給ギャップのマイナス(需 要不足)解消が遅れるなか、0%前後での推移を続ける。1%が見通 せるような物価情勢になるのは早くて14年度下期。日銀の物価見通し の実現可能性は低い。需給ギャップのマイナス解消時期が2014年末- 15年初ごろにずれ込むため。

13)①追加緩和の可能性:現時点で20%、今後、円高/株安が一段と 進行すれば上昇する。追加緩和実施の場合、予想される手段は資産買 い入れ等基金の増額。効果と副作用は増額規模によるが、円高/株安 の進行にいったん歯止め、長めの市場金利の低下。追加緩和を行わな かった場合、市場の反応は一時的な円高/株安。次の一手のタイミン グは円高/株安が進行すれば6月、さもなくば7月の展望リポート中 間見直し時に資産買入等基金の増額。

②遅くとも年度内に「1-5年以内」に延長、効果は長めの市場 金利の低下促進、副作用は債券バブルの助長。③市場や永田町の“際限 なき金融緩和強化”期待に対するけん制。日銀は10月の「展望リポー ト」で14年度見通しを1%とし、事実上のインフレ目標達成、それに 伴う“際限なき緩和強化”の「出口」を示す考えで、その影響を測るた めの「観測気球」を上げたのではないか。

●SMBC日興証券の岩下真理債券ストラテジスト 1)今回会合 :現状維持(全員一致) 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年度以降(同) 4)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年3月末 :0.00%-0.10%(同)

12)5月に入り米国経済の弱気風が吹き、欧州不安が再燃している。 国内経済が今年度上期に緩やかな回復経路に復するという日銀の標準 シナリオにとって、リスク要因の一番は海外経済動向であり、足元で 下振れリスクが高まったと言えるだろう。米4月雇用統計が3月に続 き市場予想より下振れし、今年の暖冬の影響の反動に加え、リーマン ショック後の季節調整の歪みが出る時期にあることが再認識された (10年以降の3度目の正直となる)。

4月18日の西村日銀副総裁の講演でも、米国経済を注視していく 上で「冬場から初春にかけての計数が過大評価される一方、夏場にか けての計数が過小評価される可能性」を指摘していた。今後も実態以 上に悪い指標が出てくる可能性をやはり念頭に置くべきだろう。バー ナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の発言から、6月1日発 表の米5月雇用統計が4月並みかそれを下回る内容となれば、次回6 月19、20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加緩和が決定さ れる可能性が高いとみている。

一方の欧州ではギリシャの政局混迷でギリシャのデフォルト懸念 およびユーロ圏離脱の可能性も視野に入ってきた。ギリシャの再選挙 は6月17日と決まったが、それまでの間に23日の欧州非公式首脳会 議、25日には欧州連合(EU)首脳会合、6月6日には欧州中央銀行 (ECB)理事会が予定されている。ギリシャにとどまらず、不安感 がスペインやイタリアに飛び火しないように、欧州当局はセーフティ ネットの拡充を整える必要に迫られるだろう。

13)①4月27日の追加緩和決定からまだ3週間、今回は緩和効果を見 守る時間帯である。ただし、4月の展望リポート発表時よりもギリシ ャの政局不透明感は増し、ユーロ圏離脱の可能性も視野に入ってきた。 今後、世界的にテールリスクへの対応が本格化する可能性も否定はで きないだろう。中央銀行ができるのは時間稼ぎの策にとどまるが、防 火壁として流動性供給が必要となる局面は想定される。日銀も今後の 事態悪化に備えた議論に時間を費やすことになろう。

現時点で日銀の次なる追加緩和を検討するタイミングは、消費税 国会の方向性が見えるころ、6月17日のギリシャ再選挙、6月19、 20日の米FOMCの結果を踏まえた後、中間評価時となる7月11、12 日の決定会合をメインとしている。ただし、昨秋の欧州不安時、日本 では円高進行を背景に10月27日に日銀は追加緩和(資産買入等基金 の5兆円増額)を決定、10月31日には政府がドル買い円売り介入を 実施した。今後も市場動向が不安定になった場合には、日銀が追加緩 和に追い込まれる可能性は高まるだろう。

②包括緩和が10年10月に決定されてから1年半の時間を経て、 12年4月に対象国債の残存年限は2年から3年に長期化されたばか りである。4月27日の白川総裁会見では「日銀の国債買い入れは財政 ファイナンスを目的としたものではない」、「私たちの言葉を信じて頂 きたい」と強く訴えていた。

16日には残存2年以下の基金による国債買入れが初の札割れと なった。5月以降のオペのオファー金額は2年以下が1000億円、2年 超3年以下が6000億円となっていたが、次回は配分を変える対応が見 込まれよう。3年以下の国債買入れが定着するにはまだ時間を要する。 すぐに残存年限の長期化を進めることはないだろう。

今後、追加緩和を繰り返す(筆者は3カ月に1度ぐらいのペース を想定)過程で、残存年限の長期化を検討するとすれば、最初の関門 は14年度の経済・物価見通しを示す10月展望リポート時と考える。 延長は1年でじっくり浸透の姿勢なら、3年の次は4年が自然であろ う。その効果は市場の期待に答えること、およびやや長めの金利低下 を一層促すこと。

一方で、副作用はイールドカーブのフラット化により、長短スプ レッドの縮小は金融機関(特に中小)の収益には大きな打撃を与える ことになろう。また、財政のマネタイゼーションへの懸念が高まるよ うであれば、財政信認の低下に繋がる可能性がある。

③10月展望リポートで示す14年度の経済・物価見通しでは、コ アCPIは前年比+1%に達する可能性が高いと、現時点で日銀は見 ているようだ。Bloombergのインタビューで前田調査統計局長が語っ ていたが、①中国からの輸入品の上昇、②日本企業の販売戦略の見直 し(高齢者向けの商品やサービス)、③購入単価の上昇と3つの潮目の 変化を挙げていた。

いずれも展望リポートで分析されており、物価は緩やかに上昇し ていくとの見方の根拠と言えるだろう。日銀の物価見通しの実現可能 性だが、足元で世界経済の下振れリスクが高まっている。国際商品市 況も弱含んでいる。その結果、需給ギャップの改善度合いが後ずれし、 物価の上昇ピッチも想定より鈍化すると見込まれ、物価が前年比+ 1%に到達する時期が想定より遅れる可能性が高まることになろう。

●みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年7-9月以降(同) 4)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年3月末 :0.00%-0.10%(同)

12)景気は輸出主導で緩やかな回復を再開する流れにある。ただし、 輸出に勢いがつくよりも前に、公共投資やエコカー補助金が息切れす るリスクがある。物価は日銀が見ているような順調なデフレからの脱 却は見込み難い。過少需要・過剰供給のデフレ構造はまったく変わっ ていないとみている。

13)①4月27日会合における追加緩和から、まだ1カ月経っていない。 市場の状況が会合直前によほど大きく悪化しない限り、今回は4月追 加緩和の効果浸透を見守ることにして、全員一致で金融政策の現状維 持を決めるだろう。白川総裁の記者会見では、日銀は財政ファイナン スを行うつもりがないということがあらためて強調されるだろう。

ただし、ギリシャを中心とする欧州情勢についてはリスク認識を 高める可能性が高く、必要に応じて機動的に対応する姿勢を前面に出 すだろう。追加緩和は中間評価などにタイミングをおおむね合わせて 6月か7月で、基金による長期国債買い入れ増額5兆円と予想してい る。②残存期間1-3年のまま、延長はないと予想。これまでのロジ ックを崩して延長すると、財政ファイナンスではないかという疑念が 一気に膨らみやすい。

③日銀は次回(6月か7月)の追加緩和までで、なし崩し的な追 加緩和積み重ねの流れを止めたいと考えているのではないか。10月の 展望リポートで14年度の+1%見通しを提示すれば、話としては区切 りがつきやすい。

●東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2016年前半(同) 4)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年3月末 :0.00%-0.10%(同)

12)日銀は4月27日の会合で、展望リポートでの中期経済見通しのメ インシナリオと抱き合わせて、追加緩和策発動の間隔をある程度正常 化させたかったのだと思う(せめて3カ月間隔)。しかし、大型連休が 明けてギリシャショックや米経済指標の鈍化懸念が台頭し、リスクシ ナリオ顕在化の確率が高まりつつあるため、日銀としては息がつけな い状況が続きそうである。14年度後半ごろにCPIは1%近辺に達す るのではないか。

13)①4月27日の追加緩和策は危険な財政ファイナンスの領域に一段 と踏み込んだものであり、そのような大胆な決定を行った翌月に追加 緩和策を行う可能性は一般論としては低い。②ギリシャ問題の激化で 世界の金融市場がパニックに陥れば、基金の大幅拡大とともに、国債 の買い入れ年限が3年から5年に延ばされる可能性がある。

ただし、日本の問題は「危機モード」を終了すべき時期が来ても、 危機対策の政策をやめられないことにある。国債の買入れ年限が5年 になると、当面は金融機関の収益は圧迫され、中小企業などへの貸し 出しのリスクがとりづらくなり、一方、長期的には金融政策による政 府債務のマネタイゼーションが進んでいくことになると思われる。

③需給ギャップなどを基本に推計した結果なのだと考えられるが、 緩やかなインフレ期待を醸成することが今の日銀に求められているこ となので、日銀が「1%に遠からず達する可能性が高い」というメッ セージを国民に発することは特に批判される必要はないと思われる。 また、そのメッセージは出口政策への意欲を示したものではないと言 えるため、より実害はないだろう。

日銀は1%まで包括緩和策を続けるとは言っているが、1%にな ったらやめるとは一言も言っていない。現時点でその判断はオープン であり、現実には政治環境によりやめられないだろう。1%になった ら「物価安定のめど」が変更され、「2%以内」などの表現に変わると 思われる。

●JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年度以降(想定されず) 4)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年3月末 :0.00%-0.10%(同)

12)第1四半期GDPは予想を上回る成長率を記録した。11年第3四 半期から12年第1四半期にかけては平均4%(年率)近い成長を遂げ たことになる。しかし、今後は公共投資がピークアウトすると見られ ることから、第2四半期には2%前後に、12年後半には1-1.5%程 度の成長率に減速すると予測する。

なお個人消費はエコカー減税効果が薄れるにつれ、耐久財の需要 が減速すると予想されるが、第1四半期GDP統計で示されたように、 消費の強さは、マインドの改善から非耐久財、サービスにも拡がって いるので、消費が失速するリスクは小さい。

また、夏場の電力供給に関しても、関西電力管内を除けば電力供 給量は火力発電シフトで何とか確保できよう。原発停止の影響は、量 よりも価格が問題になる。原発停止が長期化すれば、発電コストの上 昇は3兆円/年間に上る。産業向け電力価格が引き上げられると、日 本企業の国際競争力は大幅に失われることになる。

第1四半期の国内需要デフレーター(前期比)がプラスに転化し たが、これは、CPIの改訂(標本の入れ替え:テレビ)に基づく技 術的な要因によるものだ。今後CPI前年比が14年ごろに1%に接近 する可能性はゼロではないが、円安を伴う輸入物価の大幅な上昇とく にエネルギー・資源価格の急上昇が必要になる。

中国の人件費上昇を背景とする輸入物価の上昇程度ではインパク トが小さい。というのも、中国の輸出物価の上昇は既に始まっている が、コアコア(エネルギーと食料品を除く)ベースのCPI前年比は 依然として大幅なマイナスだからだ。実際、08年当時にコアコアCP I前年比がプラスに転じたが、この時期は円安と資源価格の急騰がみ られた。

また、資源価格の急騰は海外景気が過熱、あるいは過剰流動性が 供給されている可能性を示しているが、このような局面の後には世界 的な景気後退が続くことが多く、日本経済にとっては再びデフレ圧力 が高まることになる。すなわち、海外要因で一時的にインフレになる ことはあっても、持続的にプラスのインフレ率を維持することは困難 なように思われる。

13)①追加緩和なし。次の一手は「国債購入増額、リスク資産購入増 額、年限延長」という4月のパッケージに加え、外債購入も検討課題。 日銀による外債購入は財務省が反対しているが、大幅な円高が進む下 では、政治主導で日銀による外債購入が決まる可能性もある。さらに、 日銀が保有するリスク資産量が増えると、日銀は自己資本の増額を図 る必要があるが、最終的には基金を日銀のバランスシートの外に出し、 特別目的会社化することも考えられる。

政府が出資あるいは損失保証を行い、日銀は融資を行うと言うよ うに本来の役割分担に戻ることになる。この特別目的会社は外貨債券 の購入も可能にすることができる。さらに、特別目的会社は民間から 資金を調達して投資ファンド化すれば、外貨資産を購入することは容 易になる。

②年限延長の時期は12年後半、5年まで。欧州危機深刻化に伴い ECBが利下げを含む金融緩和を行い、ついでFRBがQE3に向か う様相を示すと為替レートは円高に向かう可能背が高い。こうした状 況下で日銀は年限延長により、長期金利の低下を促すことで円高を防 ぐであろう。ただし、ドル長期金利がさらに低下する局面では、日銀 の追加緩和の為替レートに対する効果は限られている。

2月のような円安化の可能性は低く、せいぜい円高化のテンポを 緩やかにすること程度だろう。③日銀は緩和圧力の低下を企図したと 解釈できるが、将来、実際にインフレ率が上昇しない場合には、追加 緩和圧力を高めることになりかねない。

●第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年以降(同) 4)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年3月末 :0.00%-0.10%(同)

12)物価上昇率1%までの距離感は遠い。足元ではデフレからディス インフレに転じるような動きがあるものの、企業の価格転嫁力は乏し く、定性的にデフレ脱却を宣言できる環境にはない。完全失業率が4% を割ってくるようになれば、フィリップス曲線の経験則に沿って1% 台の物価上昇になってくるだろう(今は4.5%)。そのくらいの雇用改 善が見通せるようになって、ようやく日銀のシナリオが現実味を帯び てくる。

13)①さすがに5月は緩和がないだろう。しかし、ギリシャがユーロ 圏から離脱するがい然性が高まると、ユーロ安・円高が進んで日銀は 追加緩和を余儀なくされる。時期はわからないが、6/17日のギリシ ャの総選挙が注目。6月、7月と日銀の姿勢への目配りが怠れない。

②当面、3年物の買い入れで基金の積み上げを達成していくだろ う。すぐさま買入対象の年限拡大をするのではなく、段階があるとみ られる。具体的な時期はわからない。③遠からず1%という話は苦し 紛れに言っていると考えられる。注目したのは、物価上昇の展望を日 銀が発信しても、長期金利が上昇していないこと。日銀は債券市場を 刺激しないと高を括っているのだろうか。

●BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年4-6月以降(同) 4)12年6月末 :0.00%-0.10% 5)12年9月末 :0.00%-0.10% 6)12年12月末 :0.00%-0.10% 7)13年3月末 :0.00%-0.10% 8)13年6月末 :0.00%-0.10% 9)13年9月末 :0.00%-0.10% 10)13年12月末 :0.00%-0.10% 11)14年3月末 :0.00%-0.10%

12)トレンド成長率が0.5%程度であることを前提にすると、日銀が 予想する12年度、13年度の成長率見通しが実現して需給ギャップの 改善が続き、さらに14年度もトレンド成長率を上回る13年度並みの 成長が続けば、可能性が全くないわけではない。ただ、「物価安定のめ ど」は中長期的な概念であり、景気拡大局面で1%に達したからとい って、ゴールに到達したというわけではない。不況局面が訪れれば、 インフレ率には低下圧力が加わるのであり、あくまで景気循環を均し て1%程度となる必要がある。

13)①「物価安定のめど」に基づき、今後1%のインフレ率が視野に 入ってくるまで、日銀流のグラジュアリズムの下で、3カ月ごとの見 通しの公表時に情勢の点検を行いながら、資産買い入れ基金による国 債の追加購入を行う可能性が高い。次回の政策変更のタイミングは7 月前後。②年限が4年ともなると、出口戦略が困難になるため、景気 後退に陥るリスクなど、大きなショックが訪れることがなければ、予 想されない。

③以下、二つの仮説。仮説1:経済や金融システムの安定性に配 慮しながら金融政策運営を行うため、もう少し時間は要するが、物価 安定のゴールは必ず達成するという意味。根強いデフレ予想を1-2 年で取り除こうとすると、経済が過熱するほどの状態を作り出さなけ ればならない。そのことは、金融政策によって大きな景気変動を引起 す、ということを意味すると同時に、金融的不均衡が蓄積している可 能性もある。

金融政策の効果は、経済に一様に現れるのではなく、その波及メ カニズムを考えると、資産市場を含め金融部門により強い影響をもた らす。しかし、トレンド成長率が変わらなければ、アグレッシブな金 融政策によってもたらされた資産価格の大幅上昇や信用拡大を伴った 投資ブームはいずれ終えんを迎え、バブルの残骸が残るだけ。そのこ とは、金融政策のもう一つの目標である金融システムの安定性を損な う可能性もある。

仮説2:過去20年続いた中国の生産性上昇と割安な為替レートが もたらす日本へのデフレショックが、最終局面に近づいていると判断。 賃金インフレや農村から沿海部への労働移動の収束などから判断する と、中国経済はついにルイスの転換点を通過し、もはや実質為替レー トを低位にとどめておくことは難しくなっていると判断される。

名目為替レートの切上げを選択するか、そうでなければ賃金イン フレがさらに加速し、いずれのケースにおいても実質為替レートの大 幅な上昇は避けられない。現実に中国の実質為替レートは上昇し始め ており、各国の経済データを見ると、中国からの輸入比率はこのとこ ろ頭打ちとなっている。リーマンショック後の大規模な拡張財政が、 産業の内需転換をもたらした可能性もあるが、輸出が頭打ちとなって いるのは、実質為替レートの上昇によって、競争力が低下してきたこ とも影響している可能性がある。

日本でも、中国の割安な労働力を使うことで、低価格で勝負して いた衣料メーカーが、既に方針を転換し価格帯を引上げているのも、 国内だけでなく中国のマクロ的な環境変化に敏感に反応しているのだ と思われる。これらのことは、過去20年続いた中国の生産性上昇と割 安な為替レートがもたらす日本へのデフレショックが、最終局面に近 づいていることを意味している可能性がある。

●モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持(全員一致) 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年4-6月以降(同) 4)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年3月末 :0.00%-0.10%(同)

12)1-3月期の日本経済は①震災やタイ洪水によるサプライチェー ン問題の完全な克服②エコカー補助金等の政策需要③震災後の復興需 要とペントアップ需要-いった追い風から年率+4.1%の高成長を達成 した。もっとも、上記要因はいずれも一時的とみられる。すなわち、 ①による輸出の持ち直しは短期的、また②は補正予算措置が打たれな ければ早ければ7月ごろに予算が払底し反動減に見舞われることは必 至である。③は年間を通じて成長率の押し上げに寄与すると見込まれ るものの 、この要因も13年度は限界的にははく落しよう。

足元4-6月期については、1-3月期の高成長の原動力となっ た個人消費は3月の結果が不芳であったため、マイナスのゲタを履く ことが影響し伸び率は減速する見込み。また鉱工業生産統計において も海外需要減速の影響を受け企業の生産計画は慎重化している。夏場 の7-9月期については、全原発の稼動停止に伴い、電力不足の影響 が全国的に拡がる見通し。昨年夏場は生産に直接関係のない過剰な電 力消費が、企業や家計の節電努力によって抑制されたことから、結果 的に深刻な電力不足に陥ることは回避できた。しかし、本年は昨年よ り需給ひっ迫の度合いが強まることは避けられない。

13年は海外経済の動向次第ではあるが、一連の税・社会保障負担 の増大や将来の増税懸念、及び過去の円高影響が尾を引くこと、また 復興需要も押し上げ影響が限界的にはく落することから成長率は1% 程度に減速するとみている。海外経済については、足元の欧州ソブリ ン問題はもとより、米国についても財政政策について不確実性が高い。

なお、物価に関し、足元の日本型コア前年比は、弊社予測を上振 れて小幅プラス圏にあり、先行きも小幅プラス圏で推移する見込み。 主因は、(1)薄型TVのサンプル品目入れ替えにより前年比+0.3ポイ ント押し上げられたこと(2)ガソリンを中心とするエネルギー品目が 想定を上振れたこと(3)GDPの上方修正に伴いGDPギャップが当 初想定より縮小したこと。もっとも、13年度は上記TVやエネルギー 品目の押し上げ効果がはく落することから、前年比小幅マイナス圏へ 逆戻りする見通しである。

日銀の物価見通しには常に上方バイアスがあり、信頼性は高くな い。「今回の見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面 の『中長期的な物価安定の目途』である1%に遠からず達する可能性 が高い」という日銀の見解は純粋な経済予測というよりは政策的なメ ッセージと理解するのが無難であろう。

13)①今会合での追加緩和の可能性はないが、追加緩和を行わなかっ た場合の市場の反応は限定的であろう。今回追加緩和に踏み切らなか った場合、次の一手のタイミングは7月会合で展望レポートの中間レ ビュー時。手段は資産買入れ基金の増額と買入れる国債の年限延長と なろう。

②資産買い入れ等基金で買入対象とする長期国債の年限をさらに 延長するとすれば7月会合が有望。その場合、4年までの延長を予想。 延長した場合の効果としては、札割れを起こす可能性が低下しよう。 副作用は特に見込まない。日銀の保有国債の平均残存年限は資産買入 れ基金による買い入れ開始とともに足元4.2年程度まで短期化してお り、むしろ長期化することが望ましい。

③上述の通り、日銀の見解は純粋な経済予測というよりは政策的 なメッセージと理解するのが無難であろう。ただし、日銀は展望リポ ート本文脚注で「(消費者物価の前年比が)1年間に約1%ポイント改 善したのは、消費税率の引き上げや国際商品市況の大幅な上昇といっ た要因が影響した時期に限られている」とも述べており、1%に近づ くことが必ずしも引き締めを意味しないことを示唆している。総じて、 ヘッドラインはややタカ派的なトーンだが、内容をよく読むとバラン スを取ろうとした形跡がうかがえる。

●東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :今夏までが候補 3)利上げ時期 :2015年1-3月(同) 4)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年9月末 :0.00-0.05%(同) 6)12年12月末 :0.00-0.05%(同) 7)13年3月末 :0.00-0.05%(同) 8)13年6月末 :0.00-0.05%(同) 9)13年9月末 :0.00-0.05%(同) 10)13年12月末 :0.00-0.05%(同) 11)14年3月末 :0.00-0.05%(同)

12)わが国の今年度の実質成長率は1.0%台後半のプラス、13年度は

1.0%前後のプラスにとどまると予想している。目先、公共投資など復 興需要とエコカー補助金以外に明確なプラス要因は見当たらない。内 需では目先、①電力供給の不透明感②夏のボーナスの低迷-などが足 かせになる。また、年度後半は前掲政策効果の反動があろう。加えて、 海外景気も後述のように期待できない。

米国のバランスシート調整は依然続いており、雇用回復も緩慢だ。 今年の米国実質GDPの伸びは2.0%以下と予想する。一方、ユーロ 圏の今年の実質成長率は1.0%程度のマイナスを見込んでいる。ギリ シャの再選挙の結果次第では欧州の財政・債務問題が一段と深刻化し、 世界経済全体に悪影響を及ぼす可能性が否定できない。もっともギリ シャのユーロ離脱は回避されると考えている。消費者物価指数の1% は瞬間的にはともかく、定着する時期を想定することは現状、難しい。

13)①今会合での追加緩和強化はなし。その際、市場は若干、円高・ 株安で反応。次の一手のタイミングは「展望リポート」の中間レビュ ーが行われる7月が本命と見る。しかし、為替や株価、海外の情勢次 第では、6月に前倒しの公算がある。手段は「資産買入れ等基金にお ける長国買い入れ増額」がメインと見る。もっとも、それでは市場が 納得しない可能性が高い。

したがって、(イ)「基金」で買入れる長国の年限再長期化(ロ)超 過準備の付利引き下げ(ハ)政策金利の上限引き下げ(ニ)量的緩和 の再導入(ホ)長国買い入れ(いわゆる「輪番オペ」)の増額なども視 野に入る。②早ければ7月。5年までの延長。5年まで延長すれば5 年国債利回りが0.20%を割り込むと想定され、円安・株高に一定の効 果があろう。しかし、直接的なマクロ経済効果は軽微。一方、副作用 は現時点では乏しいと考える。③過度の緩和期待へのけん制という部 分はあるかもしれない。

●クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :想定せず(同) 3)利上げ時期 :2014年度後半以降(2015年秋以降) 4)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年3月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国内需は堅調な状態を維持しているが、欧州経済の不調、中国 景気の足踏みの下で生産活動が早晩ピークアウトし、成長率は夏場に 鈍化へ。日本経済は外需の足踏みに夏場の電力不足、株価軟化という 悪材料が重なり、4-6月期、7―9月期の成長には急ブレーキがか かる可能性。

欧州の混乱が深刻化し、世界的な株価暴落などが発生した場合、 世界的な規模で信用収縮と資金需要減退が起こり、世界経済が失速す るリスクも。日本のCPIインフレ率に関しては、12年度は一進一退 で明確なトレンドが出ないとみられるが、世界景気が後退局面に突入 しない限り、13年にはプラス幅を拡大へ。

経済政策論においては、引き続き、デフレからの脱却が優先課題 になっているが、輸入浸透度の趨勢的な上昇に反映されている国内供 給能力の低下傾向は、デフレ長期化論の妥当性に疑問を投げかけてい る。非耐久消費財、民間住宅投資、住宅以外の構造・建築物、公共投 資のデフレータは02-03年ごろを底に上昇基調にある。耐久消費財消 費を除いた内需のデフレータを計算すると、1994年以降の下落率は 5%程度であり、しかも04年以降はほぼ横ばいで推移している。

昨年末以降、コアコアCPIの前年比に下げ止まりの兆しがみら れるが、①品目別には家電製品、家庭用品、被服履物についてその傾 向が顕著である②同様の傾向は家計調査の「品目別単価」の前年比か らも確認できる③こうした動きの背後では民生電器、通信機器、プラ スチック製品、繊維品などの輸入価格の上昇・下げ止まりがみられる ④これら輸入品目の価格上昇・下げ止まりには中国を中心としたアジ ア諸国の賃金上昇と堅調な為替相場が影響している可能性がある。

中期循環的、構造的のいずれの側面からみても、向こう2、3年 は単位賃金(時給)が上昇しやすい状況にあり、コストプッシュ型の インフレ圧力は高まりやすいとみられる。弊社の13年度のコアコアC PI前年比見通しは現状-0.2%だが、これが小幅のプラスとなるリス クはそれなりにあり、この場合は13年度中にコアCPI前年比が+ 1%近傍に達する可能性も否定できない。したがって、日銀見通しに 大きな違和感はない。

13)①今会合で追加緩和の可能性は低い。追加緩和がなくても、円高・ 株安がさらに進行する可能性は低い。何らかの追加措置が採られるタ イミングとしては7月が有力か。中間評価でCPI見通しを下方修正 することが条件。ただ、具体的な措置は資産買い入れ等基金の増額で はなく、購入した長期国債などのロールオーバーの明確な表明など、 時間軸政策か。

②資産買い入れ等基金で買入対象とする長期国債の年限をさらに 延長する可能性は低い。③日銀によるコアCPI前年比は「1%に遠 からず達する可能性が高い」との表明は、「1%インフレが視野に入っ たので、金融政策運営は当面現状維持とする」というメッセージに他 ならない。

●信州大学の真壁昭夫経済学部教授 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :当面なし、世界的混乱あれば引き下げの可能性も 3)利上げ時期 :2015年初以降(同) 4)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年3月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国経済は引き続き緩やかに回復しているが、暖冬効果のはく落 もあり労働市場の回復には減速感が見られる。ストック面での調整は まだ完了しておらず、バランスシート調整は今後も続こう。ギリシャ の政治混迷、デフォルト懸念を受けて、世界的に投資家のリスク許容 度の低下が続く可能性が高まっている。そのため短期的に企業、家計 ともに支出を大きく増加させることは考えにくい。FRBの時間軸効 果もあり、インフレリスクが大きく上昇することはないだろう。

欧州はギリシャ等の信用不安問題が最大のリスク要因だ。ギリシ ャに関してはすでに支援開始から約2年たっているが、今のところほ とんど財政再建への道筋が見えてこない。経済状況は悪化している。 今後、再選挙が実施させる見込みだが、その結果によっては再度、政 治・経済情勢が触れることが懸念される。

既にECB関係者から「技術的にギリシャのユーロ離脱は可能」 とのコメントも出ている。仮にギリシャがユーロ離脱した場合、その 次の離脱候補が取りざたされることになろう。ギリシャ問題は中期的 に大きなマグニチュードをはらんでいる。

わが国の経済は復興需要に対する期待もあり緩やかに回復してい る。国内要因に関しては当面、大きな懸念材料は見当たらない。リス ク要因は海外経済だ。特に欧州の債務問題の深刻化、新興国の成長鈍 化による輸出鈍化が回復の重しになるリスクは無視できない。欧州へ の懸念が高まる局面では円高の進行も考えられるだけに、海外要因に よる景気回復への影響には注意は必要だ。足元の経済状況を見る限り、 短期間で物価上昇圧力が高まる可能性は低い。

現在の経済状況を考えると、日銀が展望リポートで示した物価見 通しに沿った展開になるかは難しいところだ。欧州経済の一段の落ち 込みなどのリスク要因が現実味を帯びてくると、世界的に景気は減速 する可能性が高い。その場合は物価上昇の速度はかなり緩慢になるは ずだ。

13)①今回の会合では追加緩和の実施はないとみる。日銀執行部とし ても、前回実施した追加緩和措置の検証を行いたいインセンティブは 強いだろう。金融市場でも今回の追加緩和はないとの見方が多いと考 えられ、市場へのインパクトはほとんどないだろう。

今後に関しては、欧州情勢が追加緩和実施の鍵を握っている。仮 にギリシャ国内の資金繰り悪化やデフォルト懸念が上昇し金融市場が 混乱するようだと追加緩和策実施の可能性は高まる。その際の手段と しては、国債買い取り枠の拡大や買い取り対象の年限を5年以下まで 拡大することが考えられる。

②さらなる延長がいつ行われるのか、現時点で予測することは難 しい。少なくとも日銀はできるだけ追加緩和を温存したいインセンテ ィブを持っている。既に超緩和的な金融政策の下、追加緩和が経済活 動に貢献できる範囲は極めて限定的だ。また、財政ファイナンスと金 融政策との境目がますますあいまいになってきていることもあり、さ らなる緩和には慎重な判断がなされるのではないか。

③日銀がコアCPIの達成に言及したことについて、あらためて 「中長期的な物価安定の目途」への強いコミットの姿勢を示したと考 えられる。この言及は直接さらなる緩和措置を想定した文言だとは考 えづらい。

●野村証券の松沢中チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持、円急伸なら介入に合わせ追加緩和も 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年7-9月にレンジ停止(同) 4)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年3月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国景気指標は底堅く、日本でも復興需要が顕在化してきている。 中国は確かに弱めだが、欧州圏の弱さの波及(輸出の減速)であり、 内製の弱さではない。つまり実体経済の弱さは、欧州圏に集中してお り、それ自体は市場がこれまで想定してきた範囲の中で弱めといった 程度である。

だが5月初のギリシャの選挙後、財政再建路線放棄でハードデフ ォルトに陥るだけでなく、ユーロ離脱までシナリオが膨らんできてい る。実際にこのシナリオになれば昨夏どころか、リーマンショックを も超えるショックになるだろうし、そうでなくとも何らかの結論・対 応策が出るまで時間をかなり要しそうな気配だ。今のところドル、ユ ーロともに短期金融市場に信用ひっ迫は見られないが、ユーロドル金 先がその懸念を反映して動いている。直接的に資金繰りに窮していな くとも、投資家や企業家の心理はかなり冷やされていよう。

13)①76円ドルを試すような展開になった場合、財務省の為替介入と ともに追加緩和。基金増額は5兆円。0.5~1.0兆円の指数連動型上場 投資信託(ETF)購入を含む。国債買い入れ増分はほとんど来年実 施のもの。加えて10兆円程度、財務省の為替介入に際し必要なTBの 引き受け枠を設定。市場はまだ今会合での緩和を織り込んでいないの で、緩和見送り自体のネガティブ・サプライズは小さいと思う。景況 面からは上記以上に政策が膨らむとは思わない。ギリシャ情勢次第で 基金増額分の拡大。

②4月の会合で、年限延長は国債市場だけに効いてしまい、銀行 の収益を痛める副作用の方が強いとの認識が強まり、さらなる延長に は慎重。来年分の買い入れを増やすことで対応。③10月展望リポート の14年度見通しでは1%の見通しが入るだろう。リスクオフ環境が和 らいでいれば、その時点で緩和はいったん打ち止め。

●シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年10-12月(同) 4)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年3月末 :0.00%-0.10%(同)

12)前回会合以降の経済・金融動向としては、①ギリシャ情勢に絡ん だ国際金融市場の緊張の高まり、②中国景気の一段の減速-の2点が 重要であろう。これらは定性的には日本の輸出の回復力を当面抑制す るとみられ、輸出が持続的な増加に転じるのは7-9月期以降となろ う。ただ、震災関連の復興需要と個人消費の堅調さが下支え要因とな り、国内景気は当面、年率1.5-2%程度の成長ペースを維持すると 予想される。

一方、復興需要の効果がピークアウトし、エコカー補助金の予算 払底が見込まれる年度下期に輸出が横ばい圏にとどまれば、景気は足 踏み局面を迎える可能性もある。前回会合以降、景気の下振れリスク が高まったと評価される。

日銀のインフレ見通しの実現可能性は低いように思える。第1に、 インフレの需給ギャップ縮小に対する感応度が低下している。1983- 2011年の期間について、食品・エネルギーを除くCPI前年比の需給 ギャップに対する感応度を計算すると0.41となるが、00年以降の期 間に限ると、感応度は0.12まで低下する。単位労働コストの傾向的な 下落がその一因と考えられる。

第2に、現在コアCPI前年比を押し上げているテレビ、エアコ ンの寄与(約0.4%ポイント)が13年に入るとはく落する。第3に、 このところ原油価格が大きく下落している。日銀は中国からの消費財 輸入価格の上昇、日本企業の販売戦略の見直しといった要因を重視し ているようだが、インフレが高まるシナリオを描くため、ミクロ情報 に依拠しすぎている印象が否めない。

13)①今会合では現状維持を予想する。追加緩和に対する期待は高く ないため、金融市場の反応は限定的なものにとどまろう。追加緩和に ついては、欧州情勢の緊張の高まりを受けて、FRBが6月19、20 日のFOMC会合で追加措置を打ち出す可能性があり、その場合、日 銀に対する緩和圧力が強まることも想定される。資産買い入れ等基金 の増額(国債年限の延長はなし)が具体的な選択肢となろう。

②現執行部体制の下では国債年限の延長は行われないと想定して いる。③現在の国内外の経済・金融情勢(そして見通し)を踏まえれ ば、日銀のインフレ見通しに対するリスクは下振れ方向とみるのが自 然であろう。だとすれば、「1%に遠からず達する可能性が高い」とい う点よりも、「見通しを下回る方向にリスクが傾いている」という点を、 市場とのコミュニケーション上、強調すべきではないか。「1%に遠か らず達する可能性が高い」という点を強調することで、追加緩和に後 ろ向きと勘ぐられても仕方がないだろう。

●バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年以降(同) 4)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 7)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年9月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年12月末 :0.00%-0.10%(同) 11)14年3月末 :0.00%-0.10%(同)

12)中国向け輸出の不調が続く中、生産関連の指標に一部弱いものも 見られるものの、国内景気のモメンタムには基本的に大きな変化はな い。雇用統計の下振れで懸念された米国の減速も、家計、住宅関連の データが底堅く推移している点などから判断するかぎり、それほど心 配される状況ではない。むしろ、ガソリン価格が落ち着いてきている ことから、夏場にかけては若干上振れ感も出てくる状況ではないか。

日銀の物価見通しは01-06年の量的緩和期を見ても、金融緩和の 出口に向けてゆく時期には若干上方バイアスがかかる傾向があった。 実績として出てきたCPIに対して日銀見通しには0.2-0.3%程度 の上方バイアスがあった。しかし、そういった特殊な部分を除けば、 日銀のCPI予測の精度はかなり高く、むしろ民間エコノミストの予 想は常に日銀よりデフレバイアスを持っており、予測の精度では日銀 に軍配が上がる。

足元においても、政治圧力の強まりを反映する形で、日銀の強め のCPI予測には上方バイアスが含まれている可能性はあるものの、 大きな方向性としては間違っていないのではないか。日銀としても、 実際に収集されている物価データから判断される物価の基調を完全に 捻じ曲げた形で予測を打ち出して、もしはずれた場合の政治的なリス クも、当然認識しているはずだ。

13)①今回は追加緩和は予想されず、市場も特に期待は持っていない。 FRBが夏までにQE3を決定するような米景気指標が出てきた場合、 あるいは欧州情勢が急変して円が急上昇するような状況となれば、次 回にでも追加緩和の可能性はあるが、あくまでもそれらの前提次第。 政策手段としては、国債買い入れ額の増額と国債買い入れ年限の長期 化となろう。

②タイミングについては①で述べた通り。延長は1年毎に延ばし てゆく形になるだろう。副作用は当面においては特に予想されないが、 市場が過剰な期待をもつ結果、イールドカーブのブルフラット化が進 み過ぎてしまった後の反動が大きくなることが副作用と言えるだろう。 日銀が国債をいくら買い進んでも、一定以上の年限に関しては、環境 変化次第ではコントロールは不可能。

③政治向けに説明を求められていることに対する回答である可能 性も否定できないが、実際にそういった要請があるのかどうかは分か らない。ただ、何か大きなショックが加わらなければ、13年度までの 予測の延長線上でそう遠くない時期に1%に到達するという予測自体 は非合理的なものではない。

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