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【コラム】JPモルガンの巨額損失は歴史の繰り返しか-ワイル

歴史はそのまま繰り返しはしない が、韻を踏む-。米銀JPモルガン・チェースによる約20億ドル (約1600億円)のトレーディング損失公表は、米作家マーク・トウェー ンの言葉とされるこの有名な格言に当てはまる問題だ。

JPモルガンは先週、チーフ・インベストメント・オフィス (CIO)部門で約20億ドルの損失を投資家に警告した際、同部門での 1日に被る可能性のある最大損失額「バリュー・アット・リスク (VAR)」の測定で欠陥のあるモデルを使っていたことを明らかにし た。少なくとも私はこの話を聞いて、10年以上前の米エネルギー取引会 社エンロンであった同様の話を思い出した。

JPモルガンは4月13日の1-3月(第1四半期)決算発表資料 で、CIO部門の同四半期の平均VARが6700万ドルだったと説明して いたのだが、先週の当局への提出書類では、この数字を1億2900万ドル に修正した。

JPモルガンが説明したように、このVARの数値は1営業日に 「通常の市場環境で相場が不利な方向に動いた場合に生じ得ると想定さ れる最大の損失額」の試算で、信頼水準は95%。ジェイミー・ダイモン 最高経営責任者(CEO)は、前四半期に導入した新たなVARモデル が「不適切」だったことに後で気付いたと述べ、その後は数年間使用し ていた古いモデルに戻したことを明らかにした。古いモデルはより大き な数値を示していた。

1990年代にJPモルガンが草分けとなって開発したVARのリスク 計測手法には多数の欠点があり、批判する人も多い。あなたの乗る旅客 機が墜落しないと言える自信は95%だと航空会社が言ったなら、搭乗し たいと考える人はいないという批判もある。

少しも信頼できない

この問題で思い出すのはエンロンが2000年に開示した年次報告書 だ。エンロンはこの年にまだ株式市場の人気銘柄だった。エンロンは当 時、株式投資のVARを5900万ドルと報告していたが、その後これが少 しも信頼できない数字であることが判明。同社は01年に連邦破産法の適 用を申請した。ここで注目したいのが、同社の情報開示文書の終わり近 くに参照されたJPモルガンの名前と商標だ。その部分は以下のように 記されている。

エンロンは価格リスク管理行動などを含むほぼ全ての金融手法につ いて事業全体でVAR分析を実施している。VARはエンロンの投資商 品の適正価値に影響を及ぼし得る多数の変数を包含する。それには商品 価格や金利、外国為替レート、株価、関連するボラティリティ(変動 性)なども含まれる。エンロンは商品や金利、外国為替のエクスポージ ャーのVAR試算にモンテカルロ法によるシミュレーションに基づくモ デルを利用している。上記の株式エクスポージャーのVARはJPモル ガンのリスクメトリックス(TM)のアプローチに基づく。両方の VARの手法は保有期間を1営業日とし、信頼水準を95%としている。

長い年月を経た今でも、たった一つの使いやすい数字を用いてリス クを表示する芸当がまかり通っている。

(ジョナサン・ワイル)

(ジョナサン・ワイル氏は、ブルームバーグ・ビューのコラムニス トです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

原題:How JPMorgan Is Like Enron(抜粋)

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