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「ハッカー」に戻ろう-フェイスブックCEOが秘める決意

マーク・ザッカーバーグ氏は2006 年、22歳でコンピュータープログラマーの道をあきらめた。成長著しい 自身の会社の経営に専念するためだった。

29歳でアメリカンフットボール選手を引退したジム・ブラウンや40 代で小説を書くのをやめた英国のE・M・フォースターよろしく、フェ イスブックというソーシャル・ネットワーク・サービスをプログラムし たこの天才は、自身の並外れた才能を直接生かす道から遠ざかってい た。あるいはそのように見えた。その数年後、ザッカーバーグ氏は自ら に厳しい規律を課した。2009年には、毎日ネクタイを締めて出社するこ と。10年は中国語を習うこと、11年は肉を食べるなら自分で殺した動物 の肉に限るというものだった。ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌 (5月21日号)が伝えた。

今年に入ると、ごく少数の友人や同僚しか知らない新たな課題を自 分に課した。間もなくシリコンバレーから新たに誕生する上場会社へど んな影響があるかは分からない。それは自身の原点に立ち返って、毎日 コンピューターのプログラミングに時間を費やすという課題だ。

ザッカーバーグ氏の神髄は常に「ハッキング」にあった。フェイス ブックの新規株式公開(IPO)目論見書にも繰り返し、「ハッカーの ような」社風という表現が出てくる。サンフランシスコ湾に近い同社の 新社屋には「ハッカー・カンパニー」と読める大きな看板が掲げられて いる。こうしたスローガンは何も、フェイスブックがハッカー集団「ア ノニマス」と組んだり、北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)のコン ピューターに不正侵入することを意味しているのではない。型破りな方 法で目標を達成することをそう呼んでいるのだ。

ザッカーバーグ流

ザッカーバーグ氏らは、IPOのロードショー(機関投資家向け説 明会)にフード付きのパーカで登場することよりもっと大胆なリスクの 高い行動に出た。フェイスブックの最高経営責任者(CEO)として同 氏は、ベテランにCEO職を譲るどころか、社内規約を改定して議決権 の過半数支配を確実にし、度重なる買収提案も拒絶してきた。こうした ハッカー流のやり方はシリコンバレーの会社経営に変化をもたらした。

ザッカーバーグ流の「ハッキング」はすべて、包括的なビジョンに 基づいている。つまり、テクノロジーとオンライン上の信頼性が人々を 結び付けるというビジョンだ。相手を見つけるのが簡単であれば、それ だけ人々はオンライン上で時間を過ごし、子供の写真や気分、何を読ん で誰とデートしたかなどを実際に知っている人たちと共有できるという わけだ。プライバシー設定を気にしないならば、全世界と共有すること もあり得る。

スティーブ・ジョブズのように

米アップルのスティーブ・ジョブズ氏(故人)がシンプルかつフォ ルムの美しい機器の開発を説き続け、米マイクロソフトのビル・ゲイツ 氏が生産性を高めるソフトウエアの力を強調したように、ザッカーバー グ氏も、懐疑的な姿勢を時折見せる人々に自身の主張をぶつけてきた。 同氏をはじめフェイスブック幹部らは、IPO前の自粛期間を理由に取 材には応じない。

シリコンバレーに長く投資し、フェイスブックにも出資するベンチ ャーキャピタリストのロジャー・マクナミー氏は「ザッカーバーグ氏は 『選ばれし者』だと思う」と語る。「ビル・ゲイツやスティーブ・ジョ ブズのように、誰もが支持する流れを作り出した」と説明した。

フェイスブックが株式を上場する18日、同社の企業価値は1000億ド ル(約8兆円)を超える可能性がある。これは同社が何年も前にバイア コムや米ヤフーから受けた買収提案額の何倍にもなる。ウォルト・ディ ズニーやマクドナルドの時価総額も上回る。

才能溢れるエンジニア軍団

IPO後のフェイスブックにはさまざまな課題が待ち受けるが、中 でもザッカーバーグ氏にとって最大の難題は才能あるエンジニアを同社 に引き留めることかもしれない。技術的なやりがいを求めて同社にはエ ンジニアが押し寄せてきたものだが、最近は情熱が冷め、同社を去る者 が出てきたためだ。ハーバード時代のルームメイトで共同創業者のダス ティン・モスコビッツ氏がその一人。同氏は自身のソフトウエア会社を 設立した。

2008年に同様にフェイスブックを退社したジェフ・ハマーバッカー 氏も「ずいぶんたくさんの難しい問題を解決したものだった」と同社で 働いた時期を振り返った上で、「5年たてばどうなるかは何となく分か っていた。それは新しいことではなくて、業務の回転と効率性が中心に なっていくということだった」と述べた。

自尊心とチャレンジ精神に溢れる優秀な技術者らは、いったん IPOが済んで考えられないほどの富を手にすれば、もはやフェイスブ ックを働きがいのある会社とは思わなくなるかもしれない。

だからこそ、ザッカーバーグ氏にはハッカー的な行動が必要にな る。それこそが、毎日コンピュータープログラムの世界に再び身を置く 理由の一つだ。フェイスブックのユーザーに繰り返しサイトを利用して もらい、携帯端末の分野やプライバシーの問題、グーグルとの競争など あらゆる課題を解決する方法を編み出し続けるためには、フェイスブッ クの核である才能ある人材にやる気を起こさせねばならない。ザッカー バーグ氏でさえも、一人で未来をプログラムできるわけではない。

原題:Zuckerberg Returns to Hacking Roots on Eve of Facebook IPO: Tech(抜粋)

--取材協力:Adam Satariano、Dina Bass.

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