ギリシャのユーロ離脱に伴う破壊的影響の可能性直視せよ-社説

ギリシャのユーロ圏離脱は、欧州連 合(EU)にとってここ数十年で、経済・政治の両面で最も破壊的な出 来事となる可能性がある。残念ながら、欧州諸国はそうした事態に備え なければならない地点に達している。

ギリシャは近々、望むと望まないとにかかわらず、旧通貨ドラクマ の復活に追い込まれかねない状況にある。ユーロ圏財務相会合(ユーロ グループ)のユンケル議長(ルクセンブルク首相兼国庫相)が示唆した ように、欧州指導者らはギリシャに対し援助の前提となる財政赤字削減 目標を満たすために猶予期間を与える可能性はあるが、緊縮策を拒否す る政権には緊急の資金支援は行わないとの立場をとる。

欧州からの支援がなければ、最終的に誰が率いることになろうとギ リシャ政府はジレンマに陥る。現在の緊縮策を上回る規模の歳出削減を 行うか、あるいはデフォルト(債務不履行)となり、債務の返済に向け て新たな通貨を印刷するかだ。

ドラクマの復活は痛みを伴うものとなろう。復活した途端、ドラク マはユーロに対して極めて低いレートでの取引となり、ギリシャ政府が 債務返済に向けて紙幣を増刷すれば一段の下落が見込まれる。預金者は 価値の低下したドラクマを受け取るのがせいぜいで、企業は融資不足に 陥るだろう。

手ごわい挑戦

一方、他の欧州諸国はギリシャ離脱の副作用の封じ込めという手ご わい挑戦にさらされることになるとみられる。そのために、ブルームバ ーグ・ビューのコラムニスト、クライブ・クルック氏が論じるように、 他の欧州諸国はユーロ圏を完全なままに維持しさらに発展させるよう金 融改革と緊急対策を講じる用意が必要だ。だがその場合でも、ギリシャ の離脱は予測できない結果をもたらす可能性がある。

第一に、ギリシャに提供した資金の目先の損失を吸収する必要が生 じるだろう。ギリシャの対外債務は約4000億ユーロ(約41兆円)で、同 国政府や銀行、企業が返済できるのは恐らくその一部のみか、ドラクマ 建てということになろう。欧州の納税者たちが損失の大半を担うことに なる。欧州中央銀行(ECB)や各国の中央銀行、EUの融資プログラ ムを通じ、納税者のギリシャ向けエクスポージャーは3000億ユーロに達 する。

第二に、欧州当局者には銀行の取り付け騒動を抑える戦略が必要 だ。イタリアとポルトガル、スペイン、さらに場合によってはフランス の預金者たちも、ギリシャ市民が預金引き揚げに走る映像を目にすれ ば、自国の銀行からユーロ引き出しを急ぐとみられる。バンクホリデー や預金引き出し禁止は一時しのぎにすぎないだろう。銀行システムの事 実上の崩壊を回避するため、欧州指導者らはユーロ圏全域の銀行預金を 保証する必要が生じかねない。その場合、ドイツをはじめとする主要国 は、イタリアとスペインの預金3兆ユーロ余りを保証するという重荷を 背負うことになる。

次のギリシャ探し

第三に欧州諸国は、ポルトガルやスペインなどがギリシャに続くの ではないかとの市場の恐れを鎮める必要がある。そうした懸念を背景 に、各国政府の資金調達コストが容認できない水準にまで上昇すれば、 投資家が描いたシナリオ通りの事態に陥る可能性がある。その傾向は既 にスペインの10年物国債の利回りに見られる。同10年債利回りは15日 に6.3%と、3月初めの5%未満の水準から上昇。利回り抑制に向け、 ECBは国債購入を一段と強化するか、銀行に資金を供給し購入を促す かもしれない。その結果、ECBは最終的に危機に陥った国の全ての債 務について保有や資金供給をするという状況になりかねない。

あるいは、ECBが圧倒的な力誇示し、困難に陥っている全ての ユーロ圏諸国政府の債務を予見しうる将来に返済することを保証して見 せて、市場の信頼取り戻しを図る方法がある。ブルームバーグ・ビュー はこの方法を支持しているが、しかしそうした行動に出た場合でも、ギ リシャ離脱後では望まれる修復効果を持たない可能性もある。

転換点

経済面だけでなく政治的にも犠牲を払うことになるだろう。1951年 の6カ国による欧州石炭鉄鋼共同体からスタートし拡大と統合を進めて きた欧州のプロジェクトにとって、ギリシャが脱退し、特にそれに続く 国々が出た場合には一つの転換点となろう。例を挙げると、ギリシャが ユーロ圏を離脱できたとして、国境での出入国審査がなくなるシェンゲ ン協定はどうなるだろうか。EUへの不法移民の大半はギリシャとトル コ間の国境経由だ。他にもどんな問題が生じるか予想は困難だ。

予測不可能な結果が生じかねないとの前提に立ち、ギリシャとEU にとって悲劇を最小にとどめる方法は、ユンケル議長が示唆したように 同国に改革プログラムの推進を約束する政府が誕生するまで十分に時間 的猶予を与えることだろう。こうしたシナリオを可能にするため、欧州 の指導者らは自滅的な緊縮策の枠を超えた視野を持ち、ギリシャをはじ め困難に見舞われている国々の成長を支える方策を直ちにとるべきだ。 それができなければ、欧州は最悪の事態に備えるしか道がない。

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