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【FRBウオッチ】NY株「世紀の三尊天井」、熱狂の終わり

ニューヨーク株式市場は百年に一度 の「三尊天井」形成に向け最終局面に入ってきたようだ。当欄で前回リ ポートしたバーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長の大規模金 融緩和策が主導する「QE(量的緩和)バブル」は20年以上さかのぼっ て見ると、3番目の巨大バブルに相当することがわかる。

3番目のバブルは今なお膨張過程にあるようにも見えるが、ピーク アウトは時間の問題と言えそうだ。歴史は細部が異なっても、同じパタ ーンを繰り返すからである。国民経済を最も良く反映する消費者信頼感 指数も2000年7月をピークに、「アメリカの世紀」がピークアウトした ことを明確に映し出している。

株価が実体経済から独立してバブル状態を続けることはできない。 これから実体経済にタイムラグを伴って下降線に転じると、3つの山か らなるヘッド・アンド・ショルダーズ、日本の相場用語では三尊天井が 完成する。

最終局面に接近中の現代の三尊天井のタイムスパンをさらに広げ て、前世紀初めまでさかのぼると、1930年代の大恐慌に至る20年代の巨 大バブルに匹敵する迫力で迫ってくる。しかも、29年をピークとする20 年代の株価高騰は、米経済の若さを象徴するように一本調子で力強く高 騰した後、一直線で下降トレンドを描いている。

内実は大恐慌よりも深刻

米国はこの株価暴落で大恐慌に突入するが、それを克服したとされ るフランクリン・D・ルーズベルト大統領が就任した1933年3月に、米 鉱工業生産指数は前年同月比で13%低下していたが、4月には21%上 昇、7月には62%上昇と急角度で反転する。

同大統領がニューディール政策の核となる産業復興法案に署名した のは同年5月のことだから、この回復はニューディール政策が直接関与 したわけではない。米経済は大恐慌を克服する過程で、その後世界の覇 権国へと躍進する力を蓄えていたのである。これに対して、20世紀か ら21世紀にまたがり、最終局面に入りつつある「世紀の三尊天井」は、 その覇権国が衰亡へと向かう転換点を画している。

三尊天井の初めの山はクリントン政権時代の1990年代に膨張 し、2000年にピークアウトした。同大統領が退任した2001年1月以降、 株価は下げ足を速め、S&P500種株価指数で見て2000年3月の高値か ら02年10月のボトムに向けて約50%下げた。

第2の山は最も高く、ブッシュ大統領時代に形成され、2007年10月 にピークアウト。翌年9月のリーマン・ショックを伴いながら、S& P500種は57%暴落した。

ブッシュ大統領は翌2009年1月に失意のうちに退任。この二人の大 統領が形成した二つのバブルは、大統領に次いで二番目に大きな権力を 持つと言われるFRB議長を務めていたグリーンスパン氏が、その形成 に深くかかわっている。

危険な綱渡り

グリーンスパンFRB議長は初めのバブル膨張が加速し始めた1996 年12月に「根拠なき熱狂だろうか」と問いかけ、バブル形成に警鐘を鳴 らしていた。しかし、その3年後の99年6月になると、株高について 「100年に一度の技術革新」による生産性の向上が背景にあるとして、 これを正当化するようになる。その上で、「適正な資産価格水準を判断 することはできないので、バブルは破裂したあとに、金融緩和で対処す ればよい」という政策を確立する。そのおよそ1年後にIT(情報技 術)株式バブルは破裂する。

住宅・金融バブルについても、グリーンスパン議長は2005年7月に 「小さな泡粒であるフロスにすぎず、バブルではない」と言い切る。し かし、このとき住宅・金融バブルはピークに向けて、最終局面に入って いた。

クリントン、ブッシュ両大統領の後を継いだオバマ大統領は、グリ ーンスパン議長の後任であるバーナンキ議長との二人三脚で、三番目の 山であるQEバブルを形成している。

バブル膨張期間が短縮

バーナンキ議長も「バブルは認識できないので、破裂した後に大規 模な金融緩和で対処すればよい」という前議長の政策を引き継いでい る。これはかなり危険な綱渡りと言える。しかも、この危険な綱渡り は、そろそろ終わりが見えてきた。

1987年10月のブラックマンデーを起点として考えると、クリントン 政権時代の一つ目のバブルは2000年3月のピークまで約13年。そこから ブッシュ時代のバブルのピークまでは約7年と短くなってきた。前回バ ブルのピーク形成から既に5年目を迎えた現在、今回のバブルは最終局 面に差し掛かっている。

クリントン、ブッシュ時代のバブルはいずれも金融が大きな役割を 果たしたものの、実体経済にもバブル特有の展開があった。クリントン 時代にはIT技術がバブルの主役を担った。ブッシュ時代には住宅が金 融と一体化して中心となり、国内総生産(GDP)の7割以上を占める 個人消費が膨らんでいた。

FRBバブル

一方、今回はFRBの金融が主導。実体経済では製造業が盛り返し たといわれるものの往年の力強さはない。さらに重要なことは家計がバ ランスシート修復に加えて、賃金の抑制で消費の勢いを失っていること だ。民間金融機関も先のバブル崩壊の影響が大きく、力をそがれてい る。

この状況で株価がバブルを呈することができたのは、FRBの大規 模緩和策があったからに他ならない。FRBは2009年3月に量的緩和第 1弾(QE1)、10年11月に量的緩和第2弾(QE2)を実施した 後、11年9月には短期国債を売って、長期国債を購入するオペレーショ ンツイスト(ツイストオペ)と超低金利政策の時間軸明示という非伝統 的な緩和策を導入した。これら3つの異例な緩和策はいずれも株価がボ トム圏を低迷しているときに実行されており、株価はFRBの政策を支 えに水準を切り上げてきた格好だ。

FRBは基軸通貨を発行する世界の中央銀行だけに、バブル生成の 力も強力で、これを背景にニューヨーク株式市場は日欧の株価低迷を尻 目に大きく戻してきた。ただし、実体経済がついてきていないだけに、 バブルの生成期間は、クリントン時代はもとより、ブッシュ時代の第2 バブルよりも短いものになるだろう。

オバマ大統領再選を左右

ことし11月に再選を控えるオバマ大統領としては、現在生成中の3 つめのバブルの崩壊をできるだけ先に延ばしたいところだろう。オバマ 大統領が師と仰ぐフランクリン・D・ルーズベルト大統領は大恐慌を克 服したとされるが、1936年の再選にかけて株式市場はバブル化してい た。このときは、最終局面で株価が一段高となり、同大統領の再選を支 援し、翌37年1月にピークアウトしている。オバマ大統領も11月の選挙 を控え、株価ピークアウトのタイミングは2期目当選の成否を左右しか ねない。

第3のバブル崩壊の兆候は、過去のバブルに手を貸したと批判され ているグリーンスパン氏が再び登場して、体現してくれた。同氏は今月 初めにブルームバーグ主催のイベントに出演。現在のニューヨーク株式 市場の株価水準について、「株価収益率は極めて低く、株価は非常に割 安だ」と断言したのである。同氏はこの発言が「三度目の正直」とな り、後世に名声を残したいと考えているのかもしれない。

二度あることは三度ある

しかし、グリーンスパン氏が在任中に強気に転じた時には、2度の 大型バブルとも、最終段階に到達していた。二度あることは三度ある、 と警戒しておいたほうが良さそうだ。

グリーンスパン氏が最初に気付き、その後、自ら飲み込まれていっ た「根拠なき熱狂」も、「世紀の三尊天井」の形成とともに、そろそろ 最終幕に入ろうとしている。

(FRBウオッチの内容は記者個人の見解です)

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