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前田日銀調統局長「物価の潮目変わる兆し」、13年度末以降1%近づく

日本銀行の前田栄治調査統計局長は 国内の物価情勢に「潮目が変わる兆しも出ている」と述べ、実体経済に 大きな変調がない限り消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI) 上昇率は「2013年度末以降1%に近づいていく」との見方を示した。14 日のブルームバーグ・ニュースとのインタビューで語った。

日銀は4月27日、13年度までの見通しを示した「経済・物価情勢の 展望(展望リポート)」を公表。コアCPIの前年比上昇率について、 見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、日銀が当面の物価 安定のめどとする「1%に遠からず達する可能性が高い」と表明した。 前田局長の発言は、コアCPI上昇率が13年度末にも1%に近づいてい く可能性があることを示唆したものだ。

局長は過去10数年、流通部門を中心とした規制緩和や、安価な中国 製品などを利用したビジネスモデルの拡大、既存分野での価格競争が物 価押し下げ要因として作用したが、「こうしたマイナスの価格ショック は少しずつ弱まっているのではないか」と言明。需給バランス改善と相 まり、物価は緩やかに上昇していくとの見方に自信を示した。

コアCPI前年比は09年後半のマイナス2%台半ばを底にして緩や かに改善しており、足元はおおむね0%で推移している。局長は「上下 に大きく変動しているものを除いた刈り込み平均で見てもほぼ0%で、 消費者物価は基調的に改善してきている」と指摘。「マクロの需給バラ ンスが09年初を底にして改善し、そのこと自体が数四半期のラグ(時間 差)を伴って物価に反映されてきている」と語る。

民間はデフレ脱却に懐疑的

同局長によると、足元の需給バランスは国内総生産(GDP)ベー スでマイナス2、3%。今後2年間で3%改善すれば、13年度末にマイ ナスの需給ギャップが解消する。過去30年の需給バランスと消費者物価 を見ると、前者が1%改善すると時間差を伴って後者は0.3%程度改善 するという緩やかな関係があるため、「需給バランスが3%改善する と、物価が1%近く改善する可能性がある」という。

民間調査機関では、例えばESPフォーキャスト調査(4月12日) は12年度がマイナス0.01%、13年度がプラス0.13%と、日銀の見通しと はかい離している。第一生命経済研究所の新家義貴主任エコノミストは 日銀の見通しについて「先行き原油価格が横ばいで推移すると想定した 場合、12、13年度とも予想達成は困難」と指摘する。

前田局長は「1990年代以降、需給バランスが改善しても物価が上昇 しない局面も何度かあった」と認める。しかし、同局長が先に挙げた3 つの構造的な物価押し下げ要因、すなわち国内の規制緩和、グローバル 化に伴う安価な商品の流入、既存分野での価格競争のうち、中国からの 輸入品については「上がりやすい環境にある」という。

中国との賃金格差は縮小

同局長によると、00年代初に30倍程度だった中国と日本の賃金格差 は現在8倍程度、沿岸部とは5倍程度に縮小しており、中国からの消費 財輸入価格は最近少しずつ上昇している。賃金が上がっても、生産性が 上がれば格差は縮小しないが、「両国の生産性上昇率を加味した実質為 替レートは00年代前半に比べて、足元で2割くらい円安になっている」 という。

総務省の統計によると、85年-97年に平均で前年比2.2%上昇した 消費者物価の衣料品価格は、98年以降は0.4%低下したが、今年1-3 月は0.9%上昇とプラスに転換。同局長は「もちろんグローバル競争が 厳しく、今後も物価下落圧力は残ると思うが、従来に比べてその程度は 弱まりつつあるように感じる」という。

前田局長が挙げる2つ目の変化は日本企業の販売戦略の見直しだ。 「これまでのような既存分野における価格競争がなくなったわけではな いが、潜在的に需要がある分野において多少価格が高くても受け入れら れる付加価値創造型にかじを切り始める例が増えている」といい、高齢 者向けの商品やサービスの開発、供給を典型例として挙げた。

購入単価も上昇に転じた

さらに、「内需型の企業を含めてアジアなど海外への進出が増えて いるのも、国内での既存分野での厳しい価格競争に将来はないことを感 じているのではないか」と指摘。企業が経営資源を国内の既存分野から 内外の新しい分野に投入することは、成長力を高める要因になると同時 に、価格下落圧力を和らげる動きでもあると指摘する。

同局長は「家計調査で購入財の単価を見ると、昨年あたりから上昇 に転じており、消費者が良質であれば価格が多少高くても受け入れ始め た可能性を示唆しているのではないか」と指摘。「実体経済も欧州情勢 など不確実性が高いので、物価にも不確実性は残っているが、やや長い 目で見ると潮目が変わる兆しも出てきており、こうした動きを大事にし ていく必要がある」としている。

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