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まだ見ぬわが子の運命は-米遺伝子検査急増、情報開示で波紋

カミラ・グロンダールさんは遺伝子 研究者のゴールソン・ ライアン氏に単純だが悲痛な質問をした。それ は、自分がまだ生まれていない子供を死に追いやる可能性のある致死遺 伝子を持っていないかどうかという内容だ。

「出産を待つ間、ストレスと不安が増すばかりだった」とグロンダ ールさん(29)は振り返る。「この先どうなるのか。息子のために大学 進学の準備をすればいいのか、それとも葬儀の準備をしなければならな いのか。どちらか教えてほしい」。

グロンダールさん夫妻の夢は子供を数人育てることだ。ただ、一族 では過去30年間、生まれた男の子が死亡するケースが続いているのを知 っていた。

ライアン氏はグロンダールさんの質問に返答できなかった。数カ月 前、グロンダールさんは同氏が実施している自分の家族のDNA調査の ために血液を提供した。「直接的な医学的重要事項」が発見された場合 には通知を受けるとの書面に署名したが、それが何を意味するのかは明 確にされていなかった。

グロンダールさんは、米国で研究目的のDNA検査を受けた数千人 の被験者のうちの一人だ。これらの人々は、生死に関わる情報が見つか っても結果を通知されることはない。このような現状を受けて倫理をめ ぐる議論が高まり、科学者や医師が自らに問い掛けるきっかけになって いる。

DNA検査はより広く利用されるようになりつつあるが、大半は大 学や大規模医療施設で研究のために行われている。個人が自身のDNA 情報を知ろうとしても費用は1万ドル(約80万円)を超える場合もあ り、保険が適用されることはほとんどない。医師や研究者はこの技術を がんなどの疾病の解明や一部のケースでは診断や治療に利用している。

分岐点

昨年時点でDNAシークエンス解析によって全ゲノム塩基配列解析 を受けた人の数は約3万人と、2003年のわずか1人から急増している。 米ハーバード大学医学部の遺伝学者、アレクサンダー・ウエート・ザラ ネク氏によると、被験者の大半は、標準的な研究調査指針の下で情報に 関する権利を放棄する同意書に署名している。

法律と医学について研究するミネソタ大学のスーザン・ウルフ教授 は、調査参加者に関して科学者が臨床的に重要な情報を保持している可 能性があり、共有されないことは最大の倫理的問題だと指摘する。

ウルフ教授は電話インタビューで「医学的に提示可能で緊急性があ り重要な発見について知っている研究者を弁護するのは非常に困難だ。 まさにここが見解の分かれ目だ」と語る。

突然変異遺伝子

ザラネク氏によれば、米心臓・肺・血液研究所の調査を通じて、少 なくとも5378人のDNAシークエンス解析が実施された。コンピュータ ーによるデータ分析では、このうち最大100人の遺伝子で乳がんのリス クを高める有害な突然変異が発生している可能性があるという。

同研究所で調査に携わる研究者、クリストファー・オドンネル氏に よると、研究者らは突然変異の有無を確認しておらず、被験者にリスク が高まる可能性があることも報告していない。同氏はこれらの情報をど う取り扱うかが研究の最も重要な部分の一つだと語る。

偶発的所見」と呼ばれる予想外に発見される遺伝子検査の結果の 取り扱いに関する判断をめぐって研究者らは困難な状況に陥っている。

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