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【経済コラム】JPモルガンCEOが言い当てた事-コーハン

米銀JPモルガン・チェースのジェ イミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、同行が誇るチーフ・イ ンベストメント・オフィス(CIO)部門がリスクヘッジ戦略に絡ん で20億ドル(約1600億円)の取引損失を出したことを明らかにした10日 の電話会議で、話が3分の2ほど進んだころで調子が出だし、ダイモン 節の本領発揮となったようだ。

同CEOは「とても間が悪い」とした上で、銀行の自己勘定取引を 制限するボルカー・ルールの強化を目指す「評論家らの思うつぼにはま ることになるが、これに対処する必要がある」と語った。

それなら元JPモルガンのマネジングディレクターで評論家となっ た私も、ダイモン氏に言い返そう。同行の予想外の損失とそれをバタバ タと急いで発表した問題点は、その損失の規模ではない。巨額の資産を 保有する同行が乗り切れない規模ではないからだ。本当に問題なのは、 ロンドンの鯨というあだ名を持つトレーダー、ブルーノ・イクシル氏の 巨額の自己勘定取引によるリスクは大した事がないと、ダイモン氏らが 数週間も言い張ったことだ。

ブルームバーグ・ニュースは4月5日付記事で、同行のロンドンオ フィスが取っているポジションの規模を報じたが、同CEOは「取るに 足らないことを騒ぎ立てている」と述べ、報道した記者らに冷笑を浴び せた。私のかつての上司、ダグ・ブラウンシュタイン最高財務責任者 (CFO)は4月13日に、CIO部門は「当行のリスクを均衡させる。 下方リスクのヘッジがバランスシート保護の本質だ」とメディアに語 り、さらに「現在のポジションに非常に満足」しており、全てのポジシ ョンは「本質的に極めて長期のものだ」と説明した。

さらなる問題発言

ダイモンCEOは2月にも、取材陣を小ばかにする発言をした。2 月29日に開かれた投資家向け説明会(インベスター・デー)で、米ウォ ール街の銀行は収入のうち大きな割合を従業員の報酬に充てているが、 なぜそれが必要なのかとの質問を混ぜ返し、新聞社ではジャーナリスト の報酬が売り上げの42%を占めると反論。これは「とんでもないこと だ」とした上で、「それに加えて新聞社は利益を上げていない。当行の 報酬の割合は35%だが、多くの利益を生んでいる」と述べた。これは間 違いではない。JPモルガンは2011年に190億ドルの利益を上げ、ダイ モン氏は2300万ドル(約18億4000万円)の報酬を受け取った。

ただ同CEOも10日の電話会議で、反省を述べる良識は持ち合わせ ていた。想定最大損失額の新たなモデルが不十分だったことが分かった ので以前のモデルに戻すとしたほか、損失を出した取引には「欠陥があ り、複雑な上に再検討や実施、監督が不十分だった」と述べた。また 「ずさんさ」を認め、「あらゆる適切な」措置を講じると言明。「最悪 の過ちで、自ら招いたもの」だったが、「これを認め、そこから学び、 正して次に進む」とした。

「ボルカールールに反せず」

また、損失を出した同行のヘッジはボルカー・ルールに反するかと の質問に対し同CEOは、「反しないが、私自身の原則には反する」と 発言。また尊敬されている銀行アナリスト、マイク・マヨ氏の、振り返 ってみると何にもっと注意しておけばよかったかとの質問に、同CEO は「トレーディング損失だ」と答えた後に「新聞も」と付け加えた。

今回の出来事の前までは、ダイモンCEOは常に自信満々だった。 自行の「難攻不落のバランスシート」やリスクマネジャーとしての自ら の技量を自慢し、米ゴールドマン・サックス・グループやブランクファ インCEOのように世間のひんしゅくを買うことはないと余裕綽々だっ た。また事あるごとに、ベアー・スターンズとワシントン・ミューチュ アルの救済役に政府から同行が指名されたことを強調してきた。そし て、金融危機を受けて導入されたバーゼル3や金融規制改革法(ドッ ド・フランク法)、ボルカー・ルール、デリバティブ規則といった規制 を厳し過ぎると批判した。

それでもダイモンCEOの発言のうち、一つは正しかった。彼は評 論家と政治家に口実を与えたのだ。レビン米上院議員は同CEOの会見 後、ブルームバーグに対し、「JPモルガンが10日発表した巨大損失 は、銀行が『ヘッジ』と呼ぶものの多くが、いわゆる『大き過ぎてつぶ せない』銀行が関わるべきでない危険を伴う賭けであることをあらため て示した」と述べた上で、「この日の発表は当局者らに、厳しく効果的 な基準を設定する必要性を強く再認識させた」と指摘した。

(ウィリアム・D・コーハン氏は元投資バンカーで、「Money and Power: How Goldman Sachs Came to Rule the World(マネー・アン ド・パワー:ゴールドマンはどうやって世界の支配者になったか)」の 著作があるブルームバーグ・ビューのコラムニスト。このコラムの内容 は同氏自身の見解です)

原題:The One Thing Jamie Dimon Got Right This Week: William D. Cohan(抜粋)

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