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西海岸のカクテル職人、自然素材で人々を魅了-異次元を開拓

(原文は「ブルームバーグ・マーケッツ」誌6月号に掲載)

【記者:Elin McCoy】

5月11日(ブルームバーグ):バーテンダーのスコット・ビーティー さんはカリフォルニア州ソノマ郡の道路脇にダークブルーの愛車ジー プ・コマンダーを止めた。「月桂樹だ-」。彼は嬉しそうにそう口にす ると、車から降りて一握り葉を摘み、その一枚をつまんで私ににおいを かがせた。彼は背高グラスに注がれたセント・ジョージ・スピリッツの テロワール・ジンにピクルス液に漬けたハックルベリー、レモン果汁を 加えたカクテルにこの素材が合うかどうかイメージしているのだそう だ。

自生する食材や近隣で採れた果物、地元の農園で育ったハーブや野 菜、花。感性豊かで鮮やかなビーティーさんのカクテルにはどれも欠か せない素材だ。彼は6年前にこうしたカクテルで有名になったが、それ は「農園からグラスカクテルへ」というフレーズが生まれるずっと前の こと。彼は当時、ソノマ郡ヒールズバーグにあるレストラン「サイラス」 でバーの責任者を務めていた。このミシュランの2つ星レストランが、 ナパバレーにある3つ星レストラン「フレンチランドリー」に対して示 したソノマの答えだった。

バーの世界では農園や菜園で育った新鮮で摘みたての素材を使うの が最新の流行。都会で暮らすバーテンダーでさえ自ら栽培している。ニ ューヨークのイーストビレッジにある「ザ・サミット・バー」も近所の コミュニティー菜園でハーブを育てる。カリフォルニアの「マイケル ズ・サンタモニカ」のバーテンダー、ジェイソン・ロベイさんは屋上で 栽培し、サンフランシスコの「バー・アグリコル」は自然の営みや生態 系を重視するバイオダイナミック農法を実践する。

魅惑的な複雑さ

ビーティーさんは「サイラスの料理で表現される香味のコンビネー ションが私にアイデアを授けてくれる」と話す。地方農園で育てられた 想像を絶するバラエティーに富んだ素材に刺激を受けたそうだ。彼はレ ストラン裏で育ったブラックベリーなど、自ら見つけた素材で新たな試 みを始めた。

ビーティーさんは唐辛子とテキーラを組み合わせ、色付けに地元の ベリー、味付けにシンプルなシロップとピューレを使う。自ら育てたパ ールオニオン、フェンネル、大根、生姜もピクルス液に漬けており、こ うした素材はカクテルにピリッとした酸味を与えてくれるのだ。採れた ての果物なら単に絞っただけでも、店で買ってきたものより酸味が強 く、味わい深い。普通のカクテルでほとんど目にすることがないしそや ルバーブ、赤唐辛子、グリーンオニオン、アップルバルサミコ酢など が、人を魅了する複雑なカクテルへ変身させるのに一役買う。

ビーティーさんが作る「タイ・ボクサー」には、ヒールズバーグに あるビルマイア夫妻の1エーカー(0.4ヘクタール)の広さの農園で採 れたフレッシュミント、タイバジル、コリアンダーの葉が欠かせない。 この3種類のハーブとココナッツミルクが、ピリッとしてコクがあり、 爽やかな味わいにカクテルを仕上げる。ラムライム果汁とミントを加え たシンプルなモヒートよりも深い味が楽しめる。

自宅キッチンが研究所

この他にもパプリカ・マリーゴールドやミニチュアローズ、2色咲 きのヒマワリをビルマイア夫妻から仕入れている。ヒマワリの花びらは ラムベースのビーティー版「ダーク・アンド・ストーミー」に優雅さを 添えてくれる。グラスの淵に彩られた食用花とハーブの花はカクテルを 美しく見せるだけにとどまらず、味や香りも引き立てるという。

「アーティサナル・カクテルズ」(仮題:職人技のカクテル)の著 書があるビーティーさんは他店のバーでコンサルティング活動をしなが らカクテルを通じて自身の哲学を広めてきた。現在は4月24日にオープ ンしたセントヘレナのレストラン「グース・アンド・ガンダー」のバー でマネジャーを務める。

そのカクテルを研究する場所はヒールズバーグにある自宅アパート のキッチンだ。新しいアルコールのボトルがカウンターに所狭しと置か れ、光沢のあるベーシックなバー用具は黒いゴム製マットに並べられて いる。巨大な氷の塊を砕くため、彼は散らかった車庫に向かった。そこ で電動のこぎりに電源を入れると、氷の塊はあっという間に細かなブロ ックとなった。背高グラスを使う場合、ハーブがグラスの底にかたまら ずに氷とうまく調和するようにグラスに氷を入れることが重要だ。

一種の科学

カクテル作りは一種の科学であり、精緻さが求められるとビーティ ーさんは言う。レシピを忠実に再現するには計算し尽くさなければなら ないということだそうだ。ハーブや果物、野菜の糖度や大きさ、香りは 一年を通して変化するため、新鮮な素材を使う場合は調合をあらためて 見直し、状況に合わせた調整が求められる。ビーティーさんはこれをカ クテルの調理的アプローチと呼ぶ。

私達は今日一日をナパバレーにあるグース・アンド・ガンダー1階 のバーで終えた。滑らかな川石を使った大きな暖炉と木の梁は、そこが あたかもモンタナ州であるかのような雰囲気を醸し出している。ビーテ ィーさんは、暖かな午後に外の芝生でカクテルを口にする人々をイメー ジする。「氷とジン、ゆず、初物のハーブで満たされたコリンズ・グラ スがたくさん目に浮かぶ。私にとってカクテルのゴールとは、そのうま さに尽きる」。

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