100兆円消費に狙いすます-小売企業が高齢者向けサービス強化に奔走

大人用の紙おむつ販売が幼児用を超 える時代へ突入し、小売企業は高齢者の消費に的を絞った販売戦略を一 段と進めている。人口の割合が高まっている高齢者層が必要な商品・サ ービスにはビジネスチャンスがあるとみているためだ。

総務省が4月に発表した人口推計によると、65歳以上の割合は2011 年10月の時点で23.3%と過去最高を記録。おむつ製品で国内最大手のユ ニ・チャームの大人用おむつ販売も年をほぼ同じくする11年度に幼児用 を初めて超えた。

イオンの村井正平専務は3月の会見で、「1980年代や90年代は、人 口構成上圧倒的多数だったファミリー層がメインターゲットだった」と 指摘した上で、今後は高齢層が「個人消費のけん引役となる」と語っ た。同社が、11年度の総務省の家計調査報告に基づいて行った試算によ ると、60歳超の人々が消費した額は109兆円に上り、国内消費の44%を 占める。

高齢者の主な収入源である年金からの資金の流れは小売企業にとっ て商売につなげる好機。セブン&アイ・ホールディングスは65歳以上を 対象とした電子マネーカードを4月から導入。年金支給日にあたる毎 月15日にこのカードを使って傘下のイトーヨーカドーで買い物をすると 5%の割り引きとなる。イオンやダイエーも同様に高齢者向けカードを 導入している。

ダイエーの桑原道夫社長は、「お年寄りのところに消費意欲があ り、実際に可処分所得が結構多い」と言う。ユニ・チャームの高原豪久 社長も11年度の決算会見で「国内で大人用紙おむつが2けた成長して、 売り上げでも利益率でも非常に重要な事業」になったと述べ、高齢者用 商品の需要の大きさを示唆した。

小分け商品

「大根を半分に切ったりしているのは助かるよ。人数が少ないから ね」と都内で妹と2人で暮らす奥山敬三さん(93)は話す。奥山さん は、イオンの店舗で1000円から1500円の買い物をするのが日課だ。購入 するのは、ひとり暮らしや少人数世帯向けの小分けした食品パッケージ が多いという。

しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹投信グループ長は、 高齢化社会の進行で、「少量のものを置いているコンビニなどが見直さ れてきた」と指摘する。

セブン&アイ傘下のセブン-イレブン・ジャパンは、一部地域で実 施していた食事宅配サービスの全国展開を開始。買い物に不自由してい る高齢者を取り込むのが狙いだ。13年度の同事業の売上高予想は350億 円と、11年度比で3.5倍の拡大を見込んでいる。ファミリーマートは4 月、高齢者専門弁当を宅配するシニアライフクリエイトを買収、子会社 化した。

高齢者を意識したサービス強化は、ほかにもある。イオンは内科な ど13の診療科目を有する総合クリニックを併設した船橋店をオープン。 ダイエーも赤羽店など一部の店舗でエスカレーターの速度を通常の3分 の2まで落としている。

こうした新しいサービスにはコストがかかる。りそな銀行の戸田浩 司チーフ・ファンド・マネージャーは、顧客獲得競争の観点から資金的 にはセブン&アイやイオンが有利としている。高齢者に合わせた店舗を 「出店するにしても一つ二つ作るだけではだめで、コンビニなどでも数 百店を出している」と述べ、大量出店による囲い込みが重要との見方を 示した。

日本はモデルケース

日本で進行している高齢化社会の現象は、ほかの国でもみられ る。1979年から一人っ子政策を進めている中国でも65歳以上の人口比率 が10年11月1日現在で8.87%となった。2000年の時点と比べ1.91ポイン トの上昇だ。

しんきんアセットの藤原氏は、日本は他国の「モデルケースにな る」と見る。最適な店づくりや商品構成を進めている日本企業にとって 「時間はかかるが、その努力は日本だけではなく、海外でも通用してい く」との見方だ。

ユニ・チャームの高原社長は、「一人っ子政策を30年以上続けてい る中国も必ず日本以上のスピードで高齢化が進む」と予想。「日本発の スタンダードを作ってアジアに広げて行く責任がある」と、意欲を示し た。

取材協力:小笹俊一 --Editor:

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