トヨタ:今期営業利益1兆円が射程-販売回復、為替も改善

国内自動車最大手のトヨタ自動車の 今期(2013年3月期)営業利益は1兆円の大台を5年ぶりに回復する との見方が出ている。前期に打撃を受けた東日本大震災やタイ洪水の 影響から脱し、市場規模が大きい日本や北米の販売が好調であるほか、 一時と比べて円高が緩和している為替相場も追い風となる可能性があ る。国内自動車業界は全般に今期業績の急回復が見込まれている。

ブルームバーグ・データによるアナリスト22人のトヨタの今期営 業利益予想平均値は1兆391億円。震災や洪水の影響で生産が滞った 前期(12年3月期)営業利益の会社予想2700億円と比べると約3.8 倍の伸びとなる。今期純利益のアナリスト予想平均値は8177億円、売 上高は20兆8481億円でいずれも前期の会社予想額を大きく上回る。 決算は9日発表の予定。

トヨタは昨年の震災とタイ洪水により、前期の営業利益にそれぞ れ1600億円、1100億円の影響があるとしていた。今期はこうした影 響がなくなるのに加え、生産技術面の改革も業績に寄与する。トヨタ 広報担当の立川穣一氏によると、リーマンショック以降の一連の改善 活動で、自然災害のような突発事案がなければ毎年約3000億円の原価 低減を続けられる体制ができているという。

円相場は昨年10月に戦後最高値となる1ドル=75円35銭へ上昇。 その後も高止まりが続いたが、日銀が追加緩和と年1%の物価上昇を 目指す方針を発表した2月に円安方向に転じた。トヨタの前期想定レ ートが対ドル78円、対ユーロ108円に対し、4月の実勢平均はそれぞ れ81円27銭、106円99銭。トヨタの場合、前期は1円の円高で営業 利益ベースでは対ドルで320億円、対ユーロで50億円のマイナス影響 を受ける。

流動的な欧州情勢

仏大統領選やギリシャ総選挙を受けて足元では対ドル、ユーロで 再び円高が進行。7日午前の東京市場では1ドル=79円65銭、1ユ ーロ=103円24銭まで円が買われた。

JPモルガン証券の高橋耕平アナリストは電話取材に対し、震災 からの回復などの追い風を受けてトヨタの売上高や利益が「大幅に増 えるのは間違いない」と予想。今年に入ってからの生産や販売台数の 推移も「非常にいい」といい、あとは収益がどうなるかが注目される と話した。

トヨタ株の8日午前終値は前日比0.3%高の3120円。年初来では 22%上昇しており、6%高のトピックス指数や17%高の東証1部輸送 用機器を上回っている。

好調な北米販売

クレディス・スイス証券の塩原邦彦アナリストは1日付のリポー トで、トヨタ系サプライヤーによるトヨタの生産台数の前提が前期比 120万-130万台増であるとし、「コスト増を想定しても営業利益は1 兆円の大台に乗る可能性が高いと考えられる」と指摘した。

トヨタは08年3月期に過去最高の営業利益2兆2704億円を記録 したが、金融危機後の消費低迷のあおりを受け翌期は営業赤字に転落。 その後も利益水準は低迷した。1兆円を回復すれば5年ぶりとなる。

日本自動車販売協会連合会の統計によると、昨年末に投入した小 型ハイブリッド車「アクア」の好調など新車投入効果もあり、トヨタ の国内販売台数は4月に前年同月比で約3倍になるなど、他社と比べ ても高い伸びで推移している。

トヨタの売上高の約3割を占め、利益率も高い北米市場の販売も 好調だ。4月の米国での販売台数は前年同月比12%増で、アナリスト の事前予想を2ポイント上回った。米ゼネラル・モーターズ(GM) やフォード・モーター、ホンダなどは販売を落とした。JPモルガン の高橋氏は、主戦場である北米市場の需要好調など、自動車業界での 「トヨタのポジショニングはいい」と指摘する。その一方、今期の営 業利益については9800億円と市場コンセンサスを下回り、1兆円には 若干届かないと予測している。

ガソリン高がネック

その理由の1つとして高橋氏はガソリン価格の上昇を挙げる。1 日の全米のレギュラーガソリン価格は1ガロン3.803ドル。年初来で は16%上昇している。燃料価格の高騰で「車のダウンサイジング(小 型化)が進み、利益率の低い小型車が増えることや日本からの輸出比 率が高いプリウスなどハイブリッド車の販売が増えることなどで車種 構成としてはマイナスになる」と話した。

トヨタの豊田章男社長は3月、大規模リコールや震災などの問題 が一段落した当時の業績について「底を打ってキュッと戻ってきたと ころ」と表現。その上で、「とにかくこの1年何もなく無事に過ごし、 そうしたらもう少し明るい見通しも言えるようになる」と話した。

豊田社長は為替相場について、対ドルで70円台半ばの水準が「あ まりに長期続いた」と指摘。80円台前半でも「まだ厳しい」と述べた 上で、「85円ぐらいで推移」して「そこで少し時間を稼いでくれれば」 と期待を示した。

巨大なゴリラ

高橋氏は、今期のトヨタの課題について「方向性としては改善し ているが、国内事業の収益改善がまだ必要」と指摘。国内外の競合他 社と比べて海外生産などいろいろな面で意思決定が遅いとの印象を受 けるといい、単体で黒字化を達成した後で「いかに利益を出す体制を 築いていくかが示されていない」と話した。

タイ洪水で現地の四輪車工場が水没するなど大きな被害を受けた ホンダは4月27日に決算発表し、今期業績が大幅な増収・増益になる 見通しを明らかにした。連結純利益は販売拡大やコスト削減効果など が寄与し、前期比2.2倍の4700億円を見込む。売上高は同30%増の 10兆3000億円、営業利益が同2.7倍の6200億円の見通し。

日産自動車は5月11日に決算発表を予定している。日産自は震災 やタイ洪水の影響が比較的少なく、2月には前期純利益2900億円、営 業利益5100億円と売上高が倍以上あるトヨタを上回る水準を見込ん だ。アナリストによる今期予想平均値は純利益4140億円、営業利益 7214億円といずれも前期会社予想から4割以上の増加を見込む。

日産自のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)は4 月のインタビューで、円相場について「体重1000ポンド(約454キロ グラム)の気まぐれなゴリラ」と表現。それに日本の自動車メーカー は例外なく苦しめられているとしたが、「それを除けばビジネスは極め て順調」と話し、今期売上高は10兆円に達する可能性もあると話した。

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