日銀は変化球やめ国債購入の直球投げよ-竹中氏

慶應義塾大学の竹中平蔵教授は、日 本銀行はデフレ脱却のため、成長基盤強化の資金供給のようなその場し のぎの「変化球」ではなく、マネー供給の手段である国債の購入という 「直球」に徹するべきだとの認識を示した。また、金融の専門家が少な いことなど、政策委員の資質にも問題があると指摘した。19日のブルー ムバーグ・ニュースのインタビューで語った。

日銀は3月13日の会合で、金融政策運営の現状維持を決める一方 で、成長基盤強化を支援するための資金供給を従来の3.5兆円から5.5兆 円に拡大した。しかし、竹中氏は「これは日本政策金融公庫の仕事であ って、日銀の仕事ではない。日銀は常に、直球を投げようとせず、変化 球でその場をしのごうとしている」と語る。

竹中氏がいう直球とは国債の購入だ。「中央銀行は市場からモノを 買ってマネーを供給する。最も買いやすいのは、中央銀行のバランスシ ートにとって最もリスクの小さい国債だ」と指摘。「国債を全部買っ て、もう買うものがないというのであれば、外債など他のものを考えれ ばよいが、今はそういう状況からはほど遠い」という。

竹中氏は政策委員に対しても手厳しい。「国会という手続きを経る と速やかな判断ができない、かつ金融は極めて技術的だから専門家に任 せる、これが中央銀行を政府から独立させ別に作っている最大の理由 だ。ところがその大半が専門家でないのが日銀だ」と指摘。「金融の博 士号を持っている人が何人いるのか。財界人枠などがあり、金融と関係 ない人もいる。これは非常におかしなことだ」と語る。

10年前の議事録

日銀は2月14日の金融政策決定会合で、消費者物価指数(CPI) の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域、当面1%を「物価安定のめ ど」と明示。その上で、当面1%を目指して、それが見通せるまで強力 に金融緩和を推進していくと表明した。竹中氏は「一歩前進とまでは言 えないが、半歩よりは前に進んだ」という。

2月の決定の2週間前、2003年7-12月の決定会合の議事録が公表 された。竹中氏は当時、経済財政政策担当相として会合に出席した。 「私はインフレ目標を真剣に考えてほしいと主張したが、支持したのは 中原伸之審議委員(当時)だけで、非常に強く反対された。10年前に拒 否したものを今やることにどういう正当性があるのか、きちんと説明し てもらいたい。それが説明責任だ」と語る。

竹中氏は「物価安定のめど」が一歩前進とまでは言えない点として 「目標に幅を持たせ、そこから外れた場合にどういう責任を取るのかを 明記しなくてはならない」と指摘。さらに、誰が目標を作るのかについ ても「目標を共有するという意味で、本当は政府と日銀の間で合意でき ればよいが、それができないのであれば、日銀法を改正して新たなルー ルを作るしかない」と主張する。

このチャンスを生かせ

日銀は27日、経済・物価情勢の展望(展望リポート)でコアCPI (生鮮食品を除くベース)の前年比上昇率の見通しを示すが、12、13年 度ともプラス1%に達しないとみられている。竹中氏は「1%に達しな いのだとすると、1%を目指すと言いながら、予測している姿が違って いるというのは、いったい何なのか。その意味では、一歩前進とはまだ 言えない」という。

竹中氏は一方で、「日銀の決定が人々の期待を変えていることは事 実であり、期待の変化がその後の若干の為替レートの変化と、株式相場 の変化になって表れている」と指摘。「今回一番大事なことは、金融政 策が有効だということが、すごく明確に出たことだ。このチャンスに、 これを決定的なものにしてもらいたい」と語る。

白川方明総裁は「中央銀行による国債の買い入れが、金融政策運営 上の必要性から離れて、財政ファイナンスを目的として行われていると 受け止められると、かえって長期金利の上昇や金融市場の不安定化を招 きかねない」(2月17日の講演)と述べるなど、中央銀行による大規模 な国債の購入には慎重な姿勢を取り続けている。

政府を信用できないなら拒否せよ

国債の大量購入、その結果として、日銀のバランスシート拡大がも たらすデメリットについて、竹中氏は「唯一考えられるのは、どこかで デフレからインフレに変わり、ハイパーインフレが起こらないかとい う、漠然とした不安だ」と指摘。「実はそのために、インフレ目標があ る。インフレ目標には上限があるので、インフレが高くなりすぎたら抑 えればよい」という。

その上で「察するに、日銀は政府を全く信用していないということ だ。政府が何をするか分からないので、自分たちのバランスシートを守 ろうとしている」と言明。「もし日銀の政策委員が政府を信用できない というのであれば、要請された段階で、私はあなたを信用できないから やらないと、そこで拒否すべきだ」としている。

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