幻の審議委員、河野氏が日銀に贈る言葉

日本銀行の審議委員候補に推されな がら、野党が過半数を占める参院で人事案が否決されたBNPパリバ証 券の河野龍太郎チーフエコノミストは、不均衡が今、高まりつつあると すれば、それは国債市場だとし、日銀が大量の国債を買うことによっ て、将来、金融システム不安を引き起こす可能性があると警告を発し た。

河野氏は11日昼、都内で開いた記者向けのセミナーで、日銀の金融 政策について「心配していること」として、日銀が行っている大量の国 債購入を挙げた。日銀は経済成長に伴い必要となる「成長通貨」の供給 のために年間21.6兆円の長期国債の買い入れを行っているが、これとは 別に資産買い入れ等基金で今年年末までに計19兆円の買い入れを行う。

日銀は2月14日の金融政策決定会合で、当面、消費者物価の前年比 上昇率1%を目指して、それが見通せるまで強力に金融緩和を推進して いくと表明した。しかし、1980年代後半に低金利の長期化によりバブル を発生させた反省から、「金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因 を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていな いこと」をその条件として挙げている。

資産買い入れ等基金で買い入れる長期国債は残存期間2年以内を対 象としているが、河野氏は「日銀は既に残存2年以内の国債を結構な規 模で買っているので、追加的に買うとなると、当然残存期間を3年や4 年に延ばしていくことになる」と指摘。「中央銀行が残存4年や5年の 国債をどんどん買っていく状況になると、デフレが解消した時は、それ らの国債を売らなければならなくなる」と述べた。

私が審議委員に推された理由

デフレが解消したあかつきには「物価安定のために利上げをしなけ ればならない、あるいは保有国債を売らなければならないが、一方で、 あらゆる金融機関が日銀のゼロ金利による流動性供給と国債支持政策に より大量の国債を買っている中で国債価格が下落すると、金融システム の安定が懸念される状況になる」と河野氏は指摘する。

一方、審議委員候補に挙げられた理由については「客観的に分析す ると、『財政健全化や社会保障制度改革が必要であり、金融政策でこの 問題は解決できない』という私のような意見は、民主党ではひょっとす ると5割を下回るかもしれないが、自民党と公明党の7割くらいは占め ると思っていた」とし、「首相官邸はむしろ、私の意見が民主党よりも 自公に近いので、私を推したのではないか」と語った。

金融緩和で解決できる問題ではない

しかし結果的に、自公など野党が過半を占める参院で、この人事案 は否決された。河野氏は「日本の喫緊の課題は社会保障制度改革と財政 健全化であり、これらの問題を放置していること自体が成長に相当悪影 響を及ぼしている」と言明。

その上で「この2つの問題を解決しないといけないが、これは金融 緩和で解決できる話ではない、残念ながら増税はやむを得ない、という 私の主張に対して、アグレッシブな金融緩和によって税収が増えて、社 会保障制度改革や財政健全化が相当楽になる、あるいは、ひょっとした らしなくて良くなると思っている方々からすると、金融緩和に消極的 で、増税に積極的と映ったのかもしれない」と語る。

河野氏は「日本経済が置かれた状況からすると、社会保障制度改革 と財政健全化に伴い、ある程度の負担増加はやむを得ないことを国民に きちんと提示して、説得することが政治の本来あるべき姿だと思う」と 指摘。「金融緩和で国民の負担が相当軽減されるとか、なくなるなどと する意見が党内にある時に、保守を自任する政治家の中にも、それを追 認したり黙認したりする人が増えていることが心配だ」という。

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