米銀大手JPモルガン・チェースで 企業の財務力に関連するデリバティブ(金融派生商品)を扱っているト レーダーが非常に大きなポジションを取り、10兆ドル(約813兆円)規 模の市場で価格をゆがめている可能性がある、と外部のトレーダーが語 った。

取引相手となっているヘッジファンドやライバル銀行の5人が匿名 で語ったところによると、このJPモルガンのトレーダーはロンドン在 勤のブルーノ・イクシル氏。同氏が専門にしているのはクレジット・デ リバティブ指数で、企業のデフォルト(債務不履行)の可能性に賭ける 市場としてはこの10年で社債を追い越して最大規模になっている。

投資家の間では、イクシル氏の取引が価格をゆがめている可能性が あり、多額の債券保有のヘッジとしてクレジット・デリバティブ指数を 利用している債券保有者に影響を及ぼしているのではないかとの不満が 出ている。アナリストやエコノミストもクレジット市場のリスク認識を 測るのにこの指数を利用している。

イクシル氏は自己ポジションを他のトレーダーにほとんど明かして いないが、他のトレーダーはこれらの取引の反対の立場を取っており、 同氏の注文はこれまで出合った中で最大の規模だという。2人のヘッジ ファンド・トレーダーはイクシル氏が市場に参加したとディーラーから 告げられた際に、異常に大幅な価格変動が見られたと述べている。関係 者1人によると、少なくとも数人のトレーダーはイクシル氏のことを 「ロンドン・ホエール」と呼んでいるという。

JPモルガンの広報担当、ジョー・エバンジェリスティ氏はイクシ ル氏の具体的な取引についてコメントしなかった。イクシル氏はコメン トを求める電話メッセージや電子メールに回答していない。

指数

このクレジット指数は、少なくとも100社のデフォルトリスクに関 連している。最新シリーズで最も売買が活発な投資適格級クレジットの 指数は5日にほぼ4カ月ぶりの大幅高を記録し、6日も上昇した。

マークイット・グループによると、北米企業の信用リスクの指標で あるマークイットCDX北米投資適格指数のシリーズ18のスプレッド は、ニューヨーク時間6日午前10時18分(日本時間同午後11時18分)時 点で、3.3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、100.2b p。同指数の価格はスプレッドで値付けされ、企業のデフォルトの確率 が高まるとの見方が強まると、スプレッドも上昇する。

関係者によると、イクシル氏は一部のクレジット指数の価格と個々 の企業のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の平均価格に格 差を生じさせた可能性がある。格差が縮小することに賭けていた一部ヘ ッジファンドは価格差の持続にいら立っており、一部のトレーダーはイ クシル氏がいずれ一部の持ち高を清算するとみてポジションを追加した という。

ボルカールール

イクシル氏は顧客に代わって証券を売買するトレーダーとは異な り、同行財務部の傘下にある市場リスク管理と余剰資金投資を担う部門 であるチーフ・インベストメント・オフィスに勤務している。広報担当 のエバンジェリスティ氏によれば、同部門は「長期の組織的な資産負債 管理に重点を置いており、短期的な利益を重視してはいない」という。

元フィラデルフィア連銀審査官で現在はFBRキャピタル・マーケ ッツのアナリストを務めるポール・ミラー氏は、イクシル氏がJPモル ガンの綿密な監督の下で取引した公算が大きいと述べ、「問題はどれだ け多くの資本をリスクにさらしているかだ」と指摘した。

米国では銀行による自己資本を使った高リスク投資を抑制すること を目指した自己勘定取引規制が7月に施行される予定。ただ、ボルカー ルールと呼ばれるこの規制の中で金融機関が融資やトレーディングのリ スクを抑制するケースをどのように特例扱いにするかについては、当局 はなお検討中。

クレジット指数市場の規模や構造を理解している複数の関係者が取 引や価格の動きから推定したところでは、イクシル氏はマークイット CDX北米投資適格指数シリーズ9で1000億ドルのポジションを積み上 げた可能性があるという。

原題:JPMorgan Trader’s Positions Said to Distort Credit Indexes (2)(抜粋)

--取材協力:Zijing Wu.

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