母の言葉が原点、アジアヘッジファンド業界の雄のヨン氏

ダニー・ヨン氏は10歳の時に父親を がんで亡くした。その時の母の言葉が糧となり、今日の同氏を築いたと いう。

「母はその時、『父親がいないからといって誰からも見下されちゃ だめ』と言った」と、ヨン氏はシンガポールでのインタビューで語っ た。シンガポールは同氏が生まれ育った母国。「母の言葉は私を駆り立 て、小さいときに父を亡くしたからといって人から哀れみを施されない ようにしようと固く決意させた」と同氏は振り返った。

40歳になった今、ヨン氏はアジアのヘッジファンド業界で羨望の的 だ。同氏のダイモン・アジア・キャピタルは昨年、運用資産10億ドル (約830億円)超のファンドの中でトップの成績を上げた。ポール・チ ューダー・ジョーンズ氏のチューダー・インベストメントからの出資金 1億ドルで2008年に発足したダイモンは今、運用資産28億5000万ドル規 模に成長。うち旗艦のマクロファンドの資産は25億ドルだ。

ゴールドマン・サックス・グループやシタデルで運用の腕を磨いた ヨン氏にとって次の課題は、急激に成長したアジアのヘッジファンドが 1、2年の好リターンの後に往々にして見舞われがちな投資低迷と投資 家の資金引き揚げを回避することだ。ヨン氏は1986年以降平均で年20% のリターンを上げているジョーンズ氏の実績と肩を並べることを目指し ている。

適正規模

顧客の資金をヘッジファンドに投資するアーテミス・ウェルス・ア ドバイザーズ(ニューヨーク)の投資責任者ピーター・ラップ 氏は、 「無規律な運用者が簡単に自身の成功の犠牲者になっていくのを数多く 見てきた」とし、「ちょうどいい大きさは10億-50億ドルで、投資家か らの需要があってもこの規模を守るのが良い」と話している。

ダイモン・アジア・マクロ・ファンドの2011年リターンは手数料後 で20%以上。ブルームバーグのデータによればアジアで1位、世界でも 7位だった。

ヨン氏は「今一番の課題は資産規模が大きくなった中でも以前同様 の質の高いリターンを生み出せることを示し続けることだ」と話した。

世界の経済動向に基づいて債券、通貨、株式、商品に投資するマク ロファンドとして、ヨン氏のファンドは昨年3月11日発生した東日本大 震災後の数日間の短期取引で儲けたことなどが寄与して、その月だけで 8%の利益を出したという。

ヨン氏のファンドの投資手法は地震後に取引が再開した3月14日に ショート(売り持ち)ポジションを買い戻し、地震発生4日後に日経平 均先物をロング(買い持ち)にした。14日の日経平均は6.2%の下落だ った。

慈善事業

また、ギリシャ危機が拡大する中で、8月までの6カ月間中国通貨 の元をロングにしていたことや、9月に米ドルをロングに、株式をショ ートに切り替えたことなども利益につながったとヨン氏は説明した。 MSCI世界指数は昨年9月に8.9%下落した。

ヨン氏は自身の成功の多くをジョーンズ氏に負っていると考えてい る。慈善財団のロビン・フッド・ファンデーションを運営するジョーン ズ氏と同様に、ヨン氏もヨン・ホン・コン・ファンデーションを設立し た。父親の名前を取ったこの財団は厳しい家庭環境の子供たちを支援す ることが目的だ。

「金もうけはトレーダーとして、投資家としての自分の得点を記録 する手段でしかない」と同氏は言う。一部のヘッジファンド運用者のよ うな特別な趣味や収集癖を持たない同氏の世界は、仕事と妻と3人の子 供たちを中心に回っているという。

原題:Yong’s Rise to Top of Asia Hedge Funds Left No Time for Pity (1)(抜粋)

--取材協力:Saijel Kishan.

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