【M&A潮流】東・大証が唯一良縁、破談続く証取統合-政府仲人で

ドイツ取引所とNYSEユーロネ クストの破談など世界的な取引所のM&A(合併・買収)が失敗続き の中、市場関係者の間では東京証券取引所と大阪証券取引所の経営統 合が唯一の成功例になるとみられている。

大証株は23日時点で46万5000円と、東証が今夏に予定する株式 公開買い付け(TOB)価格の48万円を3.2%下回って推移する。こ の価格差は、トロント証券取引所を運営するカナダのTMXグループ 株が同国の銀行・年金基金グループ、メープル・グループ・アクイジ ションによる買収価格50カナダドルを12%下回る状況よりも小さい。

こうした違いは、現在世界に残る2つの取引所統合案件の中で、 東証によるTOBの方がメープルに比べて無事実現する確率が高い、 と投資家らが考えていることを示す。

キャンベラやニューヨーク、ブリュッセル、トロントの規制当局 が過去1年間に取引所の合併を相次ぎ断念させた一方、日本では同国 の「資本市場の将来にとって重要な取引」が進められているとクレデ ィ・スイス証券のアナリスト、スティーブン・バーカー氏は言う。

東・大証の統合交渉は、2011年3月に一部報道をきっかけに表面 化。その後時期や統合形態などをめぐり両社間で協議を重ね、同11 月に13年1月の統合を目指すことで最終合意した。交渉事情に詳しい 複数の関係者によると、交渉過程について金融庁は両社に逐一聞き取 りを行っていたもようだ。

シンガポールに拠点を置くレリゲア・キャピタル・マーケッツの ジョナサン・フォスター氏は、「この統合が実現されるために、極めて 大きな圧力が存在した」と見ている。アジアをリードする証券・商品 市場をつくるため、「最初の一歩として、日本政府はこの合併を後押し している」と指摘した。

当局の壁で海外は失敗

ブルームバーグ・データによれば、シンガポール取引所がオース トラリア証券取引所の運営会社であるASXへ買収提案を行った10 年10月以降、東・大証を含めた取引所の買収提案額は370億ドル(約 3兆639億円)に達した。しかし、多くの合併話は失敗に終わった。

豪政府は昨年4月、シンガポール取引所がオーストラリア証券取 引所を持つASXを買収する提案に対し、従属的なパートナーになり かねないとして承認を拒否。当局による不承認が明確になり、米ナス ダックOMXグループなどはNYSEユーロネクスト買収を同5月に 断念した。さらに欧州委員会はことし2月、合併は競争を損なうとし、 NYSEユーロネクストとドイツ取引所の合併の不承認を決めた。

ただ、海外での失敗の連鎖は東・大証案件に対する確信を揺るが さなかった。大証株は昨年12月からことし1月まではおおむね44万 円で推移していたが、2月以降はじりじりと上昇。NYSEユーロネ クストとドイツ取引所の合併が破談になって以降の2月27日には、一 時46万8000円とほぼ1年ぶりの日中高値を付けた。

ナショナルチャンピオンをつくれ

米タレット・プレボンの合併アービトラージ戦略担当者、サチン・ シャー氏は「東・大証の統合案件が他の取引所案件と決定的に違うの は、これが一つの国で行われるということだ」と強調。「企業同士が交 渉しながら、政府との温度差を計ったように感じる」とも話した。

日本政府は、10年6月から昨年12月にかけて断続的に閣議決定 した「新成長戦略」、「新成長戦略実現2011」、「日本再生の基本戦略」 で、総合取引所の創設推進をすべてに明記している。金融市場として の日本の相対的な地盤沈下が進む中、中期的には20年までに実現すべ き成果目標として、アジアのメインマーケット、メインプレーヤーし ての地位の確立を目指すとした。

政府は9日、総合取引所の創設に向け金融商品取引法の一部改正 案を閣議決定。同法案では証券・金融や工業品、穀物などの取引の規 制・監督を金融庁に一元化させる。成立すれば、13年に施行予定だ。 東京穀物商品取引所は21日、すべての農産物上場取引に関し、東京工 業品取引所と関西商品取引所への市場移管を打診する方針を示した。

「東・大証の合併とは、日本の『ナショナルチャンピオン』をつ くること」と、JPモルガン証券のイェスパー・コール株式調査部長 は言う。「地下には接続していないパイプと下水道がいくつもある。日 本の相対的地位が低下している現状、それらを接続して効率化するこ とは皆にとってプラス。大きな推進役は日本の金融庁だ」と見ている。

結婚後の姿

株式市場では、東・大証統合後の姿に期待感もある。クレディS のパーカー氏は2月の投資家向けリポートで、大証の株価は統合で誕 生する新会社の企業価値を十分に織り込んでいないと指摘。独自の試 算を踏まえ、TOB価格を4.2%上回る50万円に目標株価を設定した。

ベイビュー・アセット・マネジメントの高松一郎運用第2部長は、 「大証はデリバティブ取引に強い。今後の株式市場は現物取引に比べ デリバティブ取引の伸びが高いと予想される」とし、現在のTOB価 格が「安いという見方はそれなりの理がある」と述べた。東証の斉藤 惇社長と大証の米田道生社長はそろって、TOB価格の引き上げの可 能性については否定している。

海外では、メープル・グループによるTMXグループの買収交渉 が進行中だ。米タブグループの最高経営責任者、ラリー・タブ氏は「こ の案件が進行するかどうかには疑問が渦巻いている。規制当局や世論 が合併を支援しているか不透明なため」と言う。これに対し日本では、 「政府の応援がある上、外部の反対グループもなく、大丈夫だろう」 との見方を示した。東・大証は1月、公正取引委員会に対し独占禁止 法に基づく審査の申請を行い、金融庁に対しては産業活力再生特別措 置法(産活法)の適用を申請した。

公取委審査は6月まで継続も

大証の米田道生社長は21日の定例会見で、「今の日本市場の現状 は国際的に見て劣後している。取引所をめぐる環境は大きく変わって きたが、東証、大証とも現状はまだまだ対応できていないことが多い」 と発言。さらに、「世界の経済の軸足はアジアに向かっている。日本は アジアの一角にあり、歴史ある完成された市場を持っている。良い立 ち位置にいる」と述べた。

東・大証の統合に関し、公取委は独禁法に基づく第2次審査を行 っている。両社によると、同審査の終了後に東証は大証に対し速やか にTOBを実施する予定。東証の深山浩永常務は15日、公取委の審査 について「6月ごろまでかかる」との見通しを示している。

東証1部の年間売買代金は07年の約735兆円をピークに、11年 は約342兆円まで54%減少。大証のデリバティブ合計取引金額も、過 去最高だった07年の約594兆円から、11年は約307兆円まで48%減 った。世界取引所連盟によると、2000年から09年までに世界の取引 所の株式売買代金は61%増加したが、東証1部は52%増にとどまる。

大証の矢田真博広報チームリーダーはブルームバーグの取材に対 し、「民間企業同士の統合のため、基本的に政府の支援はない」と応じ た。東京証券取引所グループの吉松和彦報道課長は、「監督官庁とは随 時報告しながら、統合作業を進めている」と話した。

--取材協力:Jason Clenfield、Whitney Kisling Editor:Shintaro Inkyo、Eijiro Ueno

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