生損保の日本株売り峠越えへ、ソルベンシー対応が収束-株高一助

日本株市場では、長らく株式需給 のバランスを崩してきた国内生命保険、損害保険会社の売り圧力が今 年度内に峠を越すとの期待が高まっている。株式の価格変動リスクを 厳しく見積もる新たなソルベンシーマージン(保険金の支払い余力) 比率の導入について、生損保の対応が収束するとみられているためだ。

東京証券取引所の株式分布状況調査を見ると、生保・損保による 日本株の保有比率は金額ベースで低下傾向にあり、2010年度には

6.4%と過去最低となった。一方、海外投資家は10年度に26.7%とリ ーマン・ショック前年の07年度(27.4%)以来の水準に上昇。こうし た流れは足元でも続き、投資部門別売買動向によると、3月2週まで 生損保は11週連続の売り越し、海外勢は12週連続で買い越している。

東海東京証券の仙石誠マーケットアナリストは、「新年度入りする 4月以降は、生・損保による株式売却が減る可能性が高い」と指摘。 海外勢の買い越しが続く中、生損保の売りが出にくくなることで、来 年度からは日本株需給の改善が徐々に大きなテーマに育ち、中長期的 な相場の底入れ、上昇基調への転換につながると予想している。

生損保業界では、財務の健全性を示すソルベンシーマージン比率 の算定基準が12年3月期から厳格化され、国内株式の価格変動リスク に当たるリスク係数がこれまでの10%から20%へと倍増する。新基準 の導入で同比率が大幅に低下することを避けるため、ここ数年は多く の生損保が株式残高の圧縮を続けてきた。

生保の株保有、6四半期連続マイナス

日本銀行の資金循環統計で生保の証券投資内訳(フロー)を見る と、株式・出資金は10年6月末から直近の11年9月末まで6四半期 連続で前年同期末比マイナスとなっている。生命保険協会によれば、 生保が保有する国内株残高は昨年末時点で前の年末に比べ20%減の 13兆4667億円。日本損害保険協会によると、損保の昨年末時点の保 有株残高は同24%減の5兆904億円だった。

富国生命保険の山田一郎株式部長は、生損保全体として「株式の 保有残高を一方的に落とす動きは3月でひとまず止まる」との見方を 示した。山田氏によると同社では、ソルベンシーマージン比率の算定 方法変更に備えた株式売却は昨年中にほぼ終了。あらかじめ決まって いた関連スケジュールを見据え、粛々と対応してきたという。

金融庁では、ソルベンシーマージン比率の算定基準に関する保険 業法施行規則等について、パブリックコメントの募集を行った後、10 年4月20日に公布している。

金融機関の売り圧力、取引所外にも

東海東京証の仙石氏は、「市場に最も影響力がある海外投資家が買 い続けているにもかかわらず、日本株が長期低迷を余儀なくされてき たのは国内の金融機関がファンダメンタルズを度外視し、機械的な売 りを出すため」と言う。海外勢は昨年まで3年連続で日本株を買い越 した半面、生損保は4年連続、都銀・地銀等は5年連続で売り越した。

仙石氏によれば、こうした金融機関の売り圧力は取引所外取引で も見られ、東証の投資部門別売買データの証券会社の自己売買部門に 一部反映されているという。証券自己は7年連続で売り越しており、 昨年の売越額は3兆1505億円と最大の売り越し主体だった。「市場外 で金融機関が外した保有株式を引き受けた証券自己が、通常取引で売 りに出す構図」と同氏は指摘する。

生損保や銀行の株式保有削減は、国際的に財務の健全性が求めら れる中、規制強化や会計制度の変更を受けリスク性の高い資産の株式 保有を圧縮する動きが背景にある。銀行に関しては、自己資本の質を より重視する国際的な自己資本比率規制「バーゼル3」が13年から段 階的に適用される予定だが、完全導入は19年3月期からで、まだ猶予 期間がある。株式保有比率の10年度の低下幅は生損保の0.6ポイント に対し、都銀・地銀等は0.2ポイントにとどまった。

株売り・債券買い一服のシグナル

日本証券業協会が公表している公社債投資家別売買高によると、 1月は短期証券を除く公社債売買高で生損保の買越額が4110 億円と 09 年9月以来、2年4カ月ぶりの低水準となった。2月の同買越額は 7122億円と前月から増えたが、毎月1兆円を上回るペースで買い越し を続けた昨年後半と比べれば、水準は低い。

東京海上日動あんしん生命保険経理財務部の岳俊太郎次長は、生 損保業界で新しいソルベンシーマージン規制に備えた「対応はだいぶ 進んできている」とし、リスク資産を圧縮する狙いの株売り・債券買 いはひとまず一服したとの認識を示している。

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