【コラム】米銀審査はFRBの戯言、現実は脚注に-Jワイル

米連邦準備制度理事会(FRB)が 実施した最新の銀行ストレステスト(健全性審査)をめぐる最も重要な 点は、その目的が2008年のような金融危機が起きた際に政府の支援なし で米国の大手銀行が生き残れるかどうかを見極めることではないという ことだ。

FRBは今回、仮想の危機が銀行の法定自己資本に与える影響を測 るためストレステストを設計した。自己資本とは、将来の損失を吸収す る金融クッションだ。FRBは法定自己資本も自己資本も変わらないと 思わせたいようだが、実際はかなり違う。似たところがほとんどないと いうのが実情だ。

FRBの言う「包括的資本分析」が、銀行の健全さに関する信頼で きる情報の提供というよりも、広報活動的で安心感を生み出すようなテ スト結果となったのはそうした理由からだ。シティグループは08年に政 府に救済された際、十分な自己資本を備えているとされていた。09年に 破産申請したCITグループも同様だ。

今回のストレステストの対象となった銀行持ち株会社19社のうち、 最低限の自己資本に達しなかったのはシティ、サントラスト・バンク ス、メットライフ、アライ・ファイナンシャルの4社。もし19社全社が 問題なしとされていたら、誰もFRBのテストが信頼に足るものだとは 見なさなかっただろう。

FRBのテストはどれくらいうまくいったのだろうか。アラバマ州 バーミングハムに本社を置くリージョンズ・ファイナンシャルは米金融 安定化プログラム(TARP)からの救済資金の返済を終えていない が、今回のテストには合格した。同社の最新の年次財務報告に付された 脚注が事情を物語っている。

株価上昇

脚注によれば、融資債権の価値は昨年12月末時点でバランスシート (貸借対照表)が示しているより81億ドル(約6800億円)小さいとい う。これに対し、狭義の純資産である有形普通株式株主資本(TCE) は76億ドルだ。つまり融資債権の価値がかさ上げされていなければ、負 債が有価資産を上回ることになり、リージョンズのTCEはマイナスだ ったということになる。端的に言えば、ストレステストはジョークだ。 テスト結果公表後、リージョンズなど大手行の株価は上昇。通期決算 が07年以降黒字化していないリージョンズは14日、普通株発行を通じ9 億ドルを調達した。調達資金は08年に財務省から受け取った35億ドルの 返済に充てるという。

TCEは前回の米銀行危機時に多くの投資家にとって資本の指標と なった。政府の資本対策が信頼性を失ったからだ。リージョンズの自己 資本165億ドルから優先株や無形資産を差し引けば76億ドルという数字 が得られる。より現実的な対応としてリージョンズの残りの純資産を調 整してみたが、危機の際、投資家が気にするのは企業の資産がどれだけ の価値があるかであって、バランスシートが示すものではない。

適正市場価値

幸いなことに各社は、バランスシートに原価法で計上される融資債 権などを含む金融資産と債務の推定適正市場価値(FMV)を示す脚注 を四半期報告に添えることが義務付けられている。こうした調整を織り 込んだとすれば、リージョンズのTCEは昨年末時点でマイナス5 億2500万ドルの価値ということになる。FRBの分析は、企業がFMV の手法をすでに用いている分野を除いて、流動性や市況の変化を考慮し ていない。

リージョンズのグレイソン・ホール最高経営責任者(CEO)は、 FRBの資本審査で同社の「強さが立証された」とコメントしている が、実際にどの程度の強さなのかを知るには、脚注が示すもっと明確な 構図を読み取る必要がある。

連邦当局の支援がなければ、リージョンズは数年前に破綻していた かもしれない。だが今や同社の時価総額は91億ドルだ。FRBが新たな 投資家を呼び込みたいと考えていたのは明らかで、リージョンズの新株 を今週買い入れた投資家は同社の破綻を政府は容認しないと信じてい る。つまりわれわれ納税者はまだ人質となっているというわけだ。 (ジョナサン・ワイル)

(ジョナサン・ワイル氏は、ブルームバーグ・ビューのコラムニス トです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

--取材協力:James Greiff、David Henry.

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