原発事故賠償申請に暗い影-ネット上の匿名批判に怒りの声

東京電力・福島第一原子力発電所事 故から1年経ったが、賠償申請が遅々として進んでいない。以前から批 判されていた賠償申請書の複雑さに加えインターネット上での匿名批判 が暗い影を投げかけている。

大熊町商工会の会長、蜂須賀禮子さん(59)はインターネットの2 チャンネル上の匿名批判に腹を立てている。「たかり町民とかインター ネットで言われているが、こういうふうな生活してれば、全てないのだ から、今からの人生に必要なのはお金だ」と述べた。さらに「家から土 地から全て大事なものは置いてきている。汚染されていて持ってくるわ けにも行かず、働くこともできなければ補償しかない」と訴えた。

インターネット上では「この先、50年以上たかり続けるのか」、 「独自の原発事故たかり用の賠償弁護団を結成」などといった匿名の投 書が掲載されている。

蜂須賀さんは東電の賠償申請についても「年寄りは書き方というよ り出し方が分からない。私は全部娘にやってもらっている」と打ち明け た。蜂須賀さんは今、会津若松市の仮設住宅で暮らしている。

蜂須賀さんは東電の損害賠償に対する姿勢について、「お金を恵ん でやっているんだという感覚でやっているのではないか。そうだとした ら大間違いだと伝えた」と憤りを隠さなかった。

東電への不信感

福島市の仮設住宅に住む元原発配管設計士の大塚正樹さん(52)は 避難区域の双葉町の住民だった。双葉町は避難している町民の賠償請求 を支援するために独自の賠償請求書「やさしい原発事故損害賠償申出 書」を発行した。これを使った場合、直接、賠償請求を行うのではなく 政府の原子力損害賠償紛争解決センターに和解仲介を申し立てる。

東電の賠償申請を使わない理由としては「(申請した)半分以下の ものしか出さないみたいだ」と不信感が強いためだ。同センターは原子 力損害賠償紛争審査会の下部組織で、弁護士などの仲介委員が和解案の 提示などを行う公的機関。

大塚さんは仮払いの100万円を受け取ったが、「こんなんじゃ、生 活の足しにならない」と一刻も早い本払いを求めている。

文科省によると、自主避難の賠償対象となるのは約150万人。東電 は政府から6800億円の支援を受けており、今月2日までに約4282億円を 支払った。そのうち1515億円は個人に支払われた。

支援機構の調査

賠償支援機構は昨年11月19日から今年2月26日にかけて東電への賠 償申請が増えない理由を調査した。調査対象2252世帯のうち、57%にあ たる1279世帯が申請していない。

同機構が3月8日に発表した調査結果によると、未請求の理由とし ては「請求書の内容が理解しにくく、記入できない」が660件と最も多 かった。次いで「東電の賠償金額・基準に納得がいかない」という理由 が407件あった。

東京電力は昨年9月、賠償請求書を約6万部送付した。請求書が56 ページに及び、請求の仕方を説明する小冊子が156ページに達すること から、当初から「分かりにくい。複雑すぎる」との批判があったが、今 回の調査で再び裏付けられた。

原子力損害賠償紛争審査会では「東電が直接交渉で東電基準を固持 するのみで譲歩する姿勢を見せない」、「政府の中間指針で明記されな かった損害の賠償請求については個別具体的事情を検討せずに賠償を拒 否する傾向が顕著」などが指摘された。

東電広報の白石剛士氏は9日、電話で東電としては賠償申請手続き 簡素化に努力しており、昨年10月に追加の案内書を送付したと説明し た。

東電の西沢俊夫社長は、東日本大震災1周年を迎えた11日、「事故 により被害にあった方々に寄り添った迅速、適切な賠償の実現に当社グ ループを挙げて真しに取り組んでいく」との声明を発表した。

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