大震災後も続く「決められない政治」、信頼回復できぬ民主・自民

死者・行方不明者約1万9000人 という未曾有(みぞう)の被害をもたらし、1986年のチェルノブイ リ事 故以来最悪の東京電力福島第一原子力発電所事故をも引き起 こした東日本大震災から一年。国家的危機を迎えている日本で「決 められない政治」への国民の不信が増幅されている。

「民主党、自民党だけではなくてこの国会に関わっている既成 の政党すべてに対する支持が離れていく可能性があると思っている」 -。野田佳彦首相は8日、衆院予算委員会で民主、自民両党の政党 支持率が低迷していることへの危機感を示した。その原因としては 「何かを決められない政治」にあると指摘した。

野田政権の内閣支持率は、毎日新聞が3月3、4両日に公表し た世論調査で1月調査から4ポイント減の28%に下落。民主党への 支持率は3ポイント減の14%、自民党は3ポイント減の13%だった。 NHKの世論調査でも昨年12月以降、両党の支持率は20%を切っ ており、さらに下落傾向にある。

40年以上にわたって日本の政治を研究しているコロンビア大学 のジェラルド・カーティス教授は、震災からの復興と財政健全化とい う国家的危機への対応に直面しながらも政争を続けるこの国の政治 家について「まるで砂場でけんかしている子どものようだ。日本の 有権者は政府をうそつきか無能者だと思っている状況だ」と嘆く。

野田首相は大震災からの復旧・復興、原発事故対応を最重要課 題として挙げているが、被災地からは国政の対応はスピード感に欠 けるとの声が挙がる。消費税増税を柱とする社会保障・税一体改革 も衆院解散時期をめぐる政局の駆け引きの材料となっており、関連 法案成立のめどは立っていない。

がれき処理

震災対応で、取り組みの遅れが特に指摘されているのは2250万 トンに及ぶがれきの処理だ。政府の資料によると、3月5日現在で もわずか6.3%しか最終処分が行われていない。迅速に進めるには被 災県以外の自治体に移動して行う「広域処理」が不可欠だが、原発 事故による放射能汚染を懸念する受け入れ側自治体住民の反対もあ り、進んでいないためだ。

岩手県の達増拓也知事は2月20日のインタビューで、「岩手県 ではきちんと県内で測定して、危険ながれきの処理をお願いするこ とは絶対ないようにするが、放射能に対する一般的な不安はよく分 かるので住民の皆さんが納得するのにある程度の時間がかかっても 仕方がない」と指摘。政府に対しては「一元的な対応で国民の理解 を深め、納得してもらえるようなことを首相の下でやらなければな らない」と訴える。

支援措置

野田首相は3月4日のテレビ出演で、受け入れ自治体への支援 措置を検討していることを表明。震災1周年の11日の記者会見では、 岩手、宮城、福島の3県を除く全都道府県に対し、がれきの受け入 れを文書で正式に要請するほか、がれきを原材料などに活用できる セメントや製紙などの民間企業に協力を求める考えを明らかにした。

これに関連し、藤村修官房長官は12日午後の記者会見で、政府 は13日に野田首相を議長とする災害廃棄物処理の推進に関する関 係閣僚会合を開催すると発表した。その上で「政府としてはこうし た場も活用して一丸となってスピード感を持ってがれきの広域処理 や再生利用を進めていきたい」と語った。

民主党衆院議員を経て岩手県知事になった達増氏は、これまで の国会の復興への対応について「スピード感があったとはいえない」 と苦言を呈す。その上で、「それぞれの政党、それぞれの政治家がそ れぞれの形で復興についてもっともっときちんとビジョンを持って 具体策を様々打ち出していく議論を国会でやらなければならない」 と活発な議論を促している。

消費税

政府は2月17日、消費税率について「2014年4月に8%、15 年10月に10%」へと2段階で引き上げることを柱とする一体改革 の大綱を閣議決定。3月中に法案として国会に提出する方針だ。

政府・民主党は与野党協議を呼び掛けてきたが、野党第1党の 自民党は法案の国会提出前の協議を拒否し、衆院解散を要求。首相 の足元である民主党内からも小沢一郎元代表らが反対する姿勢を示 している。

岡田克也副総理は2月23日のインタビューで、野田内閣への支 持の低迷について「増税を訴えている内閣の支持率が高いはずはな い」と語ったが、自民党が協議に応じようとしないことについて「残 念だ」とも指摘した。

これに対し、自民党の山本一太参院議員は民主党の政策につい て「政権交代を果たしたマニフェストで消費税増税に一切言及して いない。増税法案を出す前にもう一度、国民の信を問うのが当然の 流れだ」と早期衆院解散を要求。

谷垣総裁

もともと消費税増税の必要性を訴えてきた同党の谷垣禎一総裁 は2日、NHKの番組で、消費税増税について「自民党と民主党は 共通で、選挙の後、どちらが勝とうと足を引っ張ることはできない」 と指摘。その上で、「今の議会政治は問題を解決できないという批判 があると思う。私は解散をやって解決できる体制をつくる」とも語 った。

一方、小沢元代表は3月3日に出演したテレビ東京の「週刊ニ ュース新書」で、今国会で消費税増税法案を成立させることに対す る民主党内の情勢について「ほとんどの人が反対だ」と首相をけん 制する。

維新の会

民主、自民など既成政党への不信は、国民が大阪市の橋下徹市 長が率いる「大阪維新の会」に目を向けるきっかけを与えている。 大阪都構想や首相公選制などを掲げる維新の会。産経新聞社とFN N(フジニュースネットワーク)が2月11、12両日に実施した合同 世論調査では、橋下氏の国政進出に64.5%が「期待する」と回答し ている。

同調査では、民主党(16.2%)、自民党(15.5%)に続き、渡辺 喜美代表率いる「みんなの党」が8.4%の支持を集めた。

中央大学のスティーブン・リード教授は、現在の政治状況につ いて、有権者は民主、自民の両党とも良くないと拒絶しているとい う。

自民党の山本氏は、党の現状について「派閥中心主義のイメー ジがまだしみついていて、多くの人が嫌っている。自民党が今のま ま簡単に政権復帰できるとはとても思えない」と分析する。

これに対し、みんなの党の松田公太参院議員は、現在の政治状 況について「今の状況だとなかなか思い通り進まないというフラス トレーションがたまる。やはり政権を取らなくては、ということだ」 と語り、次期衆院選での党の躍進を目指す考えを強調した。

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