ECB総裁:出口戦略への地ならし開始-インフレに再び脚光

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総 裁は8日、ソブリン債危機との闘いで十分な役割を果たし終えたとの認 識を示唆した。記録的な低金利や緊急の流動性措置から、最終的に脱却 するための出口戦略の地ならしを開始した。

ドラギ総裁は、環境は「大きく改善した」と宣言。「ユーロへの信 頼が戻りつつある兆候が数多くある」と指摘し、脚光を当てる先を危機 からインフレの「上振れリスク」へとシフトさせた。ECBは今年のイ ンフレ率が同中銀が上限と見なす2%を上回ると予想。このため、 ECBは政策金利を現行の1%からさらに引き下げることも、2回の長 期オペ(LTRO)で実施済みの銀行システムへの1兆ユーロ(約108 兆円)余りの資金供給を拡大することもないとエコノミストらはみてい る。

ベレンベルク・バンクのチーフエコノミスト、ホルガー・シュミー ディング氏は、ECBは「大幅にハト派色を後退させた。追加の非標準 的措置や一段の利下げを示唆する発言は一言もなかった」とし、「論調 はむしろ、ECBが次に行動する時にはそれが一部の非標準的措置の解 消、あるいは利上げですらあり得ることを示唆している」と語った。

危機対応の異例の措置でECBのバランスシートは3兆ユーロ以上 に膨れ上がった。ドイツ連邦銀行のバイトマン総裁はドラギ総裁にリス クを警告する書簡を送った。ECBは債務危機拡大によってこれまで何 度も出口から引き返すことを余儀なくされてきたが、ドラギ総裁の会見 内容はバイトマン氏と同様に総裁もECB本来の政策への回帰を望んで いることをうかがわせた。

ドラギ総裁は、ECBは「正常で伝統的な中央銀行の政策に戻らな ければならない」と語った。

金利変更は協議せず

ECBはこの日、政策金利を1%で据え置いた。同時に公表した最 新の予想では、今年のインフレ率を平均2.4%と予想。昨年12月時点の 2%予想から引き上げた。ドラギ総裁は、同日の政策委員会では金利変 更が協議されなかったことを明らかにした。「われわれがしっかりと見 つめなければならないのは、われわれの主たる責務である中期的な物価 安定だ」と述べた。

INGグループのシニアエコノミスト、カルステン・ブルゼスキ氏 (ブリュッセル在勤)は「新たなインフレとの闘い宣言は独連銀への配 慮の部分が大きいだろう」が、「この日の会合の後で、少なくとも一段 の利下げは考えられなくなったようだ」と言明した。

ECBは原油価格主導のインフレ加速に見舞われている。一方、ユ ーロ圏17カ国中少なくとも6カ国がリセッション(景気後退)にある。 最新予想では今年の成長率はマイナス0.1%の見込み。従来のプラ ス0.3%予想から引き下げられた。

段階的な回復予想

ドラギ総裁は、見通しには「依然として下振れリスクがあるもの の」最新のデータは「ユーロ圏経済の安定化の兆候を裏付けた」とし、 ECBは今年を通して段階的な回復を予想していると付け加えた。

ECBの予測によれば、13年の成長率はプラス1.1%となりインフ レ率は1.6%に低下する見込み。

ドラギ総裁は2回の3年物LTROについて、債券相場の上昇に寄 与したとし「強力な効果」を指摘した。「経済と金融の環境がこの2回 のオペ後にどう変化したかを正確に見極める必要がある」とし、今や 「改革を続けバランスシートを修復し、回復を支えられるようにする」 のは政府と銀行の責任だと言明した。

原題:Draghi Lays Groundwork for ECB Exit as Inflation Takes Spotlight(抜粋)

--取材協力:Jeff Black、Gabi Thesing.

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