震災復興予算の執行に遅れ、景気回復に影響も-公共事業削減があだ

東日本大震災の復興に向けた予算執 行が遅れている。厳しい財政事情を反映した政府の歳出見直しで公共 事業関係費はピーク時の1990年代後半から半減。建設業界の再編・淘 汰(とうた)が続く中で震災に見舞われた被災地では、就労者不足に 資材高騰が重なり、受注が停滞。15兆円近い関連予算の執行率はほぼ 半分にとどまり、復興需要の景気拡大効果への影響も懸念されている。

「まず人がいない。県内の建設投資は民間を併せても半減し、14 万人いた県内の就労者は10万人を切っていた」。宮城県建設業協会の 伊藤博英事務局長はブルームバーグ・ニュースの取材に対しこう説明 する。人材不足から日当が急騰し、資材高騰も深刻だという。仙台市 内では生コンクリート工場がピーク時の30から14にほぼ半減、単価 が今年1月までの3カ月で約3割上昇した。

結果として、事業者が復旧工事の受注に消極的となり、入札が成 立しない「入札不調」が多発、予算執行の停滞につながっている。国 土交通省によると、今年1月に行われた土木工事の入札のうち宮城県 は32%、岩手県では26%が不成立だった。人材・資機材不足から経費 が高騰し、受注しても赤字になるからだ。これを受け国交省も入札方 法の見直しに踏み切った。

復興庁によると、2011年度1-3次補正予算で確保した復旧復興 関係経費約14.3兆円のうち、今年1月末までの執行率は54.6%の7.8 兆円にとどまっている。信州大学の真壁昭夫教授は予算執行の遅れに ついて「復興需要は心理的要因が大きく、タイミングで効果は違って くる。復興事業の執行が遅れれば、内需喚起のピークは今年の4-6 月期から1四半期遅れる可能性が出てきた」と言う。

経済成長縮小も

国の公共事業関係費は14.9兆円(1998年度)をピークに6.4兆 円(2010年度)と半減した。小泉純一郎政権が02年度予算で1割削 減したのを機に、公共事業削減の流れは一気に進んだ。09年には「コ ンクリートから人へ」の予算配分見直しを掲げた民主党に政権交代。 10年度予算では2割近い削減に踏み切り、政策的経費の5割以上を社 会保障関係費が占めた。

SMBC日興証券の渡辺浩志シニアエコノミストは「復興需要は 今、日本経済推進の頼みの綱」とした上で、成長率について「12年は 復興で1%程度押し上げられるというのが一般的な見方だが、それが 小さくなるリスクはある」と指摘。さらに「旧態依然とした公共投資、 インフラ投資の部分がボトルネックになり、復興が進んでいないのは、 政府にとって不幸な話だ」と話す。

政治の足踏み

政治の混乱による遅れも否めない。「復興行政」を司る復興庁が発 足したのは、震災から1年近く経った先月10日。震災時に政権を担っ ていた菅直人前首相が与野党内の反発から野田佳彦首相に交代するな ど、政治空白もあり時間を空費した。本格的な復興関係費9.2兆円が 計上された3次補正の成立も昨年11月にずれ込み、柱となる「震災復 興交付金」の一部は今月2日に交付されたばかりだ。

同交付金は総事業費約1.9兆円(国費約1.6兆円)。地方交付税交 付金も合わせて全額国負担で復興街づくりを支援する。今回、復興庁 が被災7県に配分したのは全体の1割強の事業費約3000億円(国費約 2500億円)で、災害公営住宅整備の整備事業費約1400億円がほぼ半 分を占めた。住民の意見集約が難しい高台移転などの促進事業は約80 億円にとどまった。

国交省によると、高台移転の対象となるのは津波被害を受けた岩 手・宮城・福島の3県32市町村のうち約220カ所・3700ヘクタール (今年1月時点)と広大だ。このうち住民の合意を得たのは岩手県野 田村など10カ所程度。ほとんどが測量や設計の段階で、本格的な工事 着工に踏み出せるのは来年度中に数件程度にとどまり、残りのほとん どは13年度以降になるという。

みずほ総合研究所の山本康雄シニアエコノミストは、3次補正の 執行が順調にいけば「今年1-3月期から復興需要が出てくる」とし、 12年度成長率の押し上げ効果は0.8%から1%程度と予想。一方で、 高台移転など困難を伴う事業も多く、「需要の出方によっては景気シナ リオに影響が出る可能性もあり、金融政策などを考える上でのポイン トになる」としている。

窓口業務で手一杯

津波被害を受けた宮城県石巻市出身の安住淳財務相は今年1月末、 予算の執行状況を調査するため主計局の職員のべ10人を派遣した。同 省としては初めての試み。財務相は先月24日の記者会見で、執行の遅 れは「発注する側と受注する側の人手不足に尽きる。自治体は窓口業 務で手一杯。地元の建設業者は目一杯仕事をしても人の手当がつかな い」と被災地の窮状を訴えた。

総務省が先月17日に発表した被災自治体への他自治体職員の派 遣状況調査(昨年3月11日から今年1月4日まで)によると、被災地 以外からの派遣人数は延べ約7万9000人に上る。現在の派遣人数は都 道府県や政令指定都市、市区町村の職員計804人。同省には来年度以 降も「土木」や「建築」の専門職を中心に500人超の人材派遣要請が 入っているという。

平野達男復興相は先月15日の衆院予算委員会で予算執行の遅れ について「被災自治体の職員が十分でなかった。自治体によっては3 分の1程度の職員が被災している。職員の手当てを鋭意やっているが、 遅れているのは否めない」と説明。人材不足による事務処理能力の低 下を補うため、被災地外の自治体からの職員派遣など対応策を急ぐ考 えを示した。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE