日本は財政難から3-5年で円安、長期金利3%へ-伊藤隆敏東大教授

東京大学大学院の伊藤隆敏教授はブ ルームバーグ・ニュースのインタビューで、財政悪化により「3-5 年で日本に対する信頼が失われ円安に向かう」と指摘、いずれ国内の 資金余剰が枯渇し、日本銀行以外に国内の買い手がいなくなって国債 を円滑に消化できなくなり、長期金利は「一気に3%まで跳ね上がる」 との懸念を示した。

伊藤教授は1999-2001年に大蔵省(現財務省)副財務官を務めた ほか、06-08年に政府の経済財政諮問会議の民間議員も務めた。イン フレ目標政策の主唱者で、08年3月に自民党政権が日銀副総裁に推し たが、野党民主党の反対により参院で否決された経緯がある。インタ ビューは5日に行った。

教授は、国内余剰資金で国債消化が難しくなった場合は、日銀が 消化するか、外国人投資家の購入に頼るしかなく、「ギリシャ化の始ま り」につながると指摘。以前インフレ目標達成の手段として日銀によ る長期国債の大量購入も主張したこともあったが、「国債を買って市中 に出回るお金がリスク資産に向かえば大きな意味があるが、今は財政 が悪過ぎる」と否定的見解を示した。

理由として「予算の半分を国債の新規発行で賄っているような国 はあり得ない。ここ3年くらいは財政の罪の方が大きい。ここで財政 が立ち直らないと相当まずいことになる」と指摘。「政府が増税や歳出 削減を行うのと引き換えに、日銀が国債を大量に買うというような信 頼関係が醸成できれば良いが、日銀がどんどん買うことで政府が安心 し、もっと国債を発行するような状況は避けたい」と述べた。

伊藤教授は「そういう意味では、無条件でどんどん国債を買えば 良いという主張に対し、私は、今はくみすることができない。国債以 外に何か買えるものを考えた方が良い」と語る。

国債購入で「物価1%」達成遠い

教授は日銀が先月打ち出した物価安定の目途(めど)については 「米連邦準備制度理事会(FRB)がやったことを後追いしている感 じが拭えない」と指摘。「これがインフレ目標だとすれば、日銀はこれ までインフレ目標を導入しない理由の1つとして、FRBがやってな いことを挙げてきたわけだから、それが崩れた途端に自分たちもやる と言うのは、ちょっと寂しい」と語る。

日銀が物価1%上昇を目指すと宣言したことで、これまで大胆な 金融緩和には消極的と見られていた日銀が変わったのではないかとの 期待も出ている。伊藤教授は「本質的に何かが変わり、積極的に金融 政策の枠組みを変えて、何が何でも1%を達成しようというふうに変 わったのか、私にはちょっと分からない」と述べた。

さらに、日銀が同時に決めた資産買い入れ等基金の増額に対して も「55兆円から65兆円に増やすだけではあまり大きな効果は期待で きない」と表明。日銀は増額分全てを満期まで短い長期国債の買い入 れに充てており、今後も1%の物価上昇が展望できるまでさらに買い 増す可能性もあるが、「国債を買うことで、物価の上昇にたどりつく波 及経路はかなり遠い」という。

説得力のある説明が必要

資産買い入れ等基金には指数連動型上場投資信託(ETF)や不 動産投資信託(J-REIT)などリスク資産も含んでいる。伊藤教 授は「ただ単にETFやREITを買うということでは、なかなか期 待は変わらないし、逆に中央銀行が則(のり)を外すというか、説明 がつかないと受け取られてしまう可能性がある」という。

伊藤教授は期待を変えるには説得力のある説明が非常に重要だと 訴える。「期待が変わらなければ賃金や物価の変化も期待できない。皆 がデフレ予測を持っていれば賃金も下がるし、価格も下落する。いわ ゆるデフレの自己実現的な期待が生じてしまう」と指摘。一番重要な のは「今回は変わったということを説得的に示すことだ」という。

外債購入も「やれないわけではない」

日銀による外債の購入についても「やれないわけではない」と語 る。「介入権限を誰が持っているのかという話になると、非常にややこ しく、財務省と日銀の微妙な関係が障害になる」と指摘。しかし、「た とえば欧州救済のために、日銀が円を刷ってユーロに替えて欧州金融 安定ファシリティ-(EFSF)債を買うということであれば、それ は介入ではないと言い張れないことはない」という。

その上で「せっかく1%という数字を出したのだから、達成には 何が有効か考え、こういう手段があり得ると説明することが非常に重 要だ」と指摘。「物価安定の目途もそうだが、政治に強制されてやると いう印象を持たれるは最悪だ。押せばもっと動くと思われると、目標 に対する信頼も失われ、行き過ぎてしまうリスクもある」と語る。

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