安全性に国際的お墨付き得るのは1年以上先-昼食に不安残る幼稚園

仙台市近郊の桜木花園幼稚園の昼食 時。5歳児が元気に廊下を駆け回るが、鎌田順子園長は昼食が完全に安 全かどうか、確信が持てないでいる。東京電力・福島第一原子力発電所 事故後の放射能の影響を独立機関として世界的に初めて評価する国連科 学委員会(UNSCEAR)の報告書が出るのは1年2カ月以上先だか らだ。

昨年3月11日の東日本大震災で起きた福島第一原発事故後、園 児198人が通う桜木花園幼稚園の保護者は、幼稚園の給食が放射能に汚 染されていない確証を求めている。

鎌田さんは放射能に関する情報はあまりにも多過ぎて何を信じてい いのか分からないと言いながら、政府と独立系機関から出された2つの 報告書を見せる。「どちらを信じたらよいのか。言っていることが違っ ている報告書が多過ぎる」と当惑している。

UNSCEARのボルフガンク・ワイス委員長はウィーンからの電 話で、放射線の影響に関する国連科学委員会が2013年5月に発表する予 定の報告書について、放出された放射性物質の総量を試算し、その後、 子供の健康にどのように影響するかの調査報告を出す方針と述べた。

ワイス氏は「大きな事故で人々が不安を感じ、疑心暗鬼になってい ることは分かる。この膨大な作業はデータを読み込み分析するものだ」 と述べた。

交錯する情報

政府の推定する放射性物質の放出総量は海外機関が出したものより 最大で77%少ない。日本の試算は事故後、すでに2度にわたって修正さ れている。

独立行政法人放射線医学総合研究所(放医研)規制科学調査プログ ラムの米原英典部長は、UNSCEARの報告について、日本政府だけ ではなく他の国際的なコンセンサスのある情報源に基づくものであるた め、重要だと述べた。放医研もUNSCEARに情報を提供している。

ワイス氏によると、1986年のチェルノブイリ原発事故調査経験者を 含む18カ国の業界関係者、科学者ら約60人が昨年10月から調査を開始 した。

この調査が一般に公表されるのは、国連科学委の承認を得た後の13 年10月になる予定。UNSCEARはチェルノブイリ原発事故の報告書 も出している。

ワイス氏は福島第一原発事故について、チェルノブイリに比べ被害 区域は10分の1で、避難区域外には危険なウランやストロンチウムの大 量放出が避けられたことから、国際基準での評価が最悪の「レベル7」 になったことは「誤解を招きやすい」と指摘した。

放射性物質の放出量見込み

経済産業省原子力安全・保安院が2月の意見聴取会で示した試算で は、福島第一原発事故により1-3号機から放出された放射性物質の総 量はセシウム137が8200テラベクレル。これはチェルノブイリからの同 物質の放出総量の約9.6%に当たる。昨年10月20日付の大気化学・物 理学ジャーナルに掲載されたノルウェー大気調査研究所の研究は3万 5800テラベクレルのセシウム137が福島第一原発から放出したと試算し ている。

日本原子力研究開発機構・安全研究センターの本間俊充センター長 は、放出線量の見込みで食い違いが出ることについて、原子炉内の温度 データがないなど不確かなことが多いためと語った。本間氏は、正確な 総放出量を算出するためには原子炉内の状態をチェックする必要がある ため、全てのデータを集めても正確な数字は出ないかもしれないと述べ た。

本間氏によると、特に難しいのは福島第一が面している海洋に流出 した放射線量の試算。東電は4月1日から6日までの5日間で940テラ ベクレルのセシウム137を含む汚染水が流出したとしている。東電は大 気に放出された総量の試算をまだ出していない。

最高被ばく線量

福島第一原発の作業員の最高被ばく線量は680ミリシーベルトで、 発がんリスクが高まり始める数値の約7倍。ワイス氏によると、地元の 住民の被ばく線量は「20-25ミリシーベルトを下回っており、ほとんど がもっと低く5ミリシーベルトを下回る」との見込みを示した。「これ が正しければ、地元住民に目立った発がんリスクの上昇はないだろう」 と述べた。

桜木花園幼稚園では大震災時の津波で被害にあった教室は補修され た。鎌田さんは「幼稚園はきれいになったが、すぐには再開できなかっ た。いろいろな面でよくはなっているが、やはり一番気になるのは放射 能と食品だ」と話す。

原題:Children Wait Another Year for Radiation Study After Fukushima

--取材協力:Kanoko Matsuyama、Stuart Biggs.

淡路毅 +81-3-3201-2107 tawaji@bloomberg.net

堀江広美 Hiromi Horie +81-3-3201-8913 hhorie@bloomberg.net

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE