全日空社長:国際線拡充狙う、モスクワ検討-B787投入も

次世代中型旅客機「ボーイング78 7」(ドリームライナー)を現在世界で唯一保有する全日本空輸は、国 際路線の拡充を目指している。B787使用も念頭に入れたモスクワへ の路線開設、同社加盟の国際航空連合各社との共同事業(JV)や路線 網利用を検討している。

同社の伊東信一郎社長は、ブルームバーグ・ニュースのインタビュ ーで、B787で首都圏空港と欧州を結ぶ路線の候補地のひとつとして 「モスクワは飛ばなければならない地点だ」と述べた。従来の候補地と してはブリュッセルとチューリッヒを挙げていたが、モスクワを加えて 欧州路線のネットワークを強化する。

同社の欧州路線は、羽田国際空港-フランクフルト、成田国際空港 -フランクフルト、ロンドン、パリ、ミュンヘンの5路線で合計週35 便。モスクワ線を加えることで、豊富な天然資源などを背景に高い経済 成長を続けるロシアを路線網に取り込み、ビジネス・旅行需要を掘り起 こしたい考え。ライバルの日本航空は現在、成田-モスクワ線を運航中 で、B787が納入され次第、同路線へ投入する方針を表明済み。

全日空が米ボーイングと共同開発したB787は、炭素繊維複合材 を使用して軽量化し、従来の同サイズの飛行機よりも燃費効率が約2割 向上するとされている。伊東社長は「ゲームチェンジャー」と呼び、競 争環境を一変させる可能性を秘める同機に期待を寄せている。全日空は その長所を最大限に生かすため、短距離路線よりも欧州や米国などの長 距離路線に積極活用する戦略を進める。

同社は、昨年11月からB787を国内線で運航開始。国際線では 1月から羽田-フランクフルト線を就航しているほか、2012年度下期に は成田-米シアトル、その後サンノゼ線も開設する予定。伊東社長は欧 州の新たな路線開設の時期については、B787の納入具合などを見極 めなければならないとしたものの、モスクワ路線についてはB787に こだわらず就航を優先したいとの意向を示した。

欧州で共同事業を強化

全日空はB787を、国際線中心に活用するため、11年度に6機、 12年度に14機、13年度に7機をそれぞれ導入し計27機とする計画。 同社は向こう5年で計55機導入する方針だ。

同社はまた、航空連合のスターアライアンス加盟社との共同事業で 路線を拡充し、収益拡大を図りたい考え。全日空は、関係各国の航空当 局から独占禁止法の適用除外の認可を受け、昨年4月に米ユナイテッ ド・コンチネンタル・ホールディングス傘下のユナイテッド航空とコン チネンタル航空、10月には独ルフルトハンザグループのルフトハンザ航 空と共同事業を開始している。

共同事業では、独禁法適用除外により収入プール制を採用すること で、共同運賃設定や共同販売、ネットワークスケジュール調整が可能と なる。

驚くほどの効果

伊東社長は、共同事業の効果の一例として、成田空港で11年10月 -12月の全日空の国際線接続旅客数が、前年同期比67%増の約10万人 になったことを挙げた。同事業の成果について「びっくりするほどの結 果。東日本大震災の落ち込みの中でも、われわれの太平洋・アジア路線 はあまり影響を受けなかった」と述べ、「成田空港が米国とアジアを結 ぶハブ空港として機能している」と指摘した。

同社長によると、ユナイテッドとコンチネンタルとの共同運航によ る全日空運航便の旅客数は、昨年4-11月で前年同期の2.7倍となった。 しかし欧米2社との共同事業が「完全に完成しているわけではない」と 述べ、今後、より強化する方針を示した。

さらに伊東社長は、欧州路線ではルフトハンザ航空以外のエアライ ンとの共同事業は現時点で考えていないという。しかし、将来的に「ル フトハンザの関連企業であるスイスインターナショナルエアラインズオーストリア航空ブリュッセル航空などとも共同事業を進める可能性 を否定はしない」と欧州での事業拡大の構想を示唆した。

B787は「アジアは中長距離投入」

B787は全日空の事業拡大に向けた有力な航空機だ。伊東社長に よると、同機を投入した国内線は、概ね従来路線比で10%以上搭乗率が 高い。同機の投入後、「少し不具合が出たりしたが初期の段階では想定 の範囲内だ。顧客の評判は、乾燥しない、空間が広い、寝やすいなど概 ね好評」という。フランクフルト便については、例年需要が低迷する2 月でも「ビジネスクラスも含めて好調で8割の搭乗率だ」と語った。

伊東社長は、B787を活用した戦略としてアジア路線については、 中長距離のアジア地域への投入を示唆し、アジア路線と太平洋路線のネ ットワークを拡充することで、アジア地域の経済成長で生じる人の流れ をうまく捉えることに商機を見出すとの考えを示した。ただ、伊東社長 は、具体的なアジアの就航候補地については言及しなかった。

同社は昨年10月、同機の世界最初の営業飛行として香港へのチャ ーター便を運航した経緯があるが、具体的なB787の投入路線は発表 していない。ライバルの日航は、アジアでは既存路線の成田-デリー、 北京の機材をことしにはB787に差し替える計画だ。

ドイツ証券の安藤誠悟シニアアナリストは「全日空の欧州路線の計 画は、今まで就航していなかった路線が中心であり、新規就航後も従来 の高い国際線のロードファクター(有償座席利用率)である70%から 75%をキープしていくことは可能」との見方を示す。また同氏は、モス クワ便の就航検討は、「既に日本から進出している自動車関連や商社な どもあり、需要の確保は十分可能だ」と語った。

全日空グループが2月に発表した13年度までの経営戦略では、欧 米長距離路線とアジア路線を中心として国際線の生産量を11年度比 22%増とする方針。同時に1000億円規模の構造改革にも取り組み、13 年度に売上高1兆5600億円、連結営業利益1300億円として、「アジア No1のエアライングループ」を目指すとしている。

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