米欧に債権者の反撃、「ねずみ講」に引っ掛かるカモがいない

「国家は破産しない」は米シティグ ループの前身、シティコープの最高経営責任者(CEO)を務めた故ウ ォルター・リストン氏の持論だった。同氏によれば、「国は借金より資 産の方が多い」からだ。

しかし、国はどうも借金を返済しない傾向がある。シティもアルゼ ンチンや1980年代の他の国のデフォルト(債務不履行)で痛い目に遭っ ている。

米欧諸国は今、この恥ずべき歴史を繰り返そうとしている。真っ向 からのデフォルトにせよ、インフレによって債務から逃れる作戦にせ よ、これは変わらない。フィリップ・コガン氏は「Paper Promises(仮 訳:紙の約束)」で、債務危機が世界経済の秩序を崩すかもしれないと 論じる。

「過去40年に積み上がった膨大な債務が全額返済されることは不可 能で、返済されることはない」と著者は言い切る。「ギリシャとアイル ランド、ポルトガルの債務危機は始まりに過ぎない」と指摘する。

人口高齢化の中、借り入れで財政を回している欧米の「ねずみ講に 引っ掛かるカモはいなくなりつつある」という。長期的な借り換え計画 にこれを織り込んで考えてみよう。

エコノミスト誌の金融コラム、ボタンウッドのコラムニストでもあ る著者は、金融アルマゲドンを予言するにはあまりに冷静だ。ただ、同 氏はリーマン・ブラザーズ・ホールディングス破綻並みの重大な転換点 を予想する。これは相場暴落と鉱工業生産の急減、企業破産を伴うと予 言されている。

ネアンデルタール人

債務不履行というものは、ネアンデルタール人がわれわれの遠い祖 先にこん棒を返すのを忘れた大昔からある。コガン氏が言うように、経 済の歴史は借り手と貸し手の葛藤に満ちている。これは通貨というもの を交換の手段とみる借り手と価値保存の道具とみる貸し手との闘いなの だ。

この闘いの勝者は数カ月や数年ではなく、数十年を経てようやく決 まるという。筆者はこの戦場のツアーガイドとなって、ジョン・ローに よるフランス初の紙幣発行という実験からバーナンキ米連邦準備制度理 事会(FRB)議長の量的緩和まで、読者を連れて歩く。

金本位制にサー・アイザック・ニュートンが果たした役割やドイ ツ、ワイマール共和国のハイパーインフレ、ブレトンウッズ会議へとツ アーは進む。

1971年にブレトンウッズ体制が崩れた後は、借り手が優位になっ た。マネーが金から解き放たれると、借り入れは爆発的に増えた。

3つの可能性

そんなお祭りがいつまでも続くはずがない。これが過去40年のバブ ルと破裂の繰り返しの理由だ。あまりに多くの国が同時に債務を積み上 げてしまった今、世界最大の債権者、中国が反撃を開始する舞台は整っ た。

人口高齢化や医療費負担増大に直面する先進国が債務を全額返済す る可能性は低い。著者は米欧社会の選択肢を冷静に検討し、3つの可能 性を提示する。インフレ、停滞、デフォルトの3つだ。

どれが現実になるかは問題でないという。著者は「重要な点は、債 務が実質的に全額返済される可能性は低いということだ」と強調する。

そうなれば2008年に匹敵する危機が訪れる。過去が参考になるとす れば、「国際経済システムの根本的な再構築」が起こるとみられる。

通貨システムは勝者が設計する。英国から米国へ、そして次のシス テムは恐らくアジアに有利なものに仕上がると著者は予想。「10年以上 かかるかもしれないが、新秩序が出現するだろう。欧米のスーパーマー ケットで売られている多くの商品と同様に、新秩序は『メード・イン・ チャイナ』となるだろう」と著者は予言した。(ジェームズ・プレスリ ー)

(プレスリー 氏はブルームバーグ・ニュースの書評家です。この 書評の内容は同氏自身の見解です)

原題:Euro Defaults Loom as Ponzi Scheme ‘Runs Out of Suckers’: Books

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