ウォール街から中国の銀行へ-有能なバンカーの争奪戦が激化

ジェーソン・ボイヤー氏は昨年5 月26日、香港中心部の繁華街にあるレストランで、黄金色に輝く照明の 下、60米ドル(現在のレートで約5000円)のコース料理を食べながら、 友人にウォール街を去ることを打ち明けた。

金融サービス会社、米キャンター・フィッツジェラルドの香港事務 所の責任者だったボイヤー氏が友人のディディエル・ベンサドーン氏に 明かした移籍先は、聞き慣れた競合企業ではなく、中国が出資するブテ ィック型銀行だった。この銀行の国有のパートナー企業では、昨年6月 の中国共産党創設90周年を、従業員が革命歌を合唱して祝った。

ボイヤー氏(42)はインタビューで「私がキャンターを退社すると 聞いて皆驚いていた。今回の移籍は世界の進化に伴うものだ。世界は次 の段階に進んでいる」と話す。

ボイヤー氏と同僚の計4人は同じ日にキャンターを退社し、リオリ エント・ファイナンシャル・マーケッツに入社した。この後、キャンタ ーは、背信行為により共謀して同社に損害を与えたとして、これらの元 社員を提訴。香港高裁は2月29日、キャンターの損害賠償請求を退け た。

この裁判は、中国の金融機関が優秀な人材獲得に向け攻勢を強めて いる現状を浮き彫りにしている。これらの金融機関は、中国の国家資本 主義と国際市場の懸け橋となれるベテランバンカーをウォール街の有力 企業から引き抜くため、給与を引き上げヘッドハンターの活用を進めて いる。

一方、バンカーの側も世界2位の経済国である中国に魅力を感じて いる。同国では国有資産の解体や売却が進み、巨大企業が国外でのM& A(合併・買収)を強化している。プライベートエクイティ(PE、未 公開株)投資会社A・キャピタル(北京)によると、海外直接投資 は2011年に10年前の10倍の680億米ドルに達した。

追い風

人材スカウト会社コーン/フェリー・インターナショナルのシニア パートナー、C・K・ワン氏(香港在勤)は「中国の銀行は積極的で、 成果を挙げている」と指摘。「これらの銀行は他行がアクセスできない 顧客を擁しており、それがシニアバンカーを引き付ける」と語る。

中国5位の銀行、交通銀行の海外証券部門、、交銀国際控股の執行 部ディレクター、ワン・ドン氏は電子メールで、同社が優秀な人材を香 港で獲得するため給与を引き上げていることを明らかにした。交通銀の 胡懐邦会長(上海在勤)の10年の報酬は78万8000元(現在のレートで 約1010万円)。ボイヤー氏によると、これはキャンターでの同氏の1カ 月当たりの給与10万米ドルをわずかに上回る水準だ。

中信証券(CITIC証券)傘下の中信証券国際の人事責任者、エ レイン・ウォン氏によると、同社は過去数年間、国際的な人材採用を年 間5%増やしている。競合する多国籍企業で人員削減が進められている ことが採用の追い風になっているという。

原題:Wall Street Talent War Seen as Cantor Bankers Defect to China  (抜粋)

参考画面:

堀江 広美 Hiromi Horie +81-3-3201-8913 hhorie@bloomberg.net

Editor: Takeshi Awaji 記事に関する記者への問い合わせ先: Hong Kong Shai Oster +852-2977-4615 soster@bloomberg.net; Hong Kong Debra Mao +852-2977-6425 dmao5@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先: Neil Western +852-2977-6453 nwestern@bloomberg.net; Douglas Wong +852-2977-6451 dwong19@bloomberg.net

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE