円が1カ月ぶり安値、31年ぶり貿易赤字で日本経済の先行き警戒

東京外国為替市場では円が続落、 ドルやユーロに対して約1カ月ぶり安値を更新した。昨年の日本の貿易 収支が31年ぶりの赤字となったことで、将来、経常収支が赤字転換し 、国内での国債消化が困難になるなど日本経済の先行きに対する警戒が 強まった。

円は対ドルで一時、1ドル=77円98銭まで下落し、昨年12月 29日に付けた安値(77円99銭)に接近。対ユーロでは一時、1ユー ロ=101円56銭を付け、前日の海外市場で付けた同28日以来の安値 を塗り替えた。午後3時32分現在はそれぞれ77円94銭、101円50 銭前後。

野村証券金融市場調査部の池田雄之輔チーフ為替ストラテジストは 「もともとリスクラリー的になってきていて、リスクラリーと言えば本 来円安、というのが少しずつはあったと思う」と指摘。そうした中、ユ ーロ相場がここにきて少し落ち着いてきたため、海外投資家が好む「日 本の貿易赤字や財政リスク、それに絡めた早期の格下げの可能性」をテ ーマに円安への動意が強まったと説明した。

ユーロ・ドル相場は1ユーロ=1.30ドル台前半と3週間ぶりのド ル安値圏でもみ合い。ギリシャの債務交換協議の行方が引き続き焦点と なる一方、この日は米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表があ り、今回初めてメンバー17人全員の政策金利予測も公表される。

池田氏は、米国の利上げ時期については「どう考えても基本は 2014年」だとし、「ものすごいサプライズがあるとすれば、FOMC メンバーの予測分布だが、普通に考えれば無風で、より注目すべきはバ ーナンキ議長の会見の方だ。QE3(量的緩和第3弾)に対する示唆が どちらに出てくるかによってユーロや豪ドルなどリスク通貨はそれなり に動く可能性がある」と話した。

31年ぶりの赤字

財務省が25日発表した貿易統計速報(通関ベース)によると、 2011年の日本の貿易収支は2兆4927億円の赤字と、通年では31年ぶ りのマイナスに転落した。東日本大震災や世界経済の減速、歴史的な円 高などを背景に輸出が減少した一方、原子力発電を代替する火力発電向 け液化天然ガスや原油などの輸入が急増した。12月は2051億円の赤 字で、赤字は3カ月連続となった。

バークレイズ銀行チーフFXストラテジストの山本雅文氏は、貿易 収支の赤字転落について、「『日本の赤字がさらに拡大して経常赤字に なるのではないか、そしてその場合は日本の国債の国内ファイナンスが 難しくなる』という連想につながりやすい」とし、そうした思惑が「海 外投資家を中心とした円安センチメントを強めている」と説明した。

その上で、山本氏は「1月は季節的に貿易収支が赤字化しやすく、 仮に貿易赤字額が通常の所得収支の黒字額を上回るようだと円安センチ メントを強める可能性がある」とし、「今後貿易収支に関しては注目度 が高い状態が続くだろう」と語った。

一方、野村証の池田氏は、今後のドル・円相場の展開について、 久々の円安水準で日本の輸出企業なども出てくるし、「肝心要の米国の 利上げというドル・円にとっても最も重要な円安要因がどうしてもない 」とし、「日本の投資家や企業にとってみると『いつもの円安トライで うまくいかないだろう』という気持ちがあるので、どうしても戻り売り ということになってしまう」と指摘。ただ、市場では円安方向を試した い向きのマグマが溜まりつつあるようにも見えるとし、「目先はドル・ 円が上振れるリスクがあるのかなという気はしている」と語った。

FOMC

ブルームバーグの調査によると、FOMCは25日に政策金利のフ ェデラル・ファンド(FF)をゼロから0.25%の誘導目標を維持する とみられている。

FOMCはワシントン時間午後0時半(日本時間26日午前2時半) に声明を発表。午後2時にはFOMCメンバーが示した政策金利見通し が初めて発表され、午後2時15分からはバーナンキ議長が記者会見を 開く予定だ。

バークレイズ銀の山本氏は、政策金利見通しについて、「おそらく 市場で現在持たれている期待を是正しようというようなことは意図して いないと思うので、そういう意味では14年初めぐらいに利上げが開始 されるといったような期待を大きく修正するような内容にはならないだ ろう」と予想した。

一方、欧州では引き続きギリシャの債務交換交渉の行方が焦点とな っている。欧州委員会のマルコ・ブーティ経済金融総局加盟国経済局長 は24日、民間債権者との自発的な合意が時間切れとなった場合、欧州 当局者はクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の決済につなが るギリシャのデフォルト(債務不履行)を検討する必要が生じる可能性 があるとの見解を示した。

三菱東京UFJ銀行シニアカレンシーエコノミストの武田紀久子氏 (ロンドン在勤)は、24日発表のユーロ圏の景況感指数が改善したこ とで、ユーロ圏の景気が「このまま大底割れをしていくという恐怖感」 が和らいだとし、「極めて神経質かつ深刻な状況にあるというのはまっ たく変わらないが、それがネガティブスパイラルに悪くなっていくとい う状況ではあながちない」と指摘。半面、ギリシャ債務交渉は今なお合 意に至っておらず、今月30日の欧州連合(EU)首脳会議まで「出て くる材料を追いかけるしかない」と話した。

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