活発化する日本企業の海外M&A、10兆円政府融資枠まだ発動せず

日本企業による海外でのM&A(企 業の合併・買収)が活発化、昨年の投資額は円高などを追い風に少なく とも2000年以来の規模となった。しかし、政府が外国為替資金特別会計 のドル資金を活用する形で導入した外国企業買収などへの融資支援策 は、24日現在でまだ具体的な案件への発動には至っていない。

政府は、海外でのM&Aやエネルギー資源開発を対象に、国際協力 銀行(JBIC)が外為特会からのドル資金の融資を受け、最大10兆円 規模で低利融資する制度を、今年9月末までの1年間の時限措置として 設けた。民間資金の外貨転換(円投)の呼び水とし、円相場を安定化さ せる効果も政府は期待している。

ブルームバーグ・データによると、日本企業による昨年の海外企業 の買収額は約6.8兆円に上り、データが得られる過去12年のうちで最高 となっている。一方、政府の融資制度を所管する財務省開発政策課の岡 村健司課長はブルームバーグ・ニュースの取材に対し、複数の企業が M&A融資の活用を検討しているが、契約には至っていないと述べた。

外為特会には、為替市場への介入で買ったドル資金が積み上がって いる。円の対ドル相場は昨年10月末に1ドル=75円35銭の戦後最高値を 付けた。急激な円高は輸出産業の収益を直撃。産業界からも対応を求め る声が強まった。政府・日銀は、3月の東日本大震災直後に主要7カ国 (G7)各国と協調し11年ぶりに介入を実施。8、10月にも介入に踏み 切ったが、円相場は高止まりが続いている。

アールビーエス証券の西岡純子チーフエコノミストは、政府が再度 介入を実施する可能性があると指摘する一方、企業を国内への投資に駆 り立てる要因はあまりないと話す。

企業の手元資金

企業の手元資金は潤沢だ。ブルームバーグ・データによると、東京 証券取引所のTOPIX銘柄企業の手元資金は97.8兆円で、3年前 の79.5兆円から増加した。こうした資金余力が買収を後押ししている。 武田薬品工業は昨年、スイスの医薬品メーカー、ナイコメッドを買収 し、完全子会社化した。買収額は96億ユーロ(約9900億円)で、日本企 業が昨年実施した海外企業の買収では最大だった。

一方で、スタートしたばかりの政府のM&A融資制度に対する様子 見姿勢もうかがわれる。キリンホールディングス広報担当の山本冠氏 は、大枠の仕組みは理解しているとしながらも、実際の例がないことな どからノウハウがしっかり出来上がっていないと話す。同社は昨年、ブ ラジル2位のビール事業会社スキンカリオール・グループの株式をジャ ダンジル社から取得し、100%子会社化している。

--取材協力:占部絵美 Emi Urabe、Yusuke Miyazawa、Lily Nonomiya. Editors: 小坂紀彦, 谷合謙三

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