ユーロが円・ドルより高収益、キャリートレード-ECBの金融緩和で

ユーロを借り入れ、高金利通貨な どで運用するキャリートレードのリターン(投資収益率)が好調だ。欧 州債務危機の深刻化でユーロ圏が3年間で2度目のリセッション(景気 後退)の瀬戸際にある中、欧州中央銀行(ECB)は追加の金融緩和に 追い込まれる可能性があり、ユーロは調達通貨としての魅力を増してい る。

ECBが2年半ぶりに利下げに踏み切った昨年11月以降、ユーロ を調達通貨とするキャリートレードは、円やドルを調達通貨とした場合 のリターンを上回っている。ブルームバーグ・データによると、ユーロ で資金を調達し、オーストラリア、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、 韓国の通貨バスケットで運用した取引の11月以降のリターンは23日 時点で8%。調達通貨を円にした場合のリターンはマイナス0.2%、ド ルの場合はプラス1%だ。

キャリートレードが行われるには、調達通貨と運用通貨間で安定的 な金利差が存在し、ボラティリティ(相場変動率)が落ち着いているこ とが必要条件となる。また、為替差損を被らないために、調達通貨が下 落基調にあることも重要だ。ユーロは今月、対ドルで約17カ月ぶり安 値まで下落、対円では約11年ぶり安値を付けた。

オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)の世界市場調査 責任者、ティム・リデル氏(シンガポール在勤)は、「欧州当局がユー ロ安回避に動くとは考えにくく、従ってユーロキャリートレードはより 魅力的になる」と指摘。ドルや円といった実質ゼロ金利の他通貨が直面 している経済成長はユーロより「まし」だと言う。

利下げ余地

ECBは昨年12月に2カ月連続で政策金利を引き下げ、過去最低 に並ぶ1%とした。ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査による と、今年1-3月(第1四半期)にはさらに0.75%へ引き下げる見通 しで、一部エコノミストは0.5%までの利下げを予想している。

スコシア・キャピタルのストラテジスト、サッシャ・ティハニ氏 (香港在勤)は、「われわれはECBが3月末までに0.5%の利下げを 行うとみており、このようなシナリオの下、ユーロでの資金調達はさら に安くなる」と説明。「流れを一変させるような大きな展開がなければ 、ユーロに対して強気になるのは難しい」とみる。

米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は今月 13日にフランスなどユーロ圏9カ国の格付けを引き下げた。ギリシャ に端を発した債務危機はスペインやポルトガルなどの周辺国のほか、イ タリアやフランスなどの中核国にも波及。当局の対応が後手に回る中、 1-3月期にはイタリアの大量償還などが予定されており、債務問題は 一つのヤマ場を迎える。

リセッションに直面

世界銀行は先週、ユーロ圏のリセッションが新興諸国の景気減速を 増幅させる恐れがあると指摘した。17日発表の世界経済見通しによる と、今年の世界経済の成長率はプラス2.5%と、昨年6月時点の同

3.6%から修正。ユーロ圏については、前回予想のプラス1.8%からマ イナス0.3%に引き下げている。

ECBのドラギ総裁は政策金利の据え置きを決めた今月12日の会 合後の会見で、ユーロ圏経済に安定化の兆しが見られるとの認識を示す 一方、景気見通しには債務危機による「相当な下振れリスクがある」と し、ECBには「行動の用意がある」とも述べた。

米連邦準備制度理事会(FRB)は12月の連邦公開市場委員会 (FOMC)で、少なくとも2013年半ばまで政策金利をゼロから

0.25%のレンジに維持する方針をあらためて表明。日本銀行は10年 10月から政策金利を「0-0.1%」としている。

クレディ・スイス証券外国為替調査部の深谷幸司チーフ通貨ストラ テジストは、リセッションに直面する欧州のファンダメンタルズ(経済 の基礎的諸条件)と緊縮財政・金融緩和のポリシーミックスは「通貨安 と整合的だ」とし、「金融政策もG3(日米欧)中で利下げに動く可能 性が一番高く、追加利下げまではユーロキャリーをやめる理由はない」 とみる。

ECBの総資産が過去最大

ECBは先月、初の3年物資金供給オペを実施し、4890億ユーロ を最低応札金利の1%で金融機関に貸し付けた。記録的規模の資金供給 や周辺国の国債買い入れにより、ECBの総資産は12月末時点で過去 最大の2兆7400億ユーロ(3兆5000億ドル)まで膨らんだ。FRB のバランスシートは2兆9000億ドルで、日銀は約1兆8000億ドル。 ECBは2月末に新たな3年物オペを予定している。

欧州債務危機の先行き不透明感が根強い中でも株式相場は堅調だ。 米国などで予想を上回る経済指標が相次ぎ、世界景気に対する悲観的な 見方が和らいでいることが背景にある。

米S&P500種株価指数は昨年10月の安値から20%超上昇し、先 週には終値で昨年7月以来、初めて1300を回復した。投資家の不安心 理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ・イ ンデックス(VIX)も半年ぶりの水準まで低下。深谷氏は「VIXを 見ると、それほどリスク回避ではない」と指摘する。

ストックス欧州600指数も年初から3.5%上昇。先週は週末に反 落するまで4営業日続伸し、終値で5カ月ぶり高値となった。

消去法でユーロ

先進10カ国の通貨で構成するブルームバーグ相関・加重通貨指数 によると、ユーロは過去3カ月で先進国通貨に対し4.3%下落。豪ドル は4.3%上昇している。ドルと円はそれぞれ3.6%と0.8%の上昇。

みずほコーポレート銀行国際為替部のマーケット・エコノミスト、 唐鎌大輔氏は、「ここ1-2カ月で見ればボラティリティも下がってき ているし、ユーロの先安観も出ていて、ドルと円は強含んだままとなる と、何で調達したらいいかを考えた場合、消去法的にユーロになる」と 指摘する。

ユーロは17日に対豪ドルで1999年のユーロ導入以降の最安値と なる1ユーロ=1.2228豪ドルまで下落した。

唐鎌氏は、「金融機関がここまで傷んでリスクテークできない中で ユーロキャリーがトレンド化するかまだ確証はないが、リスク選好局面 で豪ドルが買われても、ユーロが売られているという状況は今までなく 、説明を付けるとすればユーロキャリー以外にあまりない」と話す。

ヘッドライン・リスク

ユーロの売り持ちが過去最大に積み上がる中、先週はユーロの買い 戻しが活発化した。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、シカ ゴマーカンタイル取引所(CME)国際通貨市場(IMM)でユーロの 売り越しが17日時点で16万枚に拡大し、4週連続で過去最大を更新 した。

ブラウン・ブラザーズ・ハリマン外国為替部の村田雅志バイスプレ ジデントは、「トレンドとしてはユーロ安のシナリオを持っているが、 何らかのポジティブなヘッドラインにより、積み上がったショート(売 り持ち)を解消する動きが短期的に強まる」リスクには注意する必要が あると言う。

独り負け

中国国家統計局が17日発表した昨年10-12月(第4四半期)の 国内総生産(GDP)は前年同期比8.9%増と10四半期ぶりの低成長 となったが、市場予想(8.7%増)は上回った。10年前に中国など4 つの新興経済大国をBRICsと命名したゴールドマン・サックス・ア セット・マネジメントのジム・オニール会長はGDPの結果について、 中国経済の「ハードランディング」を予想するアナリストらに「一撃」 を与えたと述べた。

ブルームバーグのエコノミスト調査によると、ユーロ圏経済は今年 7-9月期まで3四半期連続でマイナス成長が続く見通し。一方、米国 は2%台、日本もプラス成長を維持する見込みだ。IMF(国際通貨基 金)は昨年9月に公表した世界経済見通しで、12年の新興・発展途上 国の経済成長率を6.1%と予想している。

新生銀行市場営業本部の政井貴子部長は、「今は確たる投資先の選 定が難しいが、少し見え始めているのはユーロ圏とその他地域の経済の デカップリング(非連動)の可能性だ」と指摘。中国や米国がけん引し 世界景気が持ちこたえ、「ユーロ圏の『独り負け』が確信に変われば、 ユーロキャリーがテーマとなるし、すでに始まっている可能性もある」 と語る。

--取材協力:油井望奈美、Editor:Joji Mochida, Masaru Aoki, Hidenori Yamanaka

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