社会保障と税の一体改革に関する 5閣僚会議が30日夕開かれ、消費税率を2014年4月に8%、15年10 月に10%と2段階で引き上げることなどを柱とした一体改革大綱素 案の政府案を決定した。年明けに政府・与党の「社会保障改革本部」 を開き、正式決定する。安住淳財務相が会合後の記者会見で明らかに した。

民主党は同日午後、国会内で政調役員会を開き、税制改革案を了 承。引き続いて、政府税制調査会(会長・安住財務相)が同改革案を もとにした一体改革大綱素案を取りまとめた。野田佳彦首相は同素案 をもとに野党調整を経て来年3月までに法案を国会に提出する方針だ。

安住財務相は記者会見で、「景気が良くなっても税収の50兆円台 回復は考えにくい」と述べ、「予算額の中で社会保障が占める割合が多 くなるなかで、消費税を増やし年金、医療、介護で戻す仕組みをつく ることで国民に理解を求めていかなければならない」と指摘。少子高 齢化は避けて通れない国の課題とし、党と消費税増税で合意した意義 を強調した。

民主党税制調査会(会長・藤井裕久元財務相)は当初、消費税率 を13年10月に8%、15年4月に10%へ引き上げる案を提示したが、 慎重論が強く、協議は難航。29日の社会保障・税一体改革調査会との 合同総会には、インドから帰国直後の首相も出席、「一番逃げてはなら ないテーマだ」と訴え、消費税率の引き上げに向けた不退転の決意を 表明した。自らも議論に参加し、約5時間にわたる調整の結果、実施 時期の半年先送りで決着した。

第一生命経済研究所の嶋峰義清主席エコノミストは、野田内閣は 消費税増税の実現に向けてまとまっており、「今後ともどんな展開にな っても、首相はやっていくだろう」と述べ、実現可能性は8割以上あ ると指摘。また、増税方針を堅持できれば、国債格下げリスクも当面 は緩和できるとの見方を示した。

デフレ脱却へ政府・日銀連携強化

首相は29日の合同総会で、デフレ下での消費税増税に対する党内 の慎重論を受け、「デフレ脱却に向けて日銀と緊密に連携したい。国民 に見えるように白川方明日銀総裁とひざを突き合わせて定期的に議論 したい」と表明。改革案でも「政府と日本銀行が一体となってデフレ 脱却と経済活性化に向けたさらなる方策を講ずる」必要性を強調した。

これを受け、政府案では政府・日銀はデフレ脱却に向けて一体と なって取り組むとした上で、「景気の下振れの回避に万全を期すため、 適切な経済財政措置を講ずるとともに、デフレ脱却と経済活性化に向 けたさらなる方策を講じ、日本の経済再生に取り組む」との一文を盛 り込んだ。

所得税の最高税率は45%-5000万円以上

政府案では、消費税率は「単一税率を維持する」とし、食料品な どへの軽減税率は導入しない方針を示した。一方、低所得者ほど負担 が増す「逆進性対策」としての給付付き税額控除や総合合算制度など の導入を明記。消費税増税による低所得者への重税感を緩和させるた め、課税所得5000万円以上に適用する所得税の最高税率を現行の40% から45%に引き上げる。

民主党は改革案で消費税率引き上げの停止も含む「弾力条項」を 法案に盛り込むよう要請。これを受け、政府案では「引き上げ実施前 に名目・実質成長率、物価動向など、種々の経済指標を確認し、経済 状況を総合的に勘案し、引き上げの停止を含めた措置を講ずる規定を 法案に盛り込む」とした。

安住財務相は「復興予算の執行がこれから本格化し、来年、内需 を起こしていく可能性は十分にある」と強調。「欧州の経済・金融危機 を解決することで世界経済を安定軌道に乗せて行く必要もある」とし ながらも、「経済的な指標がプラスになる余地は十分にある。環境は十 分に整う」と語った。

消費税きっかけに政局も

政府が24日に閣議決定した12年度一般会計予算案では、基礎年 金の国庫負担率引き上げに必要な財源2.6兆円を年金交付国債で手当 てする方針を示した。同国債の償還財源は、消費税引き上げによる税 収増で確保することを見込んでおり、この点からも増税は不可避な状 況だ。

一方、消費税の議論が進むなかで、内山晃衆院議員ら11人が、政 権公約(マニフェスト)にない消費増税に向かう党方針などに反発し、 離党届を提出した。これに対し、野田首相は「誠に残念だ」としなが らも、消費税増税は社会保障に還元されることを説明し、理解を得る ことが重要だと強調した。

ユーラシア・グループの奥村準・参与は、消費税議論に伴う党内 の混乱が政権運営に与える影響について、「民主党が割れ る可能性は 否定できない。特例公債法や交付国債法案を野党が人質に とり、来年 の2-3月に政局になる可能性がある」とし、総選挙の可能 性が高ま るとの見方を示した。

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