【コラム】金融崩壊回避にはハードコアの「XXX」必要か-ペセック

12時間ものフライトは、思いがけ ないエンターテインメントの傑作に巡り合うチャンスでもある。例え ばハリウッドが製作した映画「トゥー・ビッグ・トゥー・フェール(大 き過ぎてつぶせない)」。米証券会社リーマン・ブラザーズ・ホールデ ィングスが2008年の破綻に向かう内幕を描いた作品だ。

東京からニューヨークに向かう機内でこの映画を見ていた私は、 リーマン破綻劇の構図がオリンパスの損失隠しの不祥事にも見て取れ るということを考え続けていた。帳簿外のリスク、タックスヘイブン (租税回避地)、不可解な会計、万事良好とへつらう経営幹部、不運な 監督当局。私の頭に浮かんだのは、金融の世界こそ、筋の通るレーテ ィング制度を持つ映画界のようにならなければならないということだ。

日本では今、オリンパスの幹部が逮捕されるのか、同社が上場廃 止になるのかに世間の耳目が集まっている。だが真のストーリーは、 グローバル化の時代にどのように金融ビジネスがなされるのかという ことだ。

調査やお役所仕事に税金を無駄遣いするよりはむしろ、監督当局 が自らをレーティング会社に衣替えしたらどうだろうか。映画界が作 品の内容によって成人指定や年齢制限を課すことができるなら、金融 界も同じことができるはずだ。

成人映画を示すレーティング「X」をもじりハードコア作品だと 警告する「XXX」は、金融界ならさしずめケイマン諸島や英領バー ジン諸島、クック諸島などに法人登録されている企業が対象だ。

腐敗する運命

仮に年金基金の運用担当者が母親の生涯預金を株主のあずかり知 らぬところでこうしたXXX企業に投資していたら、その運用担当者 は刑務所入りすることになる。例外はない。年金ファンドマネジャー が投資したいと思うのは、足跡のつかない海外企業を取引相手にする こともなく、米英などの規制や税法を完全に順守する「AAA」クラ スの企業だ。

一体全体、世界の信用格付け制度が機能していると本当に言える だろうか。スダンダード・アンド・プアーズ(S&P)の米国債格下 げ以外は目を向けなくていい。米先物ブローカーのMFグローバル・ ホールディングスをめぐっては、S&Pもムーディーズもフィッチも 破綻のほんの1週間前に投資適格級と格付けしていたのだ。

こうした最近の出来事は、リーマン破綻から3年余りたって市場 がどのように機能し続けているかについて多くを物語っている。債券 発行体に最良の格付けを探し回ることを許すいかなるシステムも腐敗 する運命にある。強欲と創造的な分析の組み合わせが、グローバル化 が一段と進む世界で何が合法で何が違法かを区別することを難しくし ている。

カモ

金融界の格付け制度は状況にほとんど変化がない。14年前のアジ ア危機とその1年後のロシアのデフォルト(債務不履行)も予期でき なかった。ハイテク株のバブル崩壊や米エネルギー取引会社エンロン 破綻、米住宅バブル、ウォール街の責任感喪失、崖っぷちに向かって いる欧州金融システムを前にして、格付け制度は眠ったままだった。

実際のところ格付け会社が中国のソブリン債を格上げするときは、 売りやトラブルに備えよというサインかもしれない。08年にわれわれ が学んだのは、監督当局は金融の錬金術師より数年間、後れを取って いるということだ。

映画界のようなレーティング制度が企業にも適用されることにな れば、私が機内で見た映画の素晴らしいシーンもなくなるかもしれな い。俳優のジェームズ・ウッズ演じるリーマンの元会長リチャード・ ファルド氏が韓国産業銀行に不良資産を買わせようとする場面だ。韓 国産業銀の担当者は賢明にも、当時は最高経営責任者(CEO)だっ たファルド氏にもてあそばれていると感じる。ファルド氏はすぐに別 のカモを見つけるため電話に飛び付くのだ。

この映画には続編があるかもしれない。だが、われわれはすでに 最初の展開を知っている。監督当局は投資家と経済全体を初期段階で 守ることができるし守らなければならない。ハリウッドにそれが可能 なら、ウォール街の監督機関にもできるはずだ。 (ウィリアム・ペセック)

(ウィリアム・ペセック氏はブルームバーグ・ニュースのコラム ニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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