原発・円高負けない、中国人スキーヤーに期待-観光客回復の兆し

国内最悪の原子力発電所事故から 8カ月。当時臨時の避難所の役割を果たした福島県のスキーリゾート にもようやく活気が戻り始めた。この冬の予約が、震災前の7割程度 の水準まで回復すると見込むところも出てきた。

東日本大震災直後には日本を脱出した外国人も多かったが、ホテ ルや航空会社は今、海外から観光客を呼び寄せる取り組みを展開して いる。中でも回復をけん引するのは中国人と期待を寄せる。日本政府 の統計によると、震災直後の4月の訪日外国人は前年同月比63%減 った。10月でもなお同15%減なのに対し、中国人はほぼ前年水準に 戻っている。

記録的な円高や経済危機で、欧米人にとって日本観光は割高にな っているが、フォー・シーズンズ・ホテルや日本航空など関連業界で は、今後のレジャー需要の伸びを見込んで投資を進めている。過去 20 年間にわたり日本経済の成長率が年率平均1%程度にとどまって いる中で、政府が観光や医療・保健も今後の成長分野として位置付け ている背景もある。

「地震や津波があってもスピードは緩めない」と話すのは、シン ガポールの不動産会社、パシフィック・スター・グループの日本代表 取締役、ダン・シーモア氏だ。同社が3月11日の東日本大震災の6 日後に発表した計画によると、フォーシーズン・ホテルを2013年末 までに京都で開業する。シーモア氏は「マーケットは中国人客を中心 に必ず伸びていく」と語る。

日本政府観光局によると、10月の香港からの旅行者は前年同月 比17%増、台湾からも2.6%増えた。また中国の観光客は4月には5 割減ったが、10月はほぼ前年並みとなった。

アジアの旅行客

海外からの観光客はこうしたアジア人が約7割を占め、米国から は9.5%程度。為替相場をみると、円の対ドル相場は年初来7.9%上昇、 10月31日に75円35銭を付けたのに対し、人民元に対する上昇率は

3.4%とにとどまっており、割高感はドルほどではない。

フォーシーズンズのアジア・パシフィック地域ホテルオペレーシ ョン担当社長のクリストファー・ハート氏は「今は円が非常に強いの で、短期的には東京は割高になっている」と指摘しながらも、「日本 を含めたアジア地域では、旅行者が大幅に増えると誰もがみている」 と話す。

原発事故現場に近いリゾートでも回復が見えてきた。長野県軽井 沢町に本社を置く星野リゾートは、福島県内で運営するアルツ磐梯ス キーリゾートで今シーズン(2011-12年)は、09-10年の6割の宿泊 客を見込んでいる。同施設は3月20日から避難所として約220人の福 島県住民を受け入れた。今シーズンはウェブサイトに積雪量だけでな く放射線量も表示する予定だ。またスキーリゾート3施設を運営する 会津高原リゾートは、昨年比で7割の予約が見込めるという。

安全な都市

JTBの子会社、ツーリズム・マーケティング研究所の田中靖主 任研究員によると、海外からの訪日旅行客は全体で年末までに震災前 の水準に戻る公算で、15年までにはさらに16%増えて1000万人に達 する可能性があるという。

北海道大学観光学高等研究センターの臼井冬彦教授によると、今 後の訪日客数は、震災や原発事故からあまり影響を受けなかった地域 を中心に来年3月ごろから一層の回復に向う可能性があるという。東 京や京都、北海道、沖縄などが回復を引っ張るとみる。

北京の中国旅遊研究院によると、今年は前年比15%増の約6500 万人の中国人が海外旅行にでかける見込みという。

上海の映像プロダクションでブランディング・マネジャーを務め るダニー・ハオさん(33)は、来年の中国の正月休みに日本を10日 間旅行する計画を立てている。大阪や神戸、奈良など関西地域を訪ね るという。原発事故の影響についてハオさんは電話取材に「関西は震 央から遠いし、日本の友達は状況は人が思うほど悪くないと言ってい る」という。

人気

パシフィック・スターのシーモア氏によると、同社は今後5年間 に日本に7つの新しいホテルを建設する計画だ。リッツカールトンホ テルや星野リゾートは、京都や沖縄、富士山周辺で新たな豪華リゾー トを建設しており、14年までにすべて開業する予定。

フォーシーズンズやリッツカールトンは、北海道ニセコでのスキ ーリゾート開業に関心を寄せている。ニセコではすでに、マレーシア の建設最大手のYTLや米国のカペラホテルの創設者であるホース ト・シュルツ氏らがすでに事業を進めている。

日本航空は豪カンタス航空などと8月に格安航空会社(LCC) ジェットスター・ジャパンを設立。全日本空輸とマレーシアのエアア ジアもLCCを合弁で設立、来年の就航を目指している。

中国最大のインターネット企業、百度が過半数を出資するオンラ イン旅行サービスQunarによると、訪日中国人数の前年比増加率 は10月には1.1%に回復した。同社は電子メールで取材に応じ、「日 本を訪れる中国人観光客は6月以降、着実に増加する傾向がみられる」 とコメント。「中国人にとって旅行先としての日本の人気はかなり高 い」という。

楽観的になれない

もっとも、すべてのホテルが急速な回復を見込んでいるわけでは ない。福島第一原発から80キロ圏内で東急リゾートサービスが運営 するスキーリゾート、グランデコによると、予約はまだ昨年の半分程 度の状況だという。

野村総合研究所のシニアコンサルタント、北村倫夫氏は「なぜ楽 観的になれるのかその理由が分からない」と指摘する。放射能汚染の 懸念や円高の進行などを背景に挙げ、「この時期に日本を訪問したい と考える外国人は多くないのではないか。さらに、欧州債務危機と世 界経済への波及の懸念によって、人々は観光を含めた消費に対して悲 観的になっていると思う」と話す。

外務省は8月、中国人観光ビザの発給要件の緩和を発表、申請者 の職業制限を撤廃したほか、滞在期間も15日から30日に延長した。 観光庁は海外の外国人1万人に無料航空券を配る費用を2012年度予 算に盛り込むよう要求した。

昨年7月に北京にオフィスを開設し、国内にも中国語で対応でき るスタッフを採用している星野リゾートの星野社長は、観光業界の意 識が変わると期待する。「かつては何もやらなくてもインバウンドは 勝手に増えてきた」が、「これからは新しい魅力を出していく機運が 高まっていくと思う」と話している。

--取材協力:東京 桑子かつ代、上海 Michael Wei. Editors: Adam Majendie, Brian Fowler.

参考画面: 翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先: 東京 谷合謙三  Kenzo Taniai +81-3201-8291 ktaniai@bloomberg.net Editors: Hitoshi Sugimoto, Yoshinori Eki 記事に関する記者への問い合わせ先: 東京  Makiko Kitamura +81-3-3201-8482 or mkitamura1@bloomberg.net;

Kathleen Chu in Tokyo +81-3-3201-3378 or kchu2@bloomberg.net; 記事に関するエディターへの問い合わせ先:

Andreea Papuc +852-2977-6641 or apapuc1@bloomberg.net

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE