ウォール街に到来する未曽有の「暗黒時代」-雇用回復は10数年後か

米金融会社MFグローバルが過去 最大の四半期赤字を発表したその日、シカゴ拠点の共同責任者ジョ ン・ブレイディ氏は、フロリダ州ネープルズにある高級ホテル、リッ ツカールトンでメキシコ湾を見下ろしながらウオツカのカクテルを飲 んでいた。

「わあ、日没だ。MFグローバルの落日にならないといいね」。 ブレイディ氏は妻やその日の会合に出席した同僚に語ったという。同 氏はインタビューで当日のことを振り返った。

1週間後の10月31日、ゴールドマン・サックス・グループ元共同 最高経営責任者(CEO)だったジョン・コーザイン氏率いるMFグ ローバルが経営破綻。ブレイディ氏と同僚1065人も人員削減の波にの み込まれた。ブルームバーグの集計データによれば、世界の金融機関 による今年の人員削減数は20万人を超え、2009年の17万4000人を 上回る。フランスのBNPパリバとイタリアのウニクレディトが先週 合理化を発表するなど、欧州ソブリン債危機による市場の動揺で大量 解雇の動きはさらに深刻化する公算が大きい。

ブラジルのバンコBTGパクチュアルのマネジングパートナーで、 元UBS投資銀行部門責任者のヒュー・ジェンキンス氏は、「今回は これまでと全く違う」と述べ、「構造的な変化だ。業界が収縮しつつ ある」と指摘した。

パラダイムシフト

ウォール街は前例のない規模の政府支援を受けて08年の金融危 機から立ち直り、好業績や高額ボーナスの大盤振る舞いに沸いた。と ころが、ここにきて自己資本規制の強化や自己勘定取引の縮小などの 影響を受け、業界は「パラダイムシフト」(考え方や価値観の劇的変化) を経験していると、人材斡旋会社カッテン・マチン・ローズマンのス ティーブン・エクハウス氏は分析する。

仏ソシエテ・ジェネラルや英ロイヤル・バンク・オブ・スコットラン ド・グループ(RBS)、米ジェフリーズ・グループなどで職を失った 人々はインタビューで、高失業率や所得格差に抗議する「ウォール街 を占拠せよ」デモなどの風当たりもあり、金融業界の将来の展望は厳 しいと予想している。

ジェフリーズでM&A(企業の合併・買収)担当バンカーの職を 08年後半に失って以来仕事のないスコット・シューバート氏(49)は、 「自分にとって今は間違いなく最も暗い時期だ」と述べ、「職探しは ますます困難になっており、むなしさを感じている」と話す。

最も深刻な打撃を受けているのは西欧の銀行や保険会社、資産運 用会社で、今年に入って約10万5000人の解雇が発表となった。ブル ームバーグのデータによると、これは金融危機の最悪期だった08年の 水準を66%上回る。北米では今年は5万人が削減され、昨年の2倍強 の水準だが、08年の17万5000人を下回っている。

試練

「一世代に一度あるかないかの試練だ」と言うのはロンドンの幹 部人材あっせん会社パーセルの創業者、ジョン・パーセル氏。同氏は 「1985年以降に英金融街シティーで働き出した人は、このような状況 にどう対応すべきか全く分からないだろう」と語る。

シティーやカナリーワーフなどの金融街に働く患者を診察してい る精神科医のニール・ブレナー氏によると、こうしたストレスがパニ ック発作や大量の飲酒、胸痛の一因になっているという。

英民間調査機関の経済ビジネスリサーチセンター(CEBR)に よると、ロンドンでの金融業界での採用は来年、凍結状態になる恐れ があり、シティーとカナリーワーフの雇用者数は年末までに28万8225 人に減少する見込み。これは前年より2万7000人少なく、少なくとも 1998年以来の低水準となる。

ムーディーズ・アナリティクスのエコノミスト、マリサ・ディナ ターレ氏によると、ウォール街では失われた雇用は「2023年ごろま で」回復しない見通しだ。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE