【コラム】ドイツ銀は欧州と米国の金融危機をつなぐ導管-ジョンソン

【コラムニスト:Simon Johnson】

11月21日(ブルームバーグ):タウヌスについて、聞いたこと がない人は多いだろう。しかし米連邦準備制度理事会(FRB)によ れば、タウヌスは米国8位の銀行持ち株会社だ。実は、タウヌスはド イツ銀行の北米子会社なのだ。タウヌスは同行の本社があるフランク フルト近くの山地の名前。

ドイツ銀は欧州の国債と銀行債を大量に抱えている。米国でくす ぶり続ける不動産問題に対するエクスポージャーも大きい。これらに より、ドイツ銀は欧州と米国の経済をつなぐ導管になり得る。

ドイツ銀はいかなる目安に基づいても巨人だ。同行ウェブサイト によれば、9月末の資産は2兆2800億ユーロ(約236兆円)。 2010年のデータに基づいた金融誌ザ・バンカーの番付でドイツ銀は 資産規模でフランスのBNPパリバに次ぐ世界2位の大銀行だった。

しかしドイツ銀の資本基盤は薄い。9月末の株主資本は519億 ユーロ。レバレッジレシオ(自己資本に対する総資産の割合)は44 倍に近い。

現代の基準に照らしてもこれは高い。米JPモルガン・チェース の資産はドイツ銀より約20%少なく、中核的自己資本(Tier1) は2倍以上だ。米国で今、深刻に懸念されているバンク・オブ・アメ リカ(BOA)も資本はドイツ銀の2倍ある。これらはザ・バンカー 誌の番付に基づいた比較だ。

リスク加重

ドイツ銀の自己資本比率は世界的に見て低くはない。9月末のT ier1比率は13.8%、株式に転換され得るハイブリッド債を除い た狭義の中核的自己資本であるコアTier1比率は10.1%だった。

レバレッジがこれほど高いのに資本比率が高いのはどういうわけ か。その答えは「リスク加重」だ。ドイツ銀のリスク加重資産は9月 末に3376億ユーロ。しかし今の欧州の環境で、低リスク資産とは 何なのだろう。信じられないことに、国債が低リスク資産とされてい る。もちろん、国債のリスクは現在、ゼロからは程遠い。

ドイツ銀は恐らく、主にドイツ国債を保有しているだろう。しか し、イタリア債とフランス債もかなり保有している可能性が高い。

さらに大きなリスクが米国にありそうだ。ドイツ銀は米住宅バブ ル期に住宅ローン担保証券の組成と販売に深く関わっていた。ネーキ ッドキャピタリズム・ドット・コムのイブ・スミス氏のブログによる と、ドイツ銀は米国で証券化商品の被信託会社大手4社の一角だとい う。これらについて、事務手続きが適正だったか、投資家の権利が保 護されていたかの疑問がくすぶり続けている。

レバレッジレシオ

タウヌスの資産規模は約3800億ドル(約29兆2000億円)。 FRBのデータによれば、9月末のタウヌスの株主資本はわずか48 億7600万ドルだった。レバレッジレシオは実に78倍付近となる 計算だ。

なぜFRBと米金融安定監視評議会(FSOC)はドイツ銀が米 国で極端に高いレバレッジで営業し、金融システム全体に対する暗黙 のリスクとなることを容認しているのか。恐らく、米当局は過去に、 ドイツ銀のバランスシートは十分に強力なため必要になれば米子会社 に資本を注入できると判断したのだろう。

そのような仮定は今や、少なくとも疑わしいと言わざるを得ない。 2008年の金融危機時にはドイツ銀はそれほど問題にならなかった。 1つには、米国外のほとんどの政府は自国の銀行の海外事業を必要な らば支えることができるほど強力なバランスシートを備えていると見 なされたためだが、これは今やユーロ圏の各国政府に必ずしも当ては まらない。

幻想だった恐れ

2008-09年の時期にすら、安全というのは幻想だったのかも しれない。ドイツ銀が当時、米保険会社アメリカン・インターナショ ナル・グループの救済に伴う118億ドルや連銀窓口貸し出しを通し た20億ドルなど、相当程度の支援をFRBから得ていたことは発表 されたリポートから分かっている。

ドイツ銀、あるいは必要ならばドイツ政府に、タウヌスへの追加 資本注入を求めるべきだ。現状を放置することはトラブルを待つこと にほかならない。ドイツ銀が比較的リスクの高い投資銀行事業に重点 を置き続けようとしていることを考慮するとなおさらだ。

ドイツ銀の次期会長には、独保険会社アリアンツの財務担当役員 のポール・アハライトナー氏が就任するもようだ。元ゴールドマン・ サックス・グループ幹部の同氏の指名は一部のドイツ銀株主をすら不 安にさせる。米議会は、米国と世界の金融安定に脅威を与えかねない ドイツ銀のリスクをじっくりと検証すべき時だろう。 (サイモン・ジョンソン)

(サイモン・ ジョンソン氏は、ブルームバーグ・ニュースのコ ラムニストです。このコラムの内容は同氏自身の見解です)

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