ストリンガー会長のソニー:「成果の年」との期待が震災で暗転

ソニーのハワード・ストリンガー 氏は、2011年が素晴らしい年になると期待していた頃のことを思い出 す。「成果が出る最初の年になるはずで、翌年はその2年目になるはず だった」。就任以来既に6年余。会長兼社長兼最高経営責任者(CE O)として、ストリンガー氏はソニーの過去の栄光を復活させ、成長 への新時代の扉を開けることを目指してきた。

ソニーは好決算を予想。タブレット型端末や24メガピクセルのコ ンパクトカメラ、携帯型プレイステーションなどの新製品も相次いで 販売する予定だった。また、同社の映画・音楽・ビデオゲームをテレ ビやタブレット型端末やPCや電話につなげる世界的なネットワーク を始めることも計画していた。ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌 (11月21日号)が報じた。

ストリンガー氏はニューヨークのアッパーイーストサイドのマン ションの14階で朝食を食べながら語った。「記憶に残る年になると本 当に正直に思っていた。そして、違った意味でその通りになった」。

成功に近づきあるとの思いは、3月11日に突然断ち切られた。ス トリンガー氏は前夜、腰の緊急手術のため、東京から飛行機でニュー ヨークに来ていた。午前4時半ごろ、メッセージを開いて地震と津波 が東日本を襲ったことを知った。

赤字予想

震災を受けソニーは一時10工場を閉鎖した。これにより、ブルー レイディスクや電池などの流通が滞った。震災は収益にも打撃を与え、 前期は過去16年で最大の31億ドルの純損失となった。ソニーの苦難 はこれで終わりではなかった。ハッカーの攻撃でプレイステーション のネットワークが停止。さらに円高で利益が損なわれ、世界経済の低 迷が売り上げに響いている上に、ロンドンの暴動でCDとDVDの倉 庫が火事に見舞われ、タイの洪水で部品工場が閉鎖された。

秋になると、ストリンガー氏の後継者とされる平井一夫副社長は、 危機感を口にするようになる。ソニーは今期が12億ドルの純損失にな ると予想。同社の株価は最近、24年ぶりの安値を付けた。同社の時価 総額はストリンガー氏がCEOに就任した時の半分に減った。

ソニーは独立型の電気機器の時代には成功していた。インターネ ットが生まれ、携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」やスマ ートフォン(多機能携帯電話)、タブレット型端末が中心になると、ソ ニーは後れを取った。ソニー製品の真髄であるテレビも今では重荷に なっている。

強力な会社

ストリンガー氏のCEOとしての任期は終わりに近付いている。 69歳の同氏の3年間の再建計画は13年3月に終わる。この記事で取 材した数人によると、その後は平井氏が引き継ぐという。 ストリンガ ー氏は、ソニーの改革が容易ではなかったと認める。

ストリンガー氏は、「私がよく言われるのは、『こんなことをする 必要はない。どうしてこんなことをするのだ』ということだ」と言う。 「なぜならば、ソニーを安全で安定した将来に導く道に乗せると約束 をしたからだ。私の年齢で成功を予想するのは大変難しいが、われわ れの資産の組み合わせを利用することができれば、とても強力な会社 になるだろう」と断言する。

朝食が終わると、ストリンガー氏はCBSのテレビ番組「60ミニ ッツ」のコメンテーターだったアンディ・ルーニー氏の告別式とソニ ーのオフィスに向かった。同氏の辞任が近いとのうわさが再浮上して いる。それは間違いだ、とストリンガー氏は言う。「私がここにとどま っているのは、この場所が好きだからだ。私はビジョンを信じており、 そこに近づいていると思っている。だが、人々が我慢してくれること は期待できない」。

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