ゴールドマン・サックス出身者が運 営する独立系プライベート・バンキング(PB)業者が、助言対象とす る顧客資産を増やしている。手数料などを重視する大手金融機関などの 思惑に左右されない顧客本位のアドバイスを強みに、約357兆円と世界 2位の市場規模と言われる日本の富裕層マネーの獲得を目指す。

香川祐一氏(43)が2009年4月に設立した香川アセットマネジメ ント(KAM)の助言資産は現在150億円。香川社長は売り手側のもう けが重視されやすい「銀行、証券などのセルサイドモデルは立ちいかな くなる。資産管理型の方がうまくいく」と強調した。1年後には助言資 産を250億円程度まで積み上げたいという。

米メリルリンチと仏キャップジェミニの調査によると、投資可能資 産100万ドル(約8000万円)以上を持つ日本の富裕層人口は2010年で 前年比5.4%増の174万人と米国に次いで2位。英コンサルティング会 社のスコーピオ・パートナーシップによれば10年時点の日本の富裕層 資産は前年比7%増の4兆6300億ドル(約357兆円)に上った。

一方、小林裕氏(46)は2007年に不動産売買・投資を手掛けるス ター・マイカのもとでスター・マイカ・アセットマネジメント(SAM) を設立。現在の助言資産は80億円だ。「資産が一定以上になったら、中 立的な助言者が付くのが当たり前の時代を期待する」と述べ、今後2年 で200億円まで増やしたい考えを示した。

日本の富裕層、55%が債券・現預金

日銀によると11年6末の日本の個人金融資産は全体で約1500兆円 ある。米メリル・仏キャップジェミニによれば、日本の富裕層は世界中 で最も保守的で運用資産の55%を債券と現預金で保有している。同比率 は1年前の48%から上昇し、世界平均の43%を上回る。香川氏や小林 氏はこうした個人富裕層マネーを狙っている。

日本国内では、主に1億円以上の金融資産を持つ個人向けに、みず ほ、三菱UFJ、三井住友などが合弁も含めて金融商品による資産運用 サービスを提供。外資系ではUBS、クレディ・スイス、HSBC、ソ シエテ・ジェネラル、スイスの老舗ロンバー・オディエ・ダリエ・ヘン チなどが事業拡大を図るなど競争が激化している。

ともにゴールドマン(東京)の富裕層部門出身の両氏は顧客の立場 を重視し、「現金のまま保有するのも1つの運用」と口を揃える。国内 外の大手金融機関のPB業務の報酬には、株式売買手数料や金融商品の 販売手数料が含まれるが、両社では助言残高に応じた助言料と成功報酬 がメインと強調。顧客に不要な負担はさせない方針だ。

ホームドクター

SAMの小林氏は、金融機関のセルサイド型PBのサービス内容は 「日本の富裕層が持つ資産形成のイメージと齟齬(そご)があるかもし れない」と指摘する。手数料稼ぎの金融商品売買や、運用のピークを過 ぎた商品を売り続けるなど「本当の意味での投資リターンを5-10年の スパンで考え提供ができるアドバイザーは少ない」という。

具体的な日本の富裕層像についてSAMでは不動産での運用ニー ズが高いと指摘する。このため同社では担当者が金融商品と不動産投資 運用の利回り、メリットとリスクを細かく比較して助言している。一方、 KAMでは債務問題の広がった欧州関連などは1年半以上前から薦め ておらず、顧客は損失を免れたとしている。

KAMの香川氏は「ホームドクターのようなライフタイム・プライ ベートバンカーが目標」だが、ここ数年、新規株式公開(IPO)など の減少で100億円単位の資金を入手する人が減り、「国内ではワレット シェア(顧客資産に占めるシェア)の取り合いになっている」という。

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