東証は単独IPO見送りへ、大証へのTOB来年半ば予定-関係者

大阪証券取引所との経営統合交渉 を進めている東京証券取引所が、従来目指してきた自社単独の株式公 開(IPO)を見送る見通しとなった。2012年半ばの株式公開買い付 け(TOB)を目指し、大証との交渉を優先するもようだ。事情に詳 しい関係者がブルームバーグ・ニュースに対し明らかにした。

01年に株式会社に組織変更した東証では、02年度-04年度の中 期経営計画以降、自社株式の公開を方針として打ち出していた。関係 者によると、まず12年半ばに東証が大証にTOBを行い子会社化。そ の後大証を存続会社とし、親会社の東証が大証に吸収合併される形態 を採る。TOB比率は、大証株の上場が維持される66.6%と50.01% の2案が検討されている。また、大証との統合後の上場形態について は複数の案があり、今後詰める。

新会社の人事は、東証の斉藤惇社長が最高経営責任者(CEO)、 大証の米田道生社長が最高執行責任者(COO)に就任する案が出て おり、名称には「日本取引所グループ」などの候補が挙がっている。

国を超えた取引所間の合従連衡の動きに加え、かつては世界2位 だった日本の株式時価総額は08年に初めて中国に逆転を許し、以来相 対的な地盤沈下が顕著となっており、両社は統合による規模拡大で経 営効率化や収益源の多様化を進め、生き残りへの基盤固めを急ぐ。

統合検討3月に表面化

東証・渉外広報部の吉松和彦課長は、「現時点で何ら決定した事実 はない」と述べた。大証・東京広報チームの矢田文弘チームリーダー は、「統合について決定した事実はない」としている。両社の統合につ いては、3月に検討の動きが表面化。その後時期や統合形態などをめ ぐり、双方間で協議を重ねてきた。今月7日の日本経済新聞朝刊は、 来春にも東証が上限付きのTOBで大証株の過半数を取得、来秋をめ どに合併する方向になったと報じた。

野村総合研究所研究創発センターの大崎貞和主席研究員は、「将来 統合するためのスキームとして、東証がまず上場するというのは時間 がかかる、というのが一番の障害」と指摘。上場企業の大証が同業態 の非上場企業を取り込むためには、「今回の案は両社が納得しやすく、 法律上も問題がないバランスの取れたスキーム」と話している。

課題は比率、東証評価に開き

3月以降の両社の交渉で、現在も大きな検討課題となっているの は両社の統合比率だ。株式上場している大証の時価総額が1114億円 (14日時点)に対し、財務アドバイザーが提示する東証の時価総額の 試算には1000数百億円から3000億円超まで開きがあり、両社の株主 が納得する形での合意形成に向けた動きは難航している。

東証・大証の統合が実現すると、国内では現物と先物で圧倒的な 取引所が誕生する。このため関係者によると、公正取引委員会の審査 も長期化する見通しで、統合の実現は13年春になる可能性が高い。ま た、当初は新会社の傘下に東証や大証が事業会社としてぶら下がるが、 統合効果を明確にするため、最終的には機能別に現物株、デリバティ ブ(派生商品)、決済、自主規制の4子会社への再編を目指す。

大証の米田社長は15日の定例会見で、東証との統合時期について 「まったく決まっていない」と強調する一方、統合への残る問題点と して、東証と大証の「過去の歴史や上場・非上場の違い」に言及。そ の上で、「問題点を話しながら解決をしていっている。いろんな議論を する中で前向きに進んでいくことがいいのではないか」と述べた。

両取引所の統合後はシステム投資を効率化できるため、日本市場 に参加する投資家の取引コストの低下につながり、東証と大証に重複 上場している企業にとっては、上場管理料が減少する見込みだ。さら に決済が一本化されれば、デリバティブ投資家は取引証拠金を東証と 大証にそれぞれ積む必要がなくなり、資金効率は上向く。

豪プラティパス・アセット・マネジメントのポートフォリオマネ ジャー、サイモン・ボノブリエ氏は「取引所の統合はコスト面を合理 化し、世界的にも取引手数料を下げる方向でのプレッシャーが見てと れる。投資家にとっても、顧客にとっても良い事」との見方だ。

東証株主107名、戦前は統合経験も

11年3月末の東証の株主数は107名、発行済株式数230万株。

4.4%を保有するモルガン・スタンレーMUFG証券が筆頭株主で、こ れに2.6%のSMBCフレンド証券とゴールドマン・サックス証券、

2.4%の三菱UFJモルガン・スタンレー証券、1.8%のリテラ・クレ ア証券などが続く。大証の大株主は、発行済み株式総数の11%を持つ ステートストリート・バンク・アンド・トラスト、7.5%のJPモルガ ンチェース銀行、7%のフィデリティ・マネジメント&リサーチなど。

東証と大証は、現在の取引所組織としては1949年に設立された。 ただそれ以前にも、1878年に株式取引所としてともに誕生し、1943 年 には特殊法人「日本証券取引所」として統合、47年に解散した歴史も 持つ。また大証は、1652-73年の大阪・米穀取引所で、世界初の先物 取引を開始したのが起源だ。

ブルームバーグ・データによると、14日時点の日本の株式時価総 額は3兆5161億ドルで、米国、中国に次ぐ世界3位。MSCI世界株 指数が09年3月9日にリーマン・ショック後の安値を付けて以降の変 化率は、米国86%増、中国74%増に対し、日本は41%増にとどまる。

しんきんアセットマネジメントの藤原直樹投信グループ長は、東 証は世界3位の市場ながら売買代金は減少しており、「今はアジア市場 の一部になっている。グローバルにみて日本の動きは遅れている」と 指摘。日本の存在感と競争力を高めるために、「東証と大証の統合は必 要で、方向性は市場にとってポジティブだ。ただ、両社の主導権争い から、スピード感のなさはネガティブ」と言う。

--取材協力:野原良明 Editor:Shintaro Inkyo、Tetsuki Murotani、Kenzo Taniai

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