TPP参加表明の好印象を台無しにする円売り介入の時代錯誤-社説

この数日間に日本経済をめぐって 歓迎すべきニュースが二つあった。

一つ目は、野田佳彦首相が、農協などの反対を押し切り、米国な ど9カ国が進めている環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加す る意向を表明したことだ。日本が競争力の向上や市場原理の導入を真 剣に考えているという期待を抱かせる。もう一つは、14日に発表され た7-9月期実質国内総生産(GDP)が、輸出増を受け4四半期ぶ りにプラスに転じたことだ。

だからこそ、輸出産業の下支えという無駄な努力のために円売り 介入という時代錯誤の切れ味の鈍い政策から日本が脱却できないよう に見えるのは残念なことだ。

野田首相ら日本の指導者たちは、先月の円売り介入について、市 場の健全性を取り戻すために不可欠だったと擁護するだろう。だが、 介入は実際には逆の効果を生むだけではなく、数十年にわたる失われ た時代を日本にもたらした改革の長期先送りに対して、野田首相がど の程度真剣に取り組もうとしているのか、疑問を抱かせる結果となっ ていると思う。

10月31日の円売り介入のタイミングは多くを物語っている。介 入は、企業の決算発表が集中する週の月曜日、安住淳財務相が何日も 警告した後に実施された。このため、企業の幹部は多額のドル資金を いつ本国に引き揚げればいいか十分に把握できた。決算を押し上げる ため、ちょうど良いタイミングでドルを円に換えることができた。

心配

だが、資本の流れはもろ刃の剣だ。気まぐれで円安になる可能性 があると分かったら、どれぐらいの投資家が円を保有しようと思うだ ろうか。日本の企業幹部は為替レートよりも、企業統治の方を心配す べきだ。オリンパスをめぐるスキャンダルは、日本が相変わらず閉鎖 的なルールに基づいた行動に固執していることを再認識させた。

アナリストの推計によると、先月末時点での政府・日本銀行によ る為替介入額は約8兆円に上る。介入を受け、円は一時最大4.7%下 落。その後、円は再び上昇した。世界的な需要不振や市場の動揺のほ か、震災やタイの洪水による工場閉鎖に苦慮する輸出業者にとっては、 一時的だったとはいえ、ありがたい助け舟だった。

しかし、繰り返される介入は成長を先食いするようなものだ。継 続的な民間部門への援助は現状への満足につながり、日本が必要とし ている創造的な破壊力を殺してしまう。日本は成長なくして、GDP の2倍に上る公的債務を削減することはできない。中国やインドや韓 国の台頭で、高齢化する日本の労働者が競争力を失う中で、20年以上 も続く停滞を容認すべきではない。

雇用保護

日本の円高対策の中心にあるのは、雇用創出ではなく雇用保護だ。 だから、新興企業に使うべき資金を大企業がすべて吸収してしまう。 新興企業の不在や、新興企業が生み出すことの多いイノベーション(革 新)の欠如が、日本で雇用増が十分達成されない主な理由だ。

日本には税制改革も必要だ。例えば、新興企業の法人税引き下げ や、雇用創出に対し税金を控除することにより、新興企業への投資を 促進すべきだ。世界銀行による起業しやすい国のランキングでは、日 本は183カ国中107位にとどまった。

日本ができることはもっとある。女性の労働力を活用することに より、大半の企業を支配する男性中心主義を変革することができる。 また、移民の促進により、現状を変えることがタブーだと見なされる 日本の経済や文化に新たな血を入れて、活性化できる可能性がある。 さらに、株主権利運動を活発化することで、無能で腐敗した経営者に 責任を取らせることもできるかもしれない。

日本は20年以上も戦後復興のための経済モデルに依存してきた。 だが、このやり方がもはや通用しないことは明白だ。野田首相らの指 導者は、円売り介入について、今回は違う結果になると期待しながら、 何度も何度も同じことを繰り返していることにほかならないというこ とに現時点で気づくべきだ。

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