「日銀サーベイ」金利予想、経済物価情勢、金融政策の展望コメント

【記者:日高正裕】

11月15日(ブルームバーグ):ブルームバーグ・ニュースは、日 本銀行が15、16日開く金融政策決定会合を前に、有力「日銀ウオッチ ャー」14人に金融政策の予想を聞いた。質問内容は以下の通り。アン ケート回答期限は11日午後零時。エコノミスト予想のまとめ記事とし て「【クレジット市場】日銀は現状維持か、急速な円高進めば追加緩和 も」を同時配信した。

1)今回の会合で予想される政策、2)日銀が政策金利を「引き 下げる」時期、3)日銀が政策金利を「引き上げる」時期、4)~11) 政策金利の予想水準、12)経済・物価の見通し、13)金融政策運営の 見通し(氏名50音順、カッコは前回回答)。

●三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純チーフ債券ストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年度以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)欧州債務危機の拡大・長期化リスクが世界経済の不確実性を一段 と高めている。ギリシャは大連立内閣による財政緊縮案の受け入れと 民間投資家の負担拡大によりデフォルトという最悪事態はひとまず回 避される見通し。しかし国債暴落という債務危機は実質国内総生産(G DP)・ユーロ圏3位のイタリアに波及してしまった。

ユーロ圏経済は銀行資本不足による信用収縮と景気悪化という 「負の連鎖」の広がりによって景気後退局面入りする公算が強まった。 「第2のリーマン・ショック(=世界的な経済・金融危機)」に発展す る可能性もあながち否定できない。

米国経済はIT関連企業の業績や雇用が底堅さを見せているので、 夏場に懸念された景気後退リスクが低下した。しかし欧州景気後退の 悪影響が懸念される。新興国経済も同様。唯一の明るい材料は世界経 済のけん引役と期待される中国でインフレ圧力が弱まってきた点。金 融引き締め強化による景気のオーバーキル(ハードランディング)・リ スクが低下してきた。

国内景気は第3次補正予算の成立を受けて本格化する復旧・復興 需要に支えられ、回復経路に復帰してゆく。ただし欧州債務危機の長 期化を背景とした超円高(1ドル=70円台)の定着、海外景気の減速、 民主党政権のエネルギー・原子力政策の迷走による電力制約の長期化 より低成長を強いられ、景気回復の実感が伴わない。

底流では中小・零細企業まで巻き込んだ海外生産シフトの進行に 伴い、設備投資や雇用がじわじわ空洞化して、潜在成長率が低下する。 物価もデフレギャップ縮小の遅れから2013年度中にかけて軟調に推 移。デフレからの完全脱却は14年度以降に後ずれする。

13)今会合は現状維持を予想。白川方明日銀総裁は「景気下振れリス クを前倒しで織り込んで前回10月27日会合で追加緩和を決定した」 と説明しているので、今回は追加緩和を温存する。なお前回会合で10 兆円の基金拡大を求めて議長案(5兆円の基金拡大)に反対票を投じ た宮尾龍蔵審議委員が追加緩和を提案するかどうかが注目される。

景気動向が「緩やかな回復経路に復していく」というシナリオか ら下振れする可能性が高まったと判断するとき追加緩和を検討する。 トリガーとして「8/4追加緩和」や「10/27追加緩和」のときと同 様、円高や株安の進行を注視してゆく。追加緩和策は「資産買い入れ 等基金」の増額が基本線。対象の長期国債の残存期間を現状の「1- 2年程度」から例えば「1-3年程度」に伸ばして「長めの市場金利 の低下を促す」スタンスをより明確化することも考えられる。

●SMBC日興証券の岩下真理チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :現状維持(賛成多数) 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年度以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)前回会合後発表された国内指標は、供給制約の解消により持ち直 した生産が9月分で前月比▲4.0%と半年ぶりのマイナス。製造工業生 産予測指数の前月比は10月+2.3%、11月+1.8%と2カ月連続の増産 見通しで、緩やかな増加基調の持続は示されたが、1カ月前に比べる とそのペースは鈍化した。

その上、この時点の計画には10月下旬の円の最高値更新やタイ洪 水被害の影響が織り込まれておらず、今後、下方修正される可能性が 高い。また、10月上中旬の貿易統計では輸出が前年比▲1.6%と弱い。 日銀が展望リポートで示したように、年度下期の輸出と生産は海外経 済減速と円高の影響を受け始めていることが確認された。

海外では米7-9月の実質GDPが前期比年率+2.5%と堅調な数 字となり、過度な米国景気の悲観論は後退した。米10月のISM製造 業指数は総合で50.8(9月51.6)に低下したが50はキープ。新規受 注は52.4(9月49.6)に上昇する健闘を見せた。加えて米10月の雇 用統計は非農業部門雇用者数が前月比+8万人も8月、9月分が上方修 正。今年に入ってからの民間部門の月間平均ペースは+15.3万人と堅 調な動きとなっている。

さらに10月の労働投入量が7-9月対比で+0.4%と順調なスタ ートとなり、10-12月の米国経済を見極める時間的な余裕は与えられ た。25日以降のクリスマス商戦が正念場となるだろう。それに対し、 中国10月のPMIは総合が50.4(9月51.2)に低下、09年2月以来 の低水準となり減速懸念を強めた。

現在の世界経済は欧州のリセッション(10-12月期のマイナス成 長)懸念が強まり、欧州経済の悪影響が新興国に波及する過程にあり、 まだ米国には打撃を与えていない。しかし、欧州発の金融と経済の負 の相乗作用が生じ始めている状況下、残念ながら米国に影響が及ぶの は時間の問題と思われる。

3年前のリーマンショック時の経済収縮を思い出してみても、い ったんグローバルな金融不安が生じ、経済に悪影響を及ぶ期間は、短 く見ても半年、今回の場合は欧州銀行に対する資本増強の期限が来年 6月末と設定されており、その辺りまでは、先進国では日本の復興需 要以外で明るい話はなかなか出にくい状況と考えられる。3年前の景 気回復のけん引役が新興国であったように、今回もインフレ抑制に望 ましい減速でとどまり、適度な成長の持続が期待される。

13)8月4日、10月27日の追加緩和決定のプロセスからは、会合直 前にドル円が最高値更新をすると、日銀が追加緩和する可能性が高ま ると言わざるを得ない。欧州での日替わりメニューに市場が動いてい る不安定な状況は続いており、ユーロ安進行となれば、日本の大規模 な為替介入の効果も薄れる可能性がある。安住財務相が「納得いくま でやる」と発言した以上、政府の為替介入と一体化した日銀の政策が 求められる状況は当面、続くと考えるのが自然であろう。

日銀としても政策総動員の心構えと思われる。日銀のさらなる追 加のタイミングは金融市場に混乱が生じた場合には早まり、景気の下 振れリスクが顕在化すれば、決定せざるを得ない。なお9日の中村審 議委員の講演では、海外以外の国内では企業マインドの下振れリスク を挙げていた。次なる国内の重要指標は12月15日発表の日銀短観・ 12月調査と言える。

追加緩和のオプションでは、引き続き資産買い入れ等基金の増額 がメインとなろう。前回会合で宮尾委員が10兆円増額を提案したこと、 買い入れ終了期間を12年末に据え置いたこと等から、追加余地はまだ あると受け止められる。対象資産の優先順位が高いのは引き続き長期 国債、短期国債となろう。ただし、展望リポートでこの先2年の見通 ししか示していない状況下、買入対象国債の長期化に対する日銀執行 部のハードルは意外と高いようだ。

また、為替介入資金の調達に伴い為券が増発、いずれは市中での 短期国債の増発となることが見込まれることから、次回は短期国債の 買い入れ増額により、やや長めの金利低下を促すことが考えられる。 一方で10月27日の声明文では「CPや社債の発行環境が良好な状態」 と明記されており、リスクプレミアムが拡大していない状況下では、 すぐに増額対象とはなり難いだろう。

8日の1500億円オファーの社債オペでは初の札割れとなったが、 同年限の国債よりも落札金利が低いという魅力があること、まだ1年 以上の買い入れ期間が残っていること等から、日銀は焦って条件変更 をする状況とは捉えていないように思われる。次回12月分の2000億 円オファー時の結果を見る余裕はありそうだ。他方、株安の進行次第 で指数連動型上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(J-REI T)の増額の可能性が高まると思われる。

最後にウルトラC案として、外債の購入が残されている。外為法 7条に規定されているように、「為替の安定」は財務省の所管事項であ り、財務省の認可が必要な事項である。それでも、岩田元副総裁が国 家戦略会議(10月28日開催)の席で50兆円規模の「金融危機予防基 金」の創設を提案した。具体的には日銀が外債を50兆円購入し、その 損失負担を財務省がするというもの。今後、政府と一体化した円高対 策の検討を進めていく段階で、新たな道が開ける可能性も否定はでき ないだろう。

●みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト 1)今回会合 :現状維持(全員一致) 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年1-3月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)けん引役である輸出に海外景気減速・円高・タイ大洪水といった 逆風が吹き付けており、先行き不透明感が強まっているものの、世界 経済の回復基調自体が維持される中で、景気の腰折れはないとみてい る。また、当面は個人消費が景気の下支え役として機能するほか、来 年度前半には公共投資上積みによる効果が期待できる。

13)円高リスクが高まれば追加緩和というパターンは今後も変わりが ないだろう。前回会合で5兆円の追加緩和を賛成多数で決めたものの、 宮尾審議委員が10兆円増額を提案したという経緯があるため、あと5 兆円の追加緩和まではカードとして残した形だと考えることができる。

また、9月のように「前広にリスクに対応した」という論理構成 をとらず、「下振れリスクの増大に対応した」といった説明にしたこと から、欧州債務危機の展開次第で「リスクがさらに増大した」と説明 しながら5兆円の追加緩和に動く可能性は、今回の会合を含め、常に あるとみている。

●東短リサーチの加藤出チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年4-6月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)来年の日本経済は補正予算、震災からの復興需要によってサポー トされる部分があるため、タイの洪水の影響はあるものの、メインシ ナリオとしては欧米経済より成長率が高い状態が続くだろう。しかし、 欧州市場の混乱は世界経済の不透明感を一段と高めている。

中国経済は自身の要因でハードランディングを起こす確率は当面 低いが、欧州の混乱が深刻化すれば新興国の需要も減退するだろう。 ユーロ圏がソブリン危機のイタリアへの波及を阻止できない場合は、 日本経済への打撃が深刻化するため、日銀も警戒を強めているだろう。

13)米連邦準備制度理事会(FRB)の9月米連邦公開市場委員会(F OMC)では準備預金への付利引き下げを主張するメンバーが多くい たが、短期金融市場への弊害を懸念するメンバーの方がやや多かった ため引き下げは見送られた。バーナンキ議長は11月FOMC後の記者 会見で、準備預金への付利の引き下げについて言及しなかった。

11月FOMCで、その政策は今後の追加緩和策のリストから外さ れた可能性が考えられる。FRBが同金利を引き下げないならば、日 銀が当座預金への付利を引き下げること可能性もないだろう。日銀は 10月下旬に資産買い入れ等基金を拡大し、現在それを執行中であるた め、基本的にはしばらくはその効果を見極めようとするだろう(外為 市場介入が行われたこともあって、日銀は当座預金残高を高水準で推 移させると思われる)。

ただし、仮に欧州の混乱によって市場が大きなショックを受け、 「リスク・オフ」モードの高まりから円高が激しくなるなどの事態が 生じたときは、日銀は場合によっては臨時会合を開くなどして、大胆 な流動性供給策や、資産買い入れ等基金の拡大を決定するだろう。

●JPモルガン証券の菅野雅明チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :例外的な危機的状況のほかは想定できず 3)利上げ時期 :2014年以降 4)11年12月末 :0.00%-0.10% 5)12年3月末 :0.00%-0.10% 6)12年6月末 :0.00%-0.10% 7)12年9月末 :0.00%-0.10% 8)12年12月末 :0.00%-0.10% 9)13年3月末 :0.00%-0.10% 10)13年6月末 :0.00%-0.10% 11)13年9月末 :0.00%-0.10%

12)欧州経済が景気後退局面入りした可能性が高まる一方、米国経済 指標、とりわけ設備投資などの企業関連指標が堅調に推移しているこ と、欧州連合(EU)首脳会議を受けた株価の持ち直しなどから、世 界経済がスパイラル的に後退期入りする可能性は薄れた。中国経済も 食料品インフレがピークアウトしつつあり、金融も部分的ながら引き 締めが緩やかに解除される方向に進みつつあることから、経済は年明 け以降持ち直しが期待できるなど、明るい兆しもうかがわれる。

日本経済については、足元はタイの洪水の影響から景気のけん引 役であった自動車の生産が下振れる可能性が高まったものの、来年第 1四半期以降は復興需要が本格化することから、内需を中心とした回 復が見込める。しかし、ユーロサミットの成果は「時間を買った」に 過ぎない。具体策はこれからだ。欧州財政危機はイタリアへ飛び火し、 実体経済面でも景気後退の色彩が強まっている。

欧州の銀行健全化計画が銀行の貸し渋りを招来し、とくに欧州の 景気が一段と悪化すると、具体策が出揃う前に危機が再燃しないとも 限らない。欧州系銀行による資産圧縮が新興国の資金繰り困難化を招 く恐れもある。中東欧、中南米など欧州系銀行の貸出シェアが高い地 域は要注意だ。また欧州ソブリン債の価格下落から金融機関の損失が 顕現化する可能性も否定できない。

イタリアの債務危機が顕現化しつつあるため、欧州サミットで合 意された欧州金融安定化ファシリティ(EFSF)の強化策について も、早くも資金面の限界が明らかになった。イタリアの債務危機が欧 州発の世界的な金融不安につながるようであれば、これらのリスクが 顕現化すると、世界経済の持ち直し、日本の復興需要に基づく回復も 短命に終わることも考えられる。

同時に、日本も構造問題の先送りは許されない。内閣府によると、 足元の需給ギャップは3%前後とかなり開いているが、9月失業率は

4.1%まで急低下した一方、短観などが示す雇用の過剰感は急速に解消 に向かいつつある。団塊の世代が退職する一方で少子化の影響で労働 市場への新規参入が減少しつつあるからだ。

確かに雇用者数自体は足元減少しているので、雇用市場に過熱感 があるわけではなく、賃金インフレが直ちに発生する状況はない。企 業の海外生産シフト加速から、労働需要が急速に高まる状況でもなく、 労働需給は微妙なバランスが保たれる可能性もある。緩やかなデフレ は当面続くと思われるが、同時に潜在成長率の低下は将来、日本経済 をデフレではなく、スタグフレーションに追い込む可能性もある。

さらに深刻なのは、潜在成長率の低下は社会保障の支出を通じて 財政が構造的にさらに悪化することを示している。財政再建のみなら ず、スタグフレーション回避のためにも成長の天井を引き上げる必要 がある。当面は復興増税のほか、消費税引き上げ、環太平洋経済連携 協定(TTP)加盟の是非が重要な政治案件だが、もはや問題先送り は許されない。

野田政権は「中庸」の衣を脱ぎ捨てて、世論に直接訴えかけるこ とを切望する。もし、TPP参加について断固たる姿勢を示すことが できないと、日本は経済外交面でますます孤立することになる。今回 のTPP参加問題は日本が世界から孤立を深めるかどうかの分かれ目 になる。

13)日銀は10月27日に「5兆円の基金拡大」という小幅の追加緩和 を発表した。日銀の公式見解は「欧州財政危機の深刻化など先行き情 勢の不透明化に対応したもの」ということだが、真意が「円高対策」 にあることは明らかだ。しかし円高対策という側面からは、7-8兆 円規模の巨額介入を実施した政府(財務省)と日銀の間にはかなりの 温度差が見受けられる。

日銀は「円高の要因は、世界全体の不確実性が大きいこと」(白川 総裁)との認識であり、円高対策に関する日銀の日本の政策対応余地 は限定的との見方だ。白川総裁のこうした「クールな見方」は正しい が、そうであれば、今後円高がさらに進展しても、株価の急落や明確 な景気後退のシグナルがない限り、日銀が打ち出す円高対策は、今回 同様「基金の小幅拡大」にとどまるであろう。

もっとも、今回5兆円の国債追加購入を決定したことで、国債購 入枠は9兆円となり、基金での国債保有残高(1.8兆円<10月20日>) とのかい離が大幅に拡大した。日銀が1、2年物国債利回りを押し下 げて円高対策としたいのであれば、国債購入枠を拡大するよりも国債 購入の積極化が必要になる。もっとも、2年債の利回りは0.134%と 3カ月の0.10%を0.034%上回るにとどまっている。2年債の利回り 低下余地は限定的だ。

日銀は「企業の借入期間は3年以下」としているが、5年債の利 回りを低下させ、企業に5年物の銀行ローンを借りやすくする、ある いは銀行に5年物の債券・貸出市場を拡大させることも考えてよいの ではないか。社債市場との間隙を埋めるためにも必要だ。

そうであれば、日銀は基金で購入する国債の年限を5年に延長す るという選択肢が生まれてくる。年限の延長を行わないと、基金が保 有する国債の残高増加は困難だ。もっとも、国債の利回り低下で最も 恩恵を受けるのは政府なので、日銀は政府に対して、財政再建に向け た徹底した取り組みを併せて強く要求すべきだ。

●第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年度以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)欧州危機の連鎖が続く中では景気のダウンサイドリスクが懸念。 消費者物価は10月でたばこ税のはく落でもわずかなプラスを維持。そ の後の物価動向にどれだけの上昇力があるかに注目。

13)今後さらに円高が急進し、為替介入が大規模に行われるのならば、 日銀の金融緩和でその流れを補強せざるを得なくなる。

●BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年1-3月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)各国で次から次へと新たな問題が生じているのはなぜか。実は、 各国のいずれの問題もその根本的な原因は、世界金融危機の後の経済 政策の誤りにある。米欧では痛みを伴う構造政策を先送りする一方で、 バブル崩壊後の調整圧力を緩和すべくアグレッシブな財政・金融政策 を発動した。

新興国への金融緩和効果の波及も加わり、09年半ばから世界経済 は回復を始めたが、11年に入ると財政・金融政策の効果がはく落し始 めたのである。効果はく落というよりも、大きな副作用が表れ始めた と言った方がよいのかもしれない。すなわち、08年の世界金融危機に 対する誤った日米欧の積極的なマクロ安定化政策が、再び新たな危機 を生み出しつつある。

09年半ば以降、世界経済が回復に転じたかに見えたのは、米欧が バランスシート問題や財政赤字問題を先送りする一方、財政政策によ って「将来所得を先食い」し、金融政策によって新興国の「需要の先 食い」を行ったためである。財政政策については、ユーロ圏の一部で は文字通り限界に達し、南欧のソブリン危機はユーロ圏の金融システ ムの動揺につながっている。

同時に、欧州系金融機関のデレバレッジが新興国の資本逆流をも たらし、対外借入れへの依存度が大きい中東欧などで経済危機が生じ るリスクがある。中南米やアジアの一部の国でも資本逆流が生じ、ダ メージを被るかもしれない。新興国の高成長が終わったとまでは考え ないが、09年以降の世界経済の回復の主たる要因が新興国の「需要の 先食い」であったことを考えると、しばらくは高い成長は難しい。世 界経済が再び後退局面入りするリスクは高まりつつある。

13)今後10年程度の日本の1人当たり潜在成長率は1%程度である。 バランスシート問題やソブリン問題に直面する米欧に比べると倍近い 伸びとなる。ただ日本の生産年齢人口は今後10年間、年率0.9%のペ ースで縮小するため、経済全体の潜在成長率は0.1%程度にとどまる。

このように、潜在成長率が低いことの主因は生産年齢人口の減少 であり、低成長であることが必ずしも不況を意味するわけではない。 このため、低い成長を前提に、あらゆる経済政策を構築しなければな らない(もちろん、規制緩和・規制改革によって1人当たりの潜在成 長率を高めていくことは重要である)。

景気を論じる際、マクロ経済全体ではなく、1人当たりの成長率 の動向を論じなければ、誤った結論(問題先送り)を導く恐れがある。 「まずは景気回復」、「まずはデフレ脱却」を主張し、財政・金融政策 などのマクロ安定化政策に頼ることは、構造問題の先送りに過ぎない。 そもそも財政・金融政策では構造問題を解決できないし、潜在成長率 を高めることもできない。

マクロ安定化政策によって景気が一時的に良くなるのは(良くな ったように見えるのは)、将来の所得を前借り(先食い)しているため である。経済水準や消費水準の恒久的な上昇が生じるわけではない。 財政の本質は所得の移転なのであって、政府支出が新たな付加価値を 生み出しているわけではない。

低金利政策も新たな付加価値を生み出しているのではなく、企業 や家計に支出を前倒しさせているだけである。ただし、ゼロ金利政策 の長期化・固定化でその効果もほとんど失われている。それにもかか わらず、さらなる金融緩和を求めることは、構造政策を先送りするこ との言い訳を探しているようなものである。

●モルガン・スタンレーMUFG証券の佐藤健裕チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持(賛成多数) 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2013年10-12月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)国内では7-9月実質GDPが震災後の経済活動の回復を受けて 前期比年率+6%超と一時的に高成長となったもよう。高成長は個人消 費と外需が主因。個人消費はげた効果から4四半期振りに前期比プラ スに転じ、GDPを押し上げよう。また輸出は国内のサプライチェー ンの回復や海外の日本製品の在庫復元の動きを映じて、5月以降増加 基調が続いており、7-9月は高い伸び率となろう。

もっとも、世界経済は年末に向けて下振れリスクをはらみつつ波 乱含みで推移の見込みで、国内も先行きは減速懸念が強い。10-12月 は弊社欧州経済チームが金融面の制約の強まりを理由にゼロ成長への 失速を予想するのを筆頭に、グローバルに景気減速が見込まれ、輸出 の減速が予想される。目先はタイの洪水長期化に伴うサプライチェー ン問題もあることから、足元唯一好調な自動車生産にも陰りが生じ、 年末にかけて生産全体に減速感が強まる可能性があろう。

海外では欧州を中心に金融機関のバランスシート削減の動きが年 末にかけて強まることが予想されることから、目先景況感が急激に悪 化する可能性があろう。米国では財政赤字削減に向けた議会の交渉が 不首尾に終わる可能性もあり、年末商戦を控えて消費マインドへの影 響が懸念される。

なお国内の消費者物価については昨年10月のたばこ増税と損害 保険料引き上げの影響がはく落することから、目先再び前年比マイナ ス圏に沈む可能性が高い。先行きも過去の需給ギャップ悪化の影響が タイムラグを伴って現れることから、消費者物価のマイナス幅は拡大 の見込み。

13)海外経済の先行き不確実性は引き続き高く、12月の米連邦公開市 場委員会(FOMC)で追加緩和発動の可能性もくすぶることから、 日銀も引き続き対抗上緩和を模索しよう。ただし、10/27に追加緩和 を実施したばかりであることから、11月会合で緩和実施の可能性は現 状では30%以下(年内の可能性は60%超とみる)。

予想される緩和メニューは①資産買入れ基金の一段の増額②資産 買い入れ基金における国債の年限延長(2年→5年程度)③(米連銀が 実施の場合には)超過準備に対する付利水準の引き下げ。

なお、実質ゼロ金利解除の時間軸は展望不能なほど長い。日銀予 想では13年度にかけ消費者物価は「中長期的な物価安定の理解」の中 心値である1%にやや接近する見通しだが、日銀の物価予想には常に 上方バイアスがあることから、市場はこれをまっとうには受け止めず、 したがって時間軸にも変化はなかろう。

●東海東京証券の佐野一彦チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :可能性あるが時期の特定困難 3)利上げ時期 :2013年10-12月以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国のリセッション懸念は後退したが、欧州の特に来年の景気見 通しは一段と弱くなった。円高は是正されておらず、目先タイの洪水 の影響もある。そして中国はソフトランディングの過程にあり、けん 引役の期待はできない。国内に目を転じると震災の復興需要が今後出 てくるものの、当初の見込みに比べるとその立ち上がりは遅れている。

したがって、足元、経済の全般的な見通しは若干ながらも下方修 正傾向にあろう。引き続き欧州の債務・財政問題は大きく、今後もそ の動向によって世界的な景気後退懸念が強まる可能性が否定できない。 日銀の物価見通しは若干強めの感がある。13年度を展望しても、消費 者物価指数(除く生鮮食品)は0.0~0.5%程度の上昇にとどまる可能 性が高い。

13)今会合は「特になし」と予想している。もっとも今後は「資産買 入れの対象になる長期国債の残存年限を現状の1-2年から1-5年 に長期化する」を決定という見通しは変わらない。しかし10月31日 の大規模為替介入によって円の水準が切り下がったため、「年末まで」 に実施を「来年3月末まで」に変更する。また、70円に迫る円高が実 現すれば、超過準備に対する付利の引き下げや政策金利の上限引き下 げなどの可能性もありと見ている。

●クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2015年度以降(2014年以降) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)外需の先行指標である米国製造業ISMは10月に改善した。また、 タイ洪水の影響は当初想定比軽微であるほか、国内生産代替が行われ る見込み。製造業の在庫積み増し意欲も高まる傾向。輸出・生産調整 は9-11月のミニ調整に終わり、12月からは再び回復軌道に。このた め7-9月高成長、10-12月踊り場、1-3月再度回復のパスをたど る公算。ただリスク要因として欧州内需減速・中国生産減には注目し ておく必要。

12年度についてはそこそこ堅調な成長が見込まれる。復興需要が 継続するほか、外需も大幅な下振れはないと読む。欧州はEFSF大 幅拡充、欧州中央銀行(ECB)金融緩和拡大、ドイツによる財政刺 激策導入で底割れを回避。アジアは中国が消費下支え策導入に踏み込 む見込み。米国も追加減税で個人消費が安定へ。

国内のデフレ的状況に大きな変化はなし。短期的には国際市況下 落、輸入価格下落が物価上昇を抑制。来年度も円高傾向継続でCPI (コア)は小幅の前年比マイナスを維持へ。

13)山場は1-3月。ECBは追加利下げと国債購入拡大に、FRB もQE3導入にそれぞれ踏み切り、円実効レートの円高が加速。日銀 は固定金利オペ金利、当預付利金利の引き下げを決定する公算。

●信州大学の真壁昭夫経済学部教授 1)今回会合 :資産買い入れ等基金増額など追加緩和の可能性も 2)利下げ時期 :当面なし、世界的混乱あれば引き下げの可能性も 3)利上げ時期 :2013年10-12月以降(2013年7-9月以降) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(0.25%)

12)米国経済は緩やかな回復を続けているものの、今後の展開次第で は調整局面入りする可能性がある。特に労働市場の回復の遅れは最大 の注目点だ。個人消費、企業業績、住宅市場の動向にとっても失業率 の改善が大きなメルクマールとなろう。足元の底堅い経済指標の発表 を受けて一部には景気に対する強気な見方も増えているようだ。

ただ、米国の家計の負債圧縮、住宅市場の回復の遅さ等、バラン スシート調整がいまだ終わっていない。過度な楽観論は禁物。緩和的 な金融政策のため、内需の回復を伴わない形で緩やかにインフレ率は 上昇しよう。年末商戦への大きな期待も抱きづらい中、QE3への期 待は着実に高まっている。問題は、年末までに米財政が債務上限に達 する可能性がある中、どこまで量的緩和策と財政緊縮のバランスを維 持できるかだ。このバランスが崩れれば、再度、米国の財政問題が注 目される局面があろう。

欧州はソブリン問題がイタリアにまで波及してしまった。もはや ソブリンリスクはPIIGSの問題にとどまらない。フランスの格下 げ懸念や、ユーロおよびEUの崩壊懸念を高めるファクターだ。まさ に欧州は今後の世界経済の最大の懸案事項といえよう。欧州問題の重 要なポイントは、EU、ECBが抜本的な解決策を見いだせないこと にある。

10月27日のEUサミットの包括的な合意内容はすでに信頼感を 失っている。国際的な支援体制の構築は急務である。次回のG20で内 容のある指針が打ち出されないとなれば、世界の金融市場がフリーフ ォールに陥ってしまうリスクは一段と高まる。特に足元のイタリア国 債の急落は世界の金融機関のバランスシートに対する懸念を高めるフ ァクターだ。

MFグローバルの破たんに次ぐネガティブイベントが発生するリ スクは急速に高まっていると見るべきだろう。その点で、欧州が震源 となって世界経済の景気後退が進む可能性も高い。また、欧州でもE CBによるドル資金供給などの緩和策を受けて、インフレ率が上昇し ていくリスクが懸念される。

新興国では今後もインフレ率は緩やかな上昇基調をたどる可能性 が高い。特にドルの減価リスク、カネ余り現象を受けた商品価格の上 昇リスクには注意が必要だ。中国では10月のCPIが5.5%となり、 市場ではひとまず金融緩和の余地ができたとの見方が多い。ただ、バ ブル崩壊への懸念、金融機関の不良債権問題等、景気の先行き不透明 感は強い。食品価格の一時的な低下を理由に、年末にかけてインフレ 率が低下していくとの見方には注意が必要だろう。

日本は緩やかな景気回復過程にあるが、円高が回復の大きな重石 となっている。ここにきてオリンパスの損失飛ばしが発覚し、投資家 のリスク許容度も低下している。政府は円高に対して徹底して介入し ていくとの姿勢を示しているものの、その効果には疑問符が付く。イ タリアの財政問題も重なり、資金逃避先としての円買い圧力は高まっ ていくだろう。そうなると、企業収益は大幅に悪化する可能性が高い。

わが国にとっても、スイス中銀のように明確な為替レートを示す など、市場に対してはっきりとした形での警戒ラインを提示するなど の介入姿勢が必要になるだろう。相当期間、マクロでのデフレ圧力が 残るとみる。インフレ懸念が台頭するまでにはまだ時間的余裕がある。 一方、イタリアの国債市場が事実上、持続不可能な水準に達したこと を踏まえると、財政再建へ残された時間は限られている。

13)引き続き日銀は金融市場の安定・景気支援を目的に追加緩和策を 検討していくと考えられる。政府からの協力要請も高まっていくはず だ。また、欧州ソブリンリスク問題はわが国の金融機関の経営体力の 大幅な低下を生み出すファクターである。特にイタリア国債の保有は 大きな懸念ポイントだ。その点でも緩和への期待は高まるものと考え られる。

追加緩和を検討するにあたり、中心となるのは資産買い入れ等基 金の規模拡大だろう。加えて外債の購入、社債買い入れにおける基準 緩和も検討される可能性があろう。

●野村証券の松沢中チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :メインシナリオとして想定せず 3)利上げ時期 :13年10-12月にレンジ停止、14年1-3月利上げ 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)米国景気指標は底入れしてきており、欧州金融不安が解消してい れば、金融緩和の打ち止め感が台頭していてもおかしくない。しかし 現実には金融不安がまだ強まっている中で、それを乗り越えて投資家 にリスクオンさせるほど、景気回復力は強くない。

日本でも設備投資は底堅いが、輸出が減速、復興予算による需要 押し上げもまだ顕在化しておらず、V字型回復のシナリオはすっかり 鳴りを潜めた。またタイの洪水の影響が日米の自動車生産に現れてく るため、景気回復感が出てくるタイミングも来年に後ずれする。

13)来年3月末までに、欧州金融危機が投資家のリスク回避を強める 局面がまだ予想され、日銀が追加金融緩和に及ぶ可能性は高い。しか し今のところ予想できるのは、資産買い入れ等基金増額ぐらいだ。前 回10月がそうであったように、金利低下効果は小さいだろう。

オペの効果を高めるために、買い取り対象年限を最大5年に伸ば す可能性はあるが、日銀時間軸がすでに2.8年程度に伸びており、政 策効果で5年金利が下がる余地はせいぜい5bpだろう。政策金利を下 げれば、追加的にその分はイールドカーブを押し下げられるが、今の ところ日銀にその意思は乏しいようだ。

●シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年10-12月(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 8)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)海外景気が精彩を欠く中、日本の輸出・鉱工業生産は足踏み状態 に陥りつつある。米国景気は夏場に想定されたよりは底堅く推移して いる。ただ7-9月の個人消費の復調は家計貯蓄率の急低下、供給制 約の弱まりを背景とする自動車販売の増加によるものであり、やや出 来過ぎの感が否めない。10-12月期以降の米国景気は再びやや鈍化す る可能性が高いだろう。

中国景気も既往の引き締め措置の効果や欧州向け輸出の停滞を背 景に当面、減速を続けると予想される。一方、欧州景気はソブリン債 務・銀行危機を背景とする金融市場の緊張を主因に10-12月以降、後 退局面に入る可能性が高い。銀行資産内容の劣化を背景にインターバ ンク市場が機能不全に陥り、それが銀行の融資姿勢のタイト化を通じ て、実体経済に強く下押しするという1997-98年の日本、08年秋の 米国と同じ状況に陥っている。

こうした外部環境の中、日本の輸出・生産の足踏みは来年春ころ まで続くと予想される。一方、GDP成長率は官民での復興需要に押 し上げられ、底堅く推移する可能性が高いが、こうした外生的需要を 除いた景気の実勢は厳しさを増すだろう。

直近9月までコアCPIの伸びを押し上げてきた一時的要因、す なわち、たばこ税や傷害保険料の引き上げ、エネルギー価格の上昇は 10月以降、来年春にかけてはく落していく。このためコアCPIは前 年割れが定着することになると予想される。

復興需要により需給ギャップは表面上、縮小していく形にはなろ うが、あくまでも外生的・一時的な要因であり、物価の先行きを考え る上で過大評価は禁物である。日銀の2012年度のコアCPIの予想 (前年比プラス0.1%)はやや楽観的過ぎる印象が否めない。

13)今回会合については、前回、円高の進行を受けて、急きょ追加緩 和措置が打ち出された経緯があることから、既往の緩和措置の効果を 見極める方針が示されるにとどまろう。ただ、今後、輸出・鉱工業生 産が足踏み状態に陥り、コアCPIの前年比マイナスが定着するとす れば、為替相場の動向にかかわらず、どこかの時点で、追加緩和が実 施されるとみるのが自然なように思える。

また、欧州情勢をめぐる不透明感が払しょくされない、あるいは 更に高まる中、今後も瞬間的に円高が進む場面が想定される。以上の 諸点から、今後数カ月以内に資産買い入れ等基金の増額と、買い入れ 対象国債の年限長期化(現行の2年までから5年までへ)が実施され ると予想している。

●バークレイズ・キャピタル証券の森田長太郎チーフストラテジスト 1)今回会合 :現状維持 2)利下げ時期 :なし 3)利上げ時期 :2014年以降(同) 4)11年12月末 :0.00%-0.10%(同) 5)12年3月末 :0.00%-0.10%(同) 6)12年6月末 :0.00%-0.10%(同) 7)12年9月末 :0.00%-0.10%(同) 8)12年12月末 :0.00%-0.10%(同) 9)13年3月末 :0.00%-0.10%(同) 10)13年6月末 :0.00%-0.10%(同) 11)13年9月末 :0.00%-0.10%(同)

12)国内景気指標は7月をピークとする減速局面にあるが、足元の指 標で特に減速が加速している印象はない。中国や米国の指標はむしろ 減速から安定へと変りつつあり、遅行的に動く日本の指標も1、2カ 月は弱めの動きが続いた後、年明け以降にはやや反転の兆しも出てく るのではないか。

欧州情勢を懸念した株価の低迷は続いているが、欧米の株価水準 は9月下旬から10月上旬に付けた安値よりはかなり高い水準で推移 しており、ここまでのところでいったん欧州債務危機の深刻化、それ に伴う景気後退懸念を織り込んでいるものと見られる。この動きが一 巡してくるようであれば、日本や米国で景気後退といった事態にまで 至ることはないだろう。

過去2四半期にわたる景気の減速傾向から、物価にも今後下押し 圧力が加わる可能性がある一方で、原油価格が上昇してきており、商 品市況の調整による物価下押し圧力は思ったほどは強まらない流れだ ろう。

13)急速な円高に対応した金融緩和を8月、10月と2度行なっており、 政策面での対応はある程度出尽くしてきているように思える。欧州問 題がさらに拡大して、円が再び75円方向に買い進まれるような事態と なれば、日銀は3度目の対応を迫られることになろうが、あくまでも 欧州発で予想外の大きなリスクイベントが発生することがその前提と なる。

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