7-9月GDPは年率6.0%増-輸出増、自粛緩和で消費持ち直し

7-9月期の実質国内総生産(G DP)1次速報値は前期比年率で6.0%増と、4四半期ぶりにプラス に転じた。プラス幅はほぼ事前の市場予想通りだった。3月の東日本 大震災で毀損(きそん)した企業のサプライチェーン(部品の調達網) の復旧に伴い輸出、設備投資が増加したことに加え、自粛ムードの緩 和により個人消費が持ち直したことがGDPを押し上げた。

内閣府が14日発表した同期のGDP1次速報値は物価変動の影 響を除いた実質で、前期比1.5%増となった。GDPの約6割を占め る個人消費は同1.0%増、設備投資は同1.1%増、財貨・サービスの輸 出から輸入を差し引いた純輸出の押し上げ寄与はプラス0.4ポイント だった。ブルームバーグ・ニュースによる事前調査の予想中央値は、 前期比が1.5%増、年率換算では5.9%増だった。

国内景気は今後、震災復興関連の需要が徐々に表れてくるとみら れ、緩やかな回復に向かうと見込まれている。しかし、世界経済の減 速や円高の進行、タイの洪水被害の影響が今後、輸出や生産面に出て くるとみられる上、欧州債務危機で金融市場では緊張感が高まってお り、先行き不透明感が強まっている。

第一生命経済研究所の新家義貴主任エコノミストは発表を踏まえ、 「サプライチェーン復旧により供給制約が緩和されたことで輸出や自 動車販売が増加したことや、震災後に極度に萎縮した消費者マインド が持ち直したことなどが背景」と指摘。この結果、「7-9月期の実質 GDPの水準は震災前の水準(2010年10-12月期)を上回った」と し、「平時の経済状態に近いところまで戻ったことが確認された」との 見方を示した。

緩やかな回復経路へ

生活実感により近いとされる名目GDPは、前期比1.4%増(年 率換算5.6%増)。総合的な物価指数であるGDPデフレーターは同マ イナス0.1%、前年同期比ではマイナス1.9%と引き続きデフレ状況に あることを示した。

古川元久経済財政兼国家戦略担当相は発表を受けて会見し、7- 9月の実質GDP成長率が4四半期ぶりにプラス成長となったことに ついて「震災後のサプライチェーン立て直しが夏にかけて急速に進ん だことを背景としたもの」と指摘。その上で「足元では海外景気の回 復の弱まりなどにより、輸出が振るわないことなど、景気の持ち直し テンポは緩やかになっている」と述べた。

同相は景気の先行きについて「今後は復興需要が増加することな どから、景気の持ち直し傾向が続くと見込まれる」としながらも、「回 復力の弱まっている海外経済の下振れや、急速な円高の進行、タイの 洪水被害等のわが国景気の下振れリスクには十分に注視していく必要 がある」と述べた。

タイの洪水が生産を下押しも

日本銀行は先月27日の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、 2011年度の実質GDP成長率はプラス0.3%、12年度はプラス2.2% との見通し(委員の中央値)を公表。景気は当面、「海外経済減速や円 高の影響を受ける」ものの、「新興国・資源国を中心に海外経済が高め の成長を維持する」ことや、「震災復興関連の需要が徐々に顕在化して いく」ことから、「緩やかな回復経路に復していく」としている。

日銀は一方で、同日開いた金融政策決定会合で「国際金融資本市 場や海外経済の動向次第で、経済・物価見通しがさらに下振れするリ スクにも注意が必要」として追加緩和に踏み切った。11日発表された 民間エコノミスト対象のESPフォーキャスト調査によると、10-12 月期の実質GDP成長率は平均で前期比年率プラス2.09%が予想さ れており、前月調査(プラス2.30%)から下方修正された。

日銀の中村清次審議委員は9日、那覇市内で講演し、タイの洪水 の国内経済への影響について「タイへの直接輸出の減少や、タイを含 めたアジア地域におけるサプライチェーンの障害を通じて、わが国の 生産にマイナスの影響を及ぼすと考えられることから、今後、注意し ていく必要がある」と述べた。

SMBC日興証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは 「世界景気減速と円高進行、さらにはタイの洪水被害を背景に、生産 計画が今後下方修正される可能性は極めて高い」と指摘。「夏場以降の 円高進行がタイムラグを伴い、年度下期の輸出数量の下押し圧力とな る」としている。

--取材協力:Minh Bui, Theresa Barraclough    Editor: Norihiko Kosaka, Takeshi Awaji, Joji Mochida

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