政府・日銀が覆面介入の可能性、「円高是正は困難」と市場関係者

外国為替市場では、政府が10月31日 に円売り介入を発表した後も、公けにしない「覆面介入」を行ったとの 観測が広がっている。ただ、欧州の債務危機などを背景とした円高圧力 は根強いとみられ、円高是正は困難とみる市場関係者は多い。

日銀出身でクレディ・アグリコル証券の関戸孝洋チーフエコノミス トは、「断続的にある程度介入をやっていたということは事実としてあ ったと思う」としながら、「グローバルな資金のフローがまたリスク回 避から逆流しない限りは、為替介入だけで円安方向に引っ張るのは難し い」と指摘する。

IGマーケッツ証券の為替担当アナリスト、石川順一氏も、「今は ドル・円のダウンサイド(下落)リスクが強まっている」として、数千 億円程度の覆面介入があったとしても、「ドル安・円高相殺の要因には なりにくい」指摘した。

東短リサーチによると、日銀が公表する「当座預金増減要因と金融 調節」で、介入による円資金が2営業日後に市場に放出されるのを反映 した「財政等要因の対民間支払い」は今月2日以降、8日までの4営業 日で事前予想から約8兆6000億円と大きく上振れた。

同リサーチの高橋雄一上席研究員は、財政等要因の上振れや日銀保 有国債残高の増加から10月31日以降も介入が実施された可能性が高いと 分析。「10月31日の大規模介入は8兆円程度」とみており、それ以降の 覆面介入を含めた総額で「8.7兆-9.1兆円程度」と推計している。

安住淳財務相は11日午前の閣議後会見で、為替相場が円高方向に振 れていることについて「投機的な動きや過度な変動に対しては非常に関 心をもって市場を注視している」と述べたが、「覆面介入」を実施して いるかどうかはコメントを避けた。

覆面介入の意図

10月31日の東京市場。同日未明に円が対ドルで1ドル=75円35銭に 急伸し、戦後最高値を更新したことを受け、政府・日銀は円売り・ドル 買い介入を実施、円は79円半ばまで急落した。

政府・日銀は同日午後にかけても79円20銭付近に大量のドル買い注 文を置く「指し値介入」を数時間にわたって行ったもよう。想定以上の 円高進行で、円を買えずにいた国内輸出企業などに円買い・ドル売りの 場を与えたというのがもっぱらの見方だ。野村證券金融市場調査部の池 田雄之輔チーフ為替ストラテジストは、大規模介入により、7兆5000億 円近くの輸出企業の円買い・ドル売り需要を吸収したことの効果は「相 当大きい」と指摘する。

もっとも、11月1日以降もドル・円が78円前後で安定的に推移した ことで、市場では政府・日銀が密かに介入を続けているのではないかと の観測が台頭。池田氏は「覆面介入」の意図について「市場に介入警戒 感を植え付けることが重要だったのではないか。『一日限りではない』 というメッセージをこっそり仕込んでいるということはあり得る」とし 「実際ちょっとしたきっかけで相場が大きく動いてしまうことがあるの で、それに対する予防的な措置ということもあるのではないか」と読む。

対米関係

コリンズ米財務次官補(国際金融担当)は7日、日本の為替介入に ついて「市場が大きく荒れていることがない場合には市場の力に応じ、 為替レートが柔軟に動くことを容認するのがG7(先進7カ国)の約束 だ」と述べた。8日までに朝日新聞が伝えた。

東短リサーチの高橋氏によると、9日以降、財政資金や国債の保有 残高に大きなぶれは見られないという。これは7日以降、介入実施の可 能性が低いことを示唆している。

実際、8日以降、外国為替市場ではじりじりと円が水準を切り上げ ており、11日の東京市場では一時、77円49銭まで上昇。31日の大規模介 入後の高値を付けた。ギリシャに端を発した欧州債務危機がイタリアな ど中核国に波及。米国の追加金融緩和観測もくすぶるなか、円高圧力が 再燃しつつある。

バンク・オブ・アメリカ-メリルリンチの藤井知子シニアFXスト ラテジストは、「中国と違い、G7(主要7カ国)のメンバーであるた め、毎日介入することはできない。外交的配慮から覆面介入の継続は無 理だろう」と指摘。その上で、あすの日米首脳会談で日本が環太平洋経 済連携協定(TPP)交渉参加など米国の意向に沿える姿勢を示すこと で、「米国に対して少なくとも公に介入批判をしないように頼むことは できるだろう」と期待する。

--取材協力:油井望奈美、船曳三郎、Andy Sharp Editor:Joji Mochida, Masaru Aoki

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